表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/150

期末試験と謝罪 4

お気に入り登録、評価などありがとうございます!

 馬車がお城に到着すると、そのままお城のサロンの一つに連れていかれた。

 制服のままお城に来るって、不思議な感じがするわね。

 サロンのソファに着席すると、すぐにティーセットが運ばれてくる。

 わたしの前には殿下が座り、殿下の後ろにはラインハルト様が立っている。これはこの二人の定位置のようなものだ。


「それで、何のご用でしょうか?」

「まずは紅茶でも飲んで一息ついたらどうだ? 疲れた顔をしている」


 ええ、そうでしょうとも。徹夜明けですからね。

そしてそんな疲れた顔のわたしを殿下はお城に連れてきたわけですけど、それについては思うところはないんでしょうか?


 ……まあいいわ、お城のお茶、美味しいし。


 わたしは出された紅茶に砂糖を一つ落として口をつけた。

 ふわりとかぐわしい香りが鼻から抜けていく。

 この紅茶は王家のための特別な農園で作られている茶葉を使って作られているのよね。だから、王家以外が購入することはできないのよ。

 前世ではペットボトルの紅茶しか飲んだことがなかったわたしだけど、公爵家で生まれ育ったからこれでも舌は肥えているのよ。そしてお城で出される紅茶は、わたしの中では一番なのよね。


 ……殿下に連れてこられたのは嫌だったけど、紅茶が美味しいから、まあいいわ。


 ゆっくりと紅茶を飲み干して一息つくと、ルーカス殿下がわたしをじっと見つめていることに気が付いた。

 わたしの顔に何かついているのかしら?

 なんとなく気になって頬に手を伸ばしたとき、殿下が唐突に「結婚すると聞いた」と言い出した。


 ……今日はやたらと、お兄様との結婚について訊かれるわね。


 わたしとしては何をいまさらという感じよ。

 このタイミングで学園中に広まっている噂の真偽の確認? それが嘘か誠かなんて、殿下には関係ないことだと思うのだけど。

 というか、お父様が陛下から結婚の許可を取ったから、結婚が本当なのは殿下も知っているはずでしょう?

 殿下ってば、こんな話をするためにわざわざお城に呼びだしたのかしら。

 これなら学園での立ち話でも問題なかった気がするけど。


「ええ、夏休みに」


 文句をぐっと飲み込んで、わたしは頷く。


「ジークハルトと結婚するんだったな」

「ええそうです」

「つまり、君は未来の公爵夫人になる、と」

「……まあ、そうなりますね」


 お兄様と離婚しなければ、ね。


「……それは、今からでも中止は可能なのか?」

「はい?」


 ルーカス殿下ってば、何を言い出すの?

 中止ですって?

 そんなことになれば、まず間違いなくお母様が発狂するわよ。


「殿下、この結婚は、陛下から承認を得た正式なものですよ。突然中止なんて、陛下のお顔にも泥を塗る結果となります」

「父上には僕から伝えれば問題ない」


 いやいやいや、問題あるでしょうよ!

 というか、何で中止にしなければならないのよ!

 お兄様に言われるならまだしも、殿下に言われて中止とか意味がわからないわ。


「申し訳ありませんが、中止にするつもりはありませんよ」

「君はジークハルトが好きだったのか? 僕を含め、複数の男性を追いかけまわしていたようだが」


 ぐはぁっ!


 そんな過去の(まあそれほど昔のことでもないけど)話を持ち出してこないでほしいわ‼

 というか殿下は何が言いたいわけ?

 わたしをいじめて遊びたいの?

 だとしたら性格が悪いわよ⁉


「貴族の結婚に好きとか嫌いとかは不要ではありませんか?」

「なるほど、つまり、君は親やジークハルトに言われて渋々結婚するのか」

「そういう意味ではありません!」


 曲解しないでくれないかしら?

 そもそもこの結婚はわたしから言い出したことなんだから、渋々結婚するのはわたしじゃなくてお兄様の方よ!


 前世の記憶を取り戻す前はあれだけ夢中になって追い回していた殿下だけど、話しているとなんか無性にイライラするわね。

 ゲームでも好きなキャラの一人だったんだけど、こんな人だったかしら?

 ってまあ、ここはゲームじゃなくて現実なんだし、ゲームでのやり取りを参考にしたらダメでしょうね。だって彼らは生きているもの。


「殿下、おっしゃりたいことがわかりません。はっきりと言ってくださいませんか?」


 長居もしたくないし、回りくどいやり取りなんてしたくないのよね。


「アラトルソワ公爵令嬢、不敬だぞ」


 わたしがちょっと生意気な口をきいたからだろう、それまで黙っていたラインハルト様が低い声で注意を入れた。

 ルーカス殿下が片手をあげてそれを制す。

 ラインハルト様が悔しそうに口をへの字に引き結んで、相変わらず鋭い視線でわたしを睨みつけてきた。


 居心地が悪いなあ。何なのかしらこれ。あとでお父様に報告して苦情を入れてもらおうかしら。

 帰っていいですか、という言葉が喉元まで出かかった時、ルーカス殿下がコホンと咳ばらいをして、改まった顔でこう言った。


「では単刀直入に言おう。アラトルソワ公爵令嬢、ジークハルトとの結婚を取りやめて、僕の妃にならないか?」


 ………………はあ⁉





ブックマークや下の☆☆☆☆☆にて評価いただけると嬉しいですヾ(≧▽≦)ノ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
サラマンダー君はお元気ですか? お嬢様が誘拐され、婚約破棄とダメ人間との結婚を強要されています 部屋の中限定で召還しませんか?
王太子になりたい為に言い出したの丸分かりで、本当にないわーʅ(◞‿◟)ʃ ラインハルトとセットでルーカスウザいわ。 こんなのお兄様にバレたら激おこ案件ですね。
え。 だめ ぜ〜ったいだめっ! お兄様一択なのっ!やめて、近寄らないで〜❗️
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ