結婚準備 2
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「はあ、もう月曜日だわ。全然疲れが取れてないから、今日は授業に身が入らないわね」
「お嬢様の場合、それはいつもじゃないですか?」
月曜日の朝。
制服に着替えて、ヴィルマに髪をハーフアップにしてもらいながらぼそりと呟けば、ヴィルマからすぐさま失礼なツッコミが返って来た。
……ヴィルマ、確かにそうだけど、それを言ったらダメなのよ‼
そしてこれでも、頑張って授業を聞いているのよ、わたしは! ただ、もともとのスペックがあまりよろしくないから、授業の最後まで集中していられないだけよ!
気づいたら集中力が切れてぼけっとしているみたいで、途中から授業の記憶がないのよね。
まったく、マリアの怠け癖は一朝一夕で取れそうもないわ~。こんなんだから、ニコラウス先生の週二回の補習も、まだ終わらないのね。
「そんなんで、期末試験は大丈夫なんですか? あと三週間後でしょう?」
「ヴィルマ、嫌なことを思い出させないでちょうだい!」
中間試験はなんとか乗り切ったけど、夏休みの前に期末試験がやってくる。
ファイアーボールとストーンブレットは習得したから、実技試験で恥をかくことはないと思うけど、筆記試験は本気でまずい。
中間試験はお兄様に猛勉強させられたので、何とかギリギリセーフだったけど、期末試験はどうなることやら。
というか、中間試験のときと同じくお兄様先生による集中講義が待っていそうで、想像するだけでガクブルよ。
「ああ、そう言えば、奥様からお手紙が届いていましたよ」
「お母様から?」
なにかしら、と首をひねりながらヴィルマから手紙を受け取る。
中を確認したわたしは、思わずひくっと頬を引きつらせた。
字の乱れは心の乱れと言うけれど、普段流麗な字を書かれるお母様の字が、ものすごく乱れているように見えるのは気のせいかしら?
そして読み進めたわたしは、がっくりと肩を落とした。
曰く――
『マリアちゃん! 結婚式は来月だって言うのに、いったい何をしているの⁉ 次の週末には、絶対に帰っていらっしゃい‼』
とのことである。
うぅ、準備はお任せしますって言ったのに~。
もちろん、両親にすべて丸投げですませられるとは思っていないけど、お兄様と結婚するって報告したときのお父様とお母様の喜びようと浮かれようと張り切りようが怖すぎて、あの二人の結婚準備に参加する気にはなれないのよ‼
自分のことだから無責任だとも思うけど、たぶん、すごいことになっていそうなんだもん!
これが他家に嫁ぐのであればもちろんこうはいかないけど、逆を言えば他家に嫁ぐ場合はお父様もお母様ももっと落ち着いていたと思うわけよ。
お兄様は跡取りだから家に残るのは確定だったけど、わたしの場合は順当にいけば他家に嫁ぐ可能性が濃厚だったから、両親にしてみたらお兄様と結婚して家に残るのは棚から牡丹餅的なラッキー案件だったのかもしれないわね。
息子と娘が両方残るわ~って騒いでいたお母様の姿を思い出すわ~。
お父様もお母様も、お兄様は本当の息子ではないけど、ものすごく大切にしている。
実の娘であるわたしも言わずもがな。
はっきり言って、超がつくほどの親バカなあの二人は、わたしとお兄様の結婚に、ものすごく、すっごーく、乗り気なのだ。
……はは、実は契約結婚なんです~、離婚する予定なんです~、なんて、言えないわ。
ああ、ものすごく親不孝をしている気になって来たわよ。
で、でも、娘が悪役令嬢になって追放だ処刑だの憂き目に遭うよりは、きっといいわよね、うん!
深く考えると罪悪感がのしかかってくるので、わたしはできるだけポジティブに考える。
娘が断罪されたら、少なからずお父様やお母様にも影響があるはずだし、うん、そうならないことこそ最大の親孝行よ‼
「ヴィルマ、今週末の土日は家に帰るわ」
「わかりました。準備しておきますね」
「ありがとう、お願いね」
手紙まで来て帰らなかったらお母様の頭に角が生えそうだもんね。
あ、お兄様にも言っておかなくちゃ。
……って、お母様のことだから、お兄様にも手紙を出している気もするけど。
昨日一昨日もとっても疲れたのに、今週末のお休みもきっととっても疲れるんだろうなと、わたしはため息を吐いた。
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