第一章 振り返り
本日19時から第二章の連載を開始します!
その前に、第一章の振り返りをエマの語りでどうぞ。
おはよう、あたしエマ! 中級冒険者パーティー「狼の集い」の回復魔法使いだよ。
港街フリートベルクを離れる日が来たから、その前に今までの旅路を振り返っていくよ!
まずはあたしの仲間を紹介するね。黒髪で三つ編みを二つぶら下げているのはソフィ!
焦げ茶色の丸い目とか幼さの残る顔立ちとか背が低いところとか、全部が可愛いの。笑ったところをもっと見たいなぁ。
なのに年季が入った木の長杖を持ってて、魔法はとっても上手。攻撃も防御も索敵も何でもできて、最年少の十四歳なんだよ? おまけに正体は……ってこれ以上ソフィの話してたら出発時間を過ぎちゃうね。
残念だけど、ソフィの紹介はここまで!
次はあそこで盾を構えてるカイを紹介するよ!
カイはあたしと同じ孤児院出身でね、とっても頭が良くて難しい言葉を知ってるの。敬語、だっけ? 他の人と話すときは丁寧な言葉遣いですらすらと話しててすごいなぁ。
背はあたしより低くて細身だから相手の攻撃を真正面から受け止めることは難しいけど、受け流すのが得意なんだ! あたしを守ってくれる背中がカッコよくてドキドキしちゃう!
童顔であたしより年下なのもいいよね。……あれ、その価値基準はあたしだけ?
まぁいいや、次は身体を動かしたくてうずうずしてるレオを紹介するね!
レオは真っ直ぐで熱い人でね、時々周りが見えなくなったりすぐ手合わせを申し込んだり食べるときと寝てるとき以外はずっと身体を動かしていたり、と良いところも悪いところもあるんだけど。
仲間が危ないときは迷わず動いてくれるから助かってるよ。拳と蹴りがレオの攻撃方法! 怪我が多いけど、治すのはあたしに任せて!
最近、仲間に加わった人もいるんだ。それがこのラットさん、じゃなくてヴェラット! 長いからあたしはラットって呼んでるよ。
ラットはめっちゃ強くて、あたし達じゃどうやっても勝てない相手でも片手剣の一振りで魔物を倒しちゃうの。
いつも黒い服を着てて、長身で美人。しかも元騎士様だからすごいよね! それ以外はあまりよく知らないから、もっとラットのことを話してほしいなぁ。
あと、忘れちゃいけないのが「狼の集い」の元リーダー、ルドルフ。
同じ孤児院出身で一緒に冒険してきたんだけど、狼みたいな魔物グラオヴォルフにやられて冒険者を辞めちゃったんだ。
今はどこにいるのかわからなくて。元気にしてるといいね。
仲間の紹介が長くなったけど、いよいよ旅の振り返りだよ!
そもそもの旅の始まりは、あたしが「海に行きたい」と言ったことなんだ。
もちろん、観光のためだけじゃないよ? 狼みたいな魔物、グラオヴォルフとの戦いであたし達は自分の弱さを実感したから、もっと強くなりたいって思ったの。
あたし達が拠点とする王都は海が遠いからね、環境が違えば棲む魔物も違う。色んな魔物と戦えば強くなれるんじゃないかなって。
その旅の途中でヴェラットに助けられて、レヴィンって街の近くにある山に行ったらまさかのルドルフがいた。
あたしとレオは思わず駆け寄ろうとしたけれど、ルドルフは大剣を構えたの。カイが間に入ってくれなかったら斬られてたのかな。ルドルフが何も言わずに襲ってくるなんて思いもしなかったもの。
あたし達がルドルフに気をとられてるうちにいつの間にか見えない壁――結界だっけ? が張られていて、ソフィと分断されちゃったの。
そこに谷の魔女と名乗るおばさんが空から降りてきて、ソフィが危ないところを白の魔女さんが助けてくれて。あたし達は暴れるルドルフを押さえるのに必死だったけど、ソフィの方が大変だったよね。無事で本当に良かったぁ。
でも、ルドルフは連れ去られてしまった。「元からアタシの所有物」と言った谷の魔女によって。
ソフィは何か思うことがあるみたいで、珍しく自分が行きたい場所を言ってくれた。そこは元々カイが決めた最終目的地だったんだけどね。
目的地が一緒だと言うラットが案内役兼護衛を務めることになって、あたし達の海を目指す旅は再開した。
王都と港街を繋ぐ南街道では色んな景色を楽しめたよ。縦も横も終わりが見えないドラッヘ山脈に対岸が見えない湖、そして崖下に広がる青い海。
景色だけじゃなくて、ドワーフとかエルフとか獣人とか、王都ではめったに見かけない他種族に会うことができたの。
元は同じ王都出身で、今は別の街を拠点にしてるヘルガと再会できたよ! 一足先に上級に昇級したみたいだから、あたし達も頑張らないと。
魔物が強すぎてラットしか戦力になれなかったり、強い魔物の気配がする不気味な森道や落ちたら海に沈んじゃう崖道があったりと、大変なこともたくさんあった。
それでもあたし達は旅を続けて、港街フリートベルクに到着したの! とても長い道のりで、一か月くらいかかったよ。
海ってほんとに遠いね。竜殺しの英雄みたいにあの山を越えられたらもっと早く着けるのかなぁ。
そんなこんなで到着した港街! 魚の匂いでいっぱいの冒険者ギルドに鼻をつまんだり、地元の上級冒険者パーティーである「荒波の誓い」と一緒に魔物討伐したり、皆で海を見に行ったり。
個人的に印象に残ってるのは街に住む波間の魔女さんのお話を聞けたことかな。
昔ドラゴンと戦った英雄の話でね、なんと波間の魔女さんのお父さんなの。波間の魔女さんは、あたしが子どもの頃に魔法を教えてくれた、“まじょさん”こと森の魔女のお姉さんでもあるんだって。
波間の魔女さんの話がきっかけで、「荒波の誓い」の皆と一緒にエルフの秘境を目指したよね。
森の終わりが近づいても見つからなくて、ソフィが魔法を打ち上げたらエルフがたくさん現れたの。木の上にお家があるとは思いもしなかったなぁ。
そこで聞けたのは森の魔女さんのお話。魔力暴走の件はビックリしたけど、それ以外は「あたしの知ってる“まじょさん”だ!」ってなったよ。
港街に戻ってから何日かは普段通りの日々を過ごしたけど、ある日ソフィが夜になっても帰ってこなかったの。
波間の魔女さんに会いに行った日だから、館に向かったらなぜか崩壊してて。ソフィはあたし達の後ろに現れたり、とよくわからない一日だった。ソフィも「“まじょさん”に会った」としか言わなかったし。
色々あったけど、そろそろこことはお別れかな。次の冒険があたしを待ってるの。石の街マークヴェストに行きたいし、王都への帰りにあたし達の故郷に寄りたい。王都に帰ったら次はどこに行こうかなぁ。
最後は「荒波の誓い」のみんなが船で隣の領地まで送ってくれるの! カイは船酔いを心配してたけど、あたしはとっても楽しみ!
それじゃあ行ってくるね、バイバイ!




