エピローグ 可愛い私の花嫁
お待たせしてすみません!
本作第一部、これにて完結です!
それからご報告なのですが、本作が第10回オーバーラップWEB小説大賞にて銀賞をいただき、書籍化が決定いたしました!
応援してくださった皆様、本当にありがとうございます(*^^*)
花嫁のドレス姿は結婚式当日まで見るものではないと両親(本当は叔父夫婦だが)に言われて、ジークハルトは、自分でも珍しくそわそわと落ち着かない気持ちを持て余しながら、祭壇前でマリアが姿を見せるのを待っていた。
大聖堂の中は、すべての席が埋まるほど大勢の人で覆いつくされている。
祭壇の近くの席にアレクサンダーやヴォルフラムの姿を見つけたときは、正直少々面白くなかったが、今日が終わればマリアは晴れて自分の妻だ。
マリアは「契約結婚」だなんだと言っているが、ジークハルトは彼女を手放す気はさらさらない。
追い詰めるとマリアは間違いなくパニックを起こしそうなので、じわりじわりと囲い込んでいくしかないのがもどかしいが、それもまた楽しいと思えるから不思議だった。
(ただ、どういうわけかマリアの周りをうろうろする男がどんどん増えていくんだよな。忌々しい)
ルーカス王子やその他の男たちを追いかけまわしていたマリアが、それをぴたりとやめた途端、まるで今更マリアの魅力に気が付いたと言わんばかりに、今度はマリアが追いかけまわしていた男たちの方から彼女に近づいてくるようになった。
まったく、都合がいいにもほどがある。
しかも、マリアはジークハルトと婚約したと発表したはずなのに、それでもかまわないとばかりのナイト気取りが、何と多いことか。
(まあ、気持ちはわかるがな)
マリアは美人だ。
加えてドジで天然で能天気で、けれども彼女の自然な笑顔は不思議と人を幸せにする何かを持っている。
以前は、マリアの不思議行動がその美点をすべて打ち消していたが、それをやめればおのずと彼女の魅力に気づくものが出てくるのは当然なのだ。
マリアはまだ、ジークハルトが出した離婚に応じる条件を鵜呑みにしていて、卒業までに結婚相手を探そうと考えているだろうから、今日結婚式を挙げても油断はできない。
(加えて、それ以前からマリアに懐いていたブリギッテ王女もいるしな)
ジークハルトの元にブリギッテ王女から呪いの人形が届いたのは一昨日のことだ。
すぐに燃やして捨てたが、あの王女はマリアを奪ったジークハルトを憎んでいる。
マリアに余計なことを吹き込んで離婚を勧める可能性も大いにあるので、ブリギッテの行動には目を光らせておかなくてはならない。
鋭くこちらを睨みつけているブリギッテの視線に気づかないふりをして、ジークハルトは広い大聖堂の奥の、マリアが入場してくる扉に視線を向けた。
パイプオルガンの音が鳴り出したのでそろそろだろう。
ジークハルトが見つめる先で、ゆっくりと扉が開く。
(……ああ、美しいな)
姿を現したマリアは、ベール越しだというのに息を呑むほど美しかった。
品のいい光沢を放つドレスが、マリアの上品さをぐっと引き立てている。
緊張しているのか、肩に力が入っているようだ。
父がついているから大丈夫だとは思うが、ドレスの裾を踏んで転ばないだろうかと少し不安になってしまった。
(……それにしても、もどかしいものだな)
ゆっくりゆっくりと近づいてくる花嫁に、ジークハルトの胸には自分から迎えに行きたいという衝動が沸き起こる。
(可愛い可愛い、私のマリア……)
マリアはどんなことを考えながら、ジークハルトに向かって歩いてきているのだろう。
もしかしたら緊張で頭の中は真っ白かもしれない。
ようやくマリアがそばまで歩いて来て、ジークハルトは父からマリアのエスコートを譲り受ける。
そっとジークハルトの腕に添えられたマリアの手に力が入っていて、やはりガチガチに緊張していたかと笑いそうになった。
司祭がまどろっこしい結婚式の口上を述べて、愛を誓い合ったあとで、ジークハルトはマリアのベールに手をかける。
ベールを持ち上げた時、マリアが大きく目を見開いていて、つい我慢できずに笑ってしまった。
(誓いのキスは、想定外だったのか)
まったく、こういう考えが足りないところがたまらなく可愛いと思う。
真っ赤な顔のマリアを揶揄いたい衝動にかられたけれど、赤い顔で涙目になっている可愛いマリアをいつまでも大勢の視線にさらしたくなくて、ジークハルトはするりとマリアの背中に手を回した。
逃げられないようにやんわりと拘束して、パニックを起こしそうになっているマリアの唇にさっと口づける。
本当はもっとしっかり口づけを交わしたかったけれど、たぶん、あまり長いとマリアが気絶する気がした。
(これでお前は、私のものだよ)
司祭が結婚式の終了を告げる。
足が震えているマリアは自分の足で退場できそうになかったので、ジークハルトは彼女を抱えていくことにした。
抱き上げた途端に広がった悲鳴なんて、気にならない。
だが、ジークハルトがマリアを抱き上げた直後、アレクサンダーやヴォルフラムから刺すような視線を感じて、どうしようもない優越感に駆られた。
(……悪いけど、お前たちにはあげないよ)
マリアは、誰にも奪わせない。
(マリアは生涯私の……、私だけのものだからね)
可愛い可愛い花嫁。
さあ、君はどうすれば私に夢中になってくれるのか。
ジークハルトはうっすらと口元に笑みをたたえて、マリアを抱えたまま歩き出した。
これにて第一部が終わり、次の第二部は新婚旅行からスタートとなる予定ですが、第二部開始まで、わたしに少々お時間をくださいませ(;'∀')
第二部も書きはじめてはいるのですが、その前に書籍化作業の方をさせていただきたいのです。
(書籍に当たり変更する部分が出ると、第二部にも修正しなければならない箇所が出るため、それを防ぐために最初に書籍用改稿作業を進めさせていただければ、と)
お待たせして申し訳ございません…!
どうぞよろしくお願いいたします!
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