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兄貴…… ではなく

最 終 話

あの後……


俺は急いでハルを病院に連れて行った。


ハルは呆然としながら俺に手を引かれるだけだった。


ハルは病院で処置を受ける。


そして……


ハルの頬の傷は、口内にまで達するほどの深い傷で……


一生、生涯消えないであろうと言われた。




俺は……


そう、医者に先刻された時の……


目を見開いて硬直した… ハルの顔が… 忘れられない。


目に焼きついて… 忘れられない。



「はぁ……」


俺は今、自室で… 一人でいる。


「っ……… いてぇ…」


殴られて切れた、口の中が痛む。



あれから…… 数時間が経過した。


あの後、俺はハルを家へとつれて帰った。


その間…… 俺とハルは終始無言だった。


ハルは呆然としながら、何かに耐えるようにじっとしていたし、俺はハルになんて声をかけていいのか分からず無言でいた。


俺は……


なんとハルに声をかけてよいか分からなかった。


ハルが怪我をしたのは…… 俺のせいだ。


紛れも無く…… 俺のせいだ。


しかも女性にとって大事な…… 顔だ。


隠すことも、ごまかしきることも出来ない顔の傷だ。


なんて…… 事を… 俺は……


俺がハルにかけられる言葉は… 俺には見つけられなかった。



そうして、家につれて帰ると、事情を聞いていたユキが、ハルを慰めるように優しく扱い、そしてハルを寝室へと誘導した。


そして……


ユキはハルを寝室で休ませると、俺の所へ戻ってきて……


「おい、てめぇがついていながら何やってやがる……」


と、言ったあと、俺を足払いですばやく転倒させ、迅速にマウントポジションを取り、俺を上からたこ殴りにした。


それ以降は無言で、何も言わず、唯唯、俺を一心不乱に殴り続けた。


俺はユキにぼこぼこにされた。


めちゃくちゃ痛かった。


単に拳がと言うだけでなく…… 痛かった。


本当に…… 俺がいながら、何を……


あの時、俺が泣き顔のみやこに躊躇したりしなければ…


クソッ……!!


俺は… 本当に取り返しのつかないことを…… してしまった。



「俺は…… どうすれば……」


俺は暗い部屋で考える。


考えて、考えて……


俺がその先で考えついたのは……



キィ……


「え?」


突然俺の部屋の扉がゆっくりと開かれた。


「おにいちゃん…… 起きてる?」


暗い俺の部屋の中に浮かび上がる、シェルエット……


小さくて、髪が長くて、スカートを穿いた女の子。


「ハル……」


それはハルだった。



「ど……… どうしたんだ?」


そういって俺はハルを見つめる。


「…………」


ハルはそんな俺を見つめると、ゆっくりと開いた扉を閉める。


パタン……


再び闇に包まれた俺の部屋。


静寂と、そして天窓から注ぐ月明かりだけが、この無言の部屋を満たしていた。


「ハ……ハル?」


俺がそう小さく呼びかけると、ハルは無言のまま俺を見据えて俺の元へと近寄る。


そして、俺の目の前に静かに立つと、くるりと後ろを向いて、ベットに腰をかけていた、俺の膝の上へと座る。


ポス……っと腰を掛け、そのまま目の前の虚空を見つめるハル。


俺は、そんなハルの行動にどうしていいのか分からず、ただ、無言を通した。


「……………」


「……………」


「ぁ……………」


「ぇ……………?」


ハルが小さく何かを言う。


吐き出すような声で、何かを言った。


「あにきのせいだ」


「え……………」


ハルは…… 俺に顔を見せないまま、はっきりとそう言う。


「こ……… この傷は… あ、あにきのせいなんだよ……」


「…………ッ!」


はっきりと…… そう俺に告げたハル。


俺はあまりにストレートなその言葉に、息を飲んで言葉を詰まらせる。



俺のせい……


そうだ…… 


ハルの言うとおり、俺のせいだ。


俺が…… あの時にハルを守りきれなかったから。


俺が…… ハルを好きに…… なったから。



ハルは…… 俺のことが嫌いになってしまったのだろうか?


ハルは……


だけどハル…… 俺は今更お前を…… お前がどう思おうとお前を……え?


「…………………………ハ…ル?」


「………………ぅ」


ハルが…… 震えている…


「あ、あにきが僕を無視してたから…… だから僕はあにきを恨んだ…… あにきのせいだ」


ハルは、俺の膝の上で、俺には顔を向けず、小さな声で話し始める。


「あにきを恨んでたら…… 女の子になった…… これもあにきのせい」


その小さな体はふるふると小刻みに震え、今にも崩れてしまいそうだ。


「女の子になった僕に優しくするから…… 僕はあにきを大好きになった…… あにきのせいだよ」


ハルは自分の膝の上でギュッと握った自分の手を見つめる。


「それで… それであにきが……!! 僕をぉ…… ぅけいれてくれたからぁ……… 僕は…」


そして…… ハルはそこで、ゆっくりと振り返り…… 俺の目を見つめる。


「ぁ… あにきのせいだよ……! 僕があにきを好きになったのはあにきのせい!! 傷を負ったのだってあにきのせいだ!! だから……」


その瞳は涙と月明かりできらめき…… その表情は不安で染められていた。


「だからぁ…… あにきの… おにいちゃんのせいだからぁ……」


ハルはもたれかかるように俺の胸元に手を置き…… そして俺の顔をすがるように見上げる。


「ハルを…… すてないで… 僕… 可愛くなくなっちゃたけど…… 僕を嫌いにならないで…」


ハルは泣きながらそんな事をいうのだった。


そんな……


馬鹿なことを。



「ハル……」


やはりハルにとって…… いや、女性にとって顔に傷が残るというのは、それだけショックだったのだろう。


そんなのはあたりまえか……


俺は、ハルに傷を負わせた事の自責しか考えてなかった…… 本当に馬鹿だ…… 俺は。


単純に… 純粋に… この傷はハルの体と心に、深い傷を負わせた。


俺は…… それを真っ先に汲み取ってやらねばならなかったのに。、


それをしなかった… どうしていいか分からず、黙ってしまった。


だから… ハルは不安になったんだ…… いや、不安にさせてしまった。


俺はまず、ハルがごちゃごちゃと余計なことを考えるまえに…… まず、ハルを抱きしめてやるべきだったのだ。


「ハル……!」


「ぅ………!」


俺はハルを力強く抱きしめる。


渾身の力で抱きしめる。


ただただ、ハルを…… 抱きしめた。







「馬鹿か…… 俺がお前を嫌いになるわけないだろう」


「うぅ…… うそだよ… だって、僕…… こんないおっきな傷……」


「関係ないよ…」


「ぅえ……?」


「俺は… ハルだから好きになったんだ…… 傷は関係ない」


「………………」


「俺が素のままでいられる…… 俺がしたいように接すことができる……」


「おに…ぃ………」


「俺に素で接っしてくれる…… 俺に素直に甘えてくれる……」


「ちゃん……」


「俺はお前が可愛い…… 好きだ…… 見た目も、心も……」


「ぁ…ぅぅ…………!」


「お前だから…… 俺は好きだ…… お前にあるものなら傷でも、俺は愛しい」


俺は…… ハルを見つめて言う。


ハルの頬に貼られた、大きなガーゼを撫でながら、伝えた。


「は…………ぁ…ぅ……!」


ハルは言葉をうしなって、息を飲み込んで、涙をながす。


パクパクと口を動かして、俺の頬をゆっくりと包んだ。


泣きそうな顔、嬉しそうな顔、そして…… ハルはまた泣きそうな顔をする。


「お…… にいちゃ… んっ……」


俺に… 口付けをするハル。


目をつぶって、触れるだけの口付けをして、唇を離して、涙と流す…


俺を見つめて「はぁ」と熱い吐息を吐く。



「ほんと……?」


「ああ…」


「ほんとなの… ほんとに?」


「ああ… そうだよ」


「僕を嫌いにならない?」


「ならない」


「僕を連れてたら… きっと皆が変なめでみるよ?」


「気にしないし、そんな目で見る奴がいたら俺が蹴っ飛ばす」


「これからも…… ずっと僕を可愛がってくれる?」


「もちろんだ」


「キスもいっぱいしてくれる?」


「ん…… ほら…… まだするか?」


「………ぅん もっと…… んちゅ…」


「他には?」


「ギュッとして……」


「おう…」


「ぁ……… な…撫で……て?」


「ほら」


「ぁぁ…………… け…っこん……してくれる?」


「いいよ、何とかする」


「ぅ…そ…… ほ……ほんとに?」


「うそじゃない」


「ほ……ほんとに? ほんとに僕のことすきなの?」


「……愛してるよ」


「ぁぅ…………」


ハルは震える。


今度は…… 泣きながら微笑んで震える。


「……………誓える?」


「いくらでも」


「誓って…ください…… 一生僕といるって」


「一生ハルと一緒にいる…… 誓うよ」


「僕…………… 嫉妬…深いよ? 重いよ?」


「いいよ」


「他の人とデートしただけで泣いちゃうよ?」


「しないよ」


「僕を捨てたら…… 僕……死ぬよ?」


「そのときは俺もユキに殺されてるよ、すぐに追いついてやる」


「………………ぁ…」


「…………………」



ハルは涙をぬぐう。


俺はハルを見つめる。







「リツさん…… ハルはあなたが大好きです…… 一生僕と一緒にいてください」


「ハル…… 俺はお前を愛してる…… 一生俺といてくれ」







ハルは立ち上がる。


そして俺の頬へと、しなやかに手を伸ばす。


頬の大きなガーゼ、きゅっと細めて閉じられた瞳、目じりに溜まった涙、柔らかく弧を描く唇。


月の光を受けて、白く輝く…… ハルの美しい笑顔。


美しくて、儚くて、幸せな…… 微笑み。


ハルは言った。




「はい……!!」




俺達は今…… 本当に始まったのだ。

ここでこの話は終わりです。


まぁ、この話は蛇足とも言えなくもないです。


前話の時点で、二人の気持ちは固まってましたからね。


二人の気持ちを、互いに明言してもらうための過程とでも申しましょうか?


まぁ、俺が書きたかっただけと理解して頂ければと。


蛇足の話ではありますが、ハルの傷は一生消えません。


そして二人の関係も一生消えないことでしょう……


最後に……


短い間でしたが、こんな俺の趣味ぶっちぎりの話に付き合ってくださって、ありがとうございました。


はっきり言って、こんなコアな設定を明言していて、こんなに読んでくれる人がいたのが嬉しい限りです。


しかもやたらと感想を頂き、マジで鼻血が出そうなほど嬉しいです。


俺調べではありますが、この登録数にしてこの感想率はかなり高めなのではないかとおもっております。


それだけ皆さんハルに萌えてくださったのですね…… ぐへへ。


まじで皆さん大好きです。


萌え兄妹にして同じ穴の変態ですね、げへへ。


………あれ? 結構いい話してた気がするのにおかしいな?


なんで変態云々の話に?


まぁ…… この趣味に走りまくる話は、結構楽しかったので、そのうちまた何かやろうと思ってます。


なので、俺の萌え表現を気に入ってくださる、変態仲間は是非俺をお気にに入れとくとよいかとグヘへ。


まじ、この作品はハルの描写にほとんどを使ったといっても過言ではないですからね、コダワリですよ!




まあ、そんなわけで長々とどうも。


皆様、この話を愛してくださってありがとうございました。


作者冥利につきます。


エピローグは後日談を予定しております。


乗せるのはいつになるかは分かりませんが必ず乗せます。


では…… また。

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