タイトル未定2025/12/06 14:34
━━……思い出が力になることがある。それは走馬灯と言って、今目の前から迫ってくる死を回避するために見ると言われてたり言われてなかったり……。
とにかく、人は死を感じた時何かを思い出すことがあるのだ。そして今、ムラマサもその例にもれることなく記憶を甦らせる。何となく不思議に思ってたことも、何となくめんどくさくてスルーしてたことも思いだす。
「近寄れ」
ムラマサは静かに答えた。ルリータ達はすぐさまムラマサに近寄る。そして、各々武器を構える。
「”無心域・刃壊羅”」
ムラマサは静かに刀を前に構えた。
「……ハハハハハ!無駄な足掻きだ!もう終わる!全て消える!」
クロノスの狂気じみた叫びが木霊する。いつの間にか夜空に浮かぶ暗雲をさらに濃くするような暗い叫びはルリータ達に恐怖を与える。そして、クロノスは深呼吸をして技を発動した。
「”神時間・永劫回帰・一時・光陰流楼神華”」
クロノスの足元に現れた時計が1時を指した。そして、どこからか突然桜の花びらが舞い降りてくる。その花びらは時間が経つ事にどんどん増えていき、気がつけばこの空間が埋め尽くされるほどだった。
さらに、いつの間にか足元に謎の模様が浮かんでいる。それは、花のような模様を描いている。
「……!」
その瞬間、何も見えなくなった。ただ真っ白な打撃が凄まじい勢いで飛んできていた。ルリータ達はそれに反応すらできない。しかも、ルリータ達が作り出した結界や壁は見事に破壊される。
唯一反応できたムラマサも、全てを捌ききることは出来ない。とてつもない威力の攻撃が何百、何千とルリータ達を襲い、ぐちゃぐちゃにしようとした。
だがそれも一瞬の出来事。気がついた頃にはもうルリータ達の体は地面に伏せていた。意識はかろうじてあるが、そのせいで全身に感じたことの無い痛みを感じる。
目の端に見えるのは流れ出てくる血と、それで出来た水溜まりだ。ルリータは涙を流しながらその痛みに必死に耐える。
「……ごめんなさい……」
その時、そんな声が聞こえる。その声の主はアテナだ。
「皆……」
アテナは必死に盾で体を支えながらルリータ達に謝っている。だが、ルリータ達はそれに関して何かを言うつもりもないし、そもそも言葉を発することが出来ない。
あの一瞬、たった一瞬のうちにルリータ達3人がアテナに希望を託した。だから誰もアテナを攻めない。皆で全力でアテナを守り、こうしてアテナ1人だけ動けるようにしたのだ。
「真耶なら……そうしたって言いたいんでしょ……!」
アテナはそんなことを言いながら無理やり立ち上がり、剣を構える。その視線の先には揺らめくクロノスがいた。どうやら今の技で少しだけ体力が減っているらしい。
「……」
アテナは唇を強く噛む。そして、自分の体に言い聞かせる。
(動きなさい!もしここで負けるようなら、あなたには酷い罰が与えられるわ!全身素っ裸で真耶に鞭で叩かれながら四足歩行で10キロ走るのよ!それが嫌なら動きなさい!)
アテナは必死に言い聞かせる。すると、自然と体が動き始める。
「まだ来るか。しつこい女だ」
クロノスは素早い動きでアテナの間合いに入り込み、アテナの顎にアッパーをする。アテナは突然の衝撃に意識を飛ばす。体が中に浮き空をむく。しかし、すぐに意識を取り戻し剣を構える。
「”ライトニングソード”」
アテナの剣が連続でクロノスにおそいかかるが、クロノスにとってそれは子供のじゃれあいにすぎない。全てを見透かすように見通し、隙を見つけて頭を蹴る。
アテナの体は再び宙に浮いた。そして、その勢いのまま地面に顔を叩きつけられる。常人なら完全にブラックアウトするところだろう。しかし、アテナは必死に意識を保つ。涙目で起き上がり剣を強く握る。
「”ライトニングソード”」
再び同じ技を繰り出した。先程よりも強い眩い光がクロノスにおそいかかる。しかし、クロノスはそれに動揺することなどなかった。赤子とじゃれあうように全て捌く。
「無駄なことだ」
クロノスはそう言ってアテナに強い一撃を与えた。アテナはその一撃で飛ばされそうになるが必死に耐える。
それから何度も同じことを繰り返した。アテナが攻撃を仕掛け、クロノスは弾く。力量に差がありすぎるのか、アテナはもうフラフラだ。
「そろそろ力も戻ってくる。俺の本当の勝ちだ」
クロノスの声が響いた。そして、クロノスの背後に巨大な時計が現れる。その時計は既に4時を指していた。
「……」
クロノスは目の前のボロボロな姿のアテナを見て少し哀れに思う。そして、その哀れみを向けた目を向けながら技を発動した。
「”永劫回帰・四時・時……」
「っ!?」
クロノスが技を発動しようとした。時計の針が指している4の数字には少しづつだが光がともり始めていた。そして、クロノスはニヤリと笑う。
その刹那、アテナが起き上がった。フラフラなその身体を無理やり動かし神速の一撃を繰り出す。
「”ライトニングロォォォォォォォォォォド!!!!!!”」
眩い光とともにクロノスの周辺にいくつもの光の槍のようなものが形成される。それは、たった一瞬でクロノスの体を串刺しにする。
右腕、右足の太もも、左足の甲とふくらはぎ、左肩を貫かれたクロノスは思わず体を硬直させる。そして、背後の時計を見た。既に壊されている。クロノスは慌てる心を何とか押さえ込みアテナを見たがもう遅い。
「ハァァァァァァァ!!!!!」
アテナの咆哮とともに光を帯びる剣がクロノスの右脇腹を貫いた。その一撃は凄まじく、一気にクロノスを後ろにおいやる。
「グゥ……クソがァ!」
クロノスは思わず拳を突き出した。強く握りしめられた拳は鋭くアテナの顔面に直撃する。アテナはその衝撃で完全に力が抜けてしまう。たまたま引っかかった剣を引き抜きながら地面に倒れ込んでしまった。その隣には剣が音を立てて落ちていく。
「何故油断した……!?あれだけ言ったはずだ……!驕るなぁ!”永劫回帰……!」
その瞬間全てが塗り替えられた。どす黒い魔力がクロノスから溢れ出しその空間を支配する。先程まで呼吸できていたはずの空気が、吸うのがきつくなる。
たった一瞬で塗り替えられた空気は、魔界よりもおどろおどろしく、展開よりも神々しかった。
そして、クロノスの雄叫びがその場に響き渡った。本当はもうとっくに聞こえていたはずなのだろう。しかし、空間に圧倒され言葉は耳を通らなくなっていたのだ。
クロノスの叫び声が聞こえたあとクロノスの背後にはいつも通り時計が現れる。しかし、それはいつもとは違い針がなかった。どこを指しているかも分からない禍々しい時計が地面から黒い液体を絡めながら出てくる。
しかも、かなり壊れかけていた。神々しいとは程遠いその様子はその場にいるものに恐怖のみを与える。
「死ぬまで……全力でやらなければぁ……!」
クロノスの声は枯れているのかおどろおどろしく聞こえる。
「や……だぁ……」
アテナが小さく呟いた時、突然空間に亀裂が入った。それは、これまで見てきたどの斬撃よりも綺麗で芸術のようだ。
「っ!?」
クロノスの背後の時計はその斬撃によって完璧に切断される。そのせいなのか、禍々しい力が少し消えた。ここに残ったのはクロノスが放つ殺気のみだ。
「何者……!?」
クロノスが何かをいい終えるよりも早く両手首を切られる。血が飛び出でるその手をみながらクロノスはこの場の全てを理解した。
「しつこいなぁ!」
クロノスがそう叫ぶが叫び声など無に等しい。無数のクナイが体を突き刺し動けなくする。
「っ!?」
気がつけばクロノスは窮地に立っていた。
「俺が……!」
「行ってください。アテナさん。強化魔法かけてあるんで、最大威力ぶちかましてください!」
ルリータの声でアテナは剣を握る拳の力を強くした。
「いつの間に起きたのか!?」
クロノスはアテナの姿を見て即座に後ろに逃げようとする。しかし、体が言うことを聞かない。後ろに行っているはずなのに前に走り出してしまった。
「っ!?毒か!」
クロノスの声が響く。
「行って!アテナ!」
その声を無為が塗り替えた。
「行け!盾の女神よ!」
ムラマサがそう叫んだ。その声がいちばん大きい。アテナは3人の声を聞いて少しだけ微笑む。そして、これまで感じたことがない力に高揚しながら自分の全手の魔力を剣に込めた。
「”光る思い……これが仲間の力!仲間の輝き!エクス……カリバァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!”」
巨大な黄色い光の刃が、この空間ごと人も大地も概念すらも切り裂き破壊した。
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