第11話:特殊個体との遭遇と“心への干渉”
その魔核獣は、
これまでのものと、どこか決定的に違っていた。
闇の中から現れたそれは、
大きな目のようなものを幾つも蠢かせ、
触手を律動的に動かしながら、まるでこちらを“観察”している。
(……なに、これ……)
レイナも私の隣で小さく息を呑んだ。
こんなレイナを見るのは初めてで、
胸の奥が不安で冷たくなる。
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そして次の瞬間。
その怪物から、
直接私の頭の奥へ、何かが――
《……リゼット……リゼット……》
(っ――!)
耳じゃない。
頭の奥に響く声。
そこに音は無いのに、
魔力紋がドクンと脈打って、胸が跳ねた。
《お前は……甘い……とても甘美だ……》
(や……いやっ……来ないで……!)
必死で頭を振るけど、
声は耳じゃないから、どこにも逃げられない。
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《その羞恥……その疼き……その脈動……
すべて我々に捧げろ……》
「っ……やだ……やだっ……!」
胸の魔力紋が、
触れられてもいないのにドクドク震えて、
腰が勝手に引ける。
その瞬間、装甲の一部がかすかに透けて、
まるでそこから直接、脳を撫でられたみたいに
ぞわりと快感が走った。
「リゼット!」
レイナが私の肩を抱いた。
でもその手の温度も、
頭の奥に響く声に負けていく。
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《――お前の羞恥は、我々の糧……
その快感に溺れろ……》
「っ……ひゃ……! いや……や、やめ……!」
次の瞬間、
視界がぐらりと歪んだ。
頭の中に直接、
自分の身体が見える。
クリアパーツ越しに脈動する魔力紋。
そこが赤く光るたび、
腰の奥がひくっと痙攣する。
(いやっ……いやなのに……なんで……)
その映像の中で、
自分の唇がかすかに開いて、
短い吐息を零した。
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「……リゼット!」
レイナの声が、
遠くから聞こえる。
その声に必死で縋るけど、
頭の中ではエル=ザルゴの声が
さらに甘く響く。
《可愛い……可愛いぞリゼット……
その羞恥は……お前が生きている証……
我々はそれを味わう……もっと……》
「や……ぁ……!」
自分の声なのに、
ひどく熱っぽくて、
息が詰まって苦しい。
その時、
レイナが私の顔を両手で挟んだ。
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「リゼット! しっかりして!」
強い瞳。
私を見据えるレイナの瞳が、
ようやく視界に鮮明に戻ってくる。
「あなたは誰?」
「……わ、たし……リゼット……」
「そう。あなたはリゼット。
そして私が、レイナよ。
忘れないで。あなたをこんなに赤くするのは、
私だけでいいの」
レイナの冷たい指が頬を撫でる。
その冷たさが、
頭にこびりついた熱を少しだけ冷やしてくれた。
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「……レイナさん……」
涙がこぼれた。
次の瞬間、
レイナが私を引き寄せ、
その胸元にぎゅっと抱きしめてくれた。
その体温が、
魔力紋にじんわり伝わって、
エル=ザルゴの声が少しずつ薄れていく。
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《……ふふ……
いずれまた……
その羞恥の輝き……存分に味わわせてもらおう……》
最後にそう囁くと、
魔核獣はゆっくり闇に溶けるように消えた。
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「……リゼット、大丈夫?」
「……っ……はい……」
まだ魔力紋が小さく脈打ってる。
怖いのに、
でもレイナの手がそこに触れると、
どうしようもなく安心して、
また泣きそうになった。




