突然の言いがかり 2
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校舎の東にあるサロンに向かうと、部屋の中には長くてまっすぐな金髪にエメラルド色の瞳をしたイケメンが待っていた。
彼はラインハルト・グレックヒェン公爵令息。
ラインハルト様は、現在三年生であるルーカスと同学年で、彼の幼馴染で側近。そして当然、攻略対象の一人でもある。
ラインハルト様以外の姿はなく、彼は殿下が着席すると、その後ろに立った。
席を勧められたので、わたしとアレクサンダー様もソファに座る。
ラインハルト様かルーカス殿下が事前に頼んでおいたのか、すぐにティーセットが運ばれて来た。
「何故お前が一緒なんだ、アレクサンダー」
お茶の用意が終わると、ラインハルト様がじろりとアレクサンダー様を睨んだ。
すると、アレクサンダー様がにこりと微笑む。
「学園では、アレクサンダー先輩、もしくはアレクサンダー様と呼ぶべきではないかな、ラインハルト」
あら、このセリフ、どこかで聞いたことがあるわよ~。
確かお兄様がアレクサンダー様に向かって放ったセリフだったわね。
でもアレクサンダー様ってば、最初こそお兄様を先輩と呼んでいたけどすぐにいつも通りに戻ったわよ?
「……何故あなたが一緒なんですか、アレクサンダー先輩」
ラインハルト様がぐっと眉を寄せて、ものすごく嫌そうに言いなおした。
ちらりとアレクサンダー様を見れば、とってもご満悦な顔をしている。……アレクサンダー様、ラインハルト様と仲が悪いのかしら? ちょっと意地悪ね。
「殿下がマリアを連れているのを見かけてね。マリア一人では心細いだろうからついてきたんだ。……それとも、私に聞かれたくない話でもするつもりだったのかな?」
……はい確信~! アレクサンダー様、アグネスの件を知ってるわ! 殿下がナルツィッセ公爵家に子飼いのものを潜り込ませてアグネスの様子を報告させてたの、気づいているわ~‼
これはやばい。
だって、アレクサンダー様は妹を溺愛している。
そんな溺愛する妹の私生活をルーカス殿下が探らせていたとわかれば、それはそれは激怒するはずだ。というか、もう激怒していると思う。
……あれ? アレクサンダー様についてきてもらったの、間違いだったんじゃない?
なんか、場の空気がピリついてますよ、怖いです。
怖いからついてきてもらったはずなのに、余計に怖いですよ何でですか?
「ラインハルト、落ち着け。アレクサンダーもだ。何故ラインハルトに喧嘩を売る真似をする」
「そう思われるのであれば、ラインハルトや殿下に心当たりがあるのではありませんか?」
わーぉ、辛辣~。
心当たりあるだろこら、って言ってるのと一緒~。
わたしもう空気になりたいな。そしてそっとこの場から退散したいな~。
わたしが遠い目をしていると、ルーカス殿下が、すっといつもの微笑を消した。
途端にその美貌が冴えわたって、恐怖すら感じてしまう。
……ルーカス殿下の真顔って怖いのよね。いつも微笑んでいるから余計に怖く見えるのかもしれないけど。
「腹の探り合いはやめようか。僕としても、アラトルソワ公爵令嬢に聞きたいことがあるし、回りくどいのも好きじゃない」
「そうですね。私も時間は有効的に使いたい派です。くだらないやりとりは避けたいところですね」
「アレクサンダー、殿下にその口の利き方は……」
「アレクサンダー先輩、だろう?」
「……くっ」
ラインハルト様がきゅっと唇を噛んだ。
ルーカス殿下が軽く手を上げてラインハルト様を黙らせる。
「くだらないやり取りがしたくないなら、君の方もラインハルトをいじるのはやめてくれないか。君とラインハルトの仲だろう?」
「おや、どんな仲でしょうか。……私は別に、ラインハルトと仲が良かったことはないと思いますけど。あちらも同じだと思いますよ」
「ああもうわかった」
ルーカス殿下が面倒くさそうに首を横に振る。
そして何故かわたしを見た。
……え? わたし、悪くないよね? なんでお前のせいみたいな視線を向けてくるわけ?
わたし、何か悪いことをしたかしら?
腑に落ちないけど、余計な口は利かない方がいい気がするから黙ってよっと。
「では、単刀直入に言おう。僕はアラトルソワ公爵令嬢に訊ねたいことがあってね。……ねえ、アラトルソワ公爵令嬢。君は僕の妃に選ばれなかった腹いせに、ブリギッテと組んで僕の王位継承を阻もうという魂胆なのかい?」
わたしは一瞬、何を言われたのかわからなくて目を点にした。
妃に選ばれなかった腹いせ?
王位継承を阻む……って。
……はあ~⁉
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