期末試験と謝罪 3
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「殿下、わたしにどんな用でしょうか?」
ヴォルフラムの姿が見えなくなって訊ねると、ルーカス殿下は周囲に視線を走らせたあとで、場所を移そうと言った。
いつ人が来るかわからない寮の玄関前では話しにくいみたいね。まあ、それはそうか。
わたしは連日の徹夜で寝不足だし、試験で疲れているから、できれば殿下にお付き合いはしたくないけど、王子相手に「嫌です」なんて言う勇気はないわ。
というか、ルーカス殿下の中のわたしの心象をこれ以上悪くするとさ~、悪役令嬢(候補)的にはまずい気がするのよね。できるだけ危険な橋は渡りたくないから、ここは素直に従っておくべきだと思うわけよ。
ラインハルト様にも睨まれているし。
あの件はさ、どちらかと言えばわたしは被害者側のはずなのに、ラインハルト様はわたしの方こそ加害者だとか思っているのかしらね。
アラトルソワ公爵家やナルツィッセ公爵家が騒がなければ、殿下が陛下に怒られることもなかったし、自分が父親から怒られることもなかったって? もしそうだとしたら、それはちょっと自分勝手よねえ。
「どちらへ向かうのですか?」
「城だ」
……はい?
「学園のサロンを借りてもいいが、目立つだろう? だから城へ行こう」
いやいや、この面子でお城に向かう方が目立ちませんか⁉
それならまだ学園のサロンの方がいいなと思ったんだけど、すでに正門前に馬車を待たせてあって、女子寮の寮監にも報告済みだと言われれば何も言えない。
殿下と同じ馬車に乗ってお城に行ったって、きっとすぐに噂になるんだろうな。
なんでこう、わたしってば女の子の敵を作るような展開に巻き込まれるのかしら? これも悪役令嬢の性ってやつ? はあ……。
せっかく女子寮まで戻ったのに、また学園の方へ向かって歩くことになって、徹夜明けのわたしはへとへとですよ。
幸いにして、学園にはそれほど人は残っていなかったからあまり注目はされなかったけど、何人かには見られたから噂は立つんだろうなぁ。
正門前に止められていた豪華な馬車に乗り込むと、ゆっくりと進みだす。
殿下は相変わらずの感情の読めない微笑で、ラインハルト様は怖い顔だ。
ああ、胃が痛い……。
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