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生徒指導室の常連 1

あけましておめでとうございます!

2024年は切りよく100話で終わりまして、101話~2025年スタートです(#^^#)

本年もどうぞよろしくお願いいたします!

 はあ、ついにこの日が来てしまったよ。

 城から帰って、月曜日の放課後。

 わたしは生徒指導室に向かう階段をとぼとぼと登りながら、何度も何度もため息をついていた。


 ……というか、わたし、生徒指導室常連じゃない? ニコラウス先生が補習もしてくれてるから、最低でも週二回はお世話になってるのに、ここ最近話し合いだなんだとずっと呼ばれてるものね。うぅ、生徒指導室常連って、問題児みたいでなんかいやあ!


 実際、問題児なんだろうけども!

 前世の記憶を取り戻して、攻略対象たちを追いかけまわすことはやめたけど、二年生がはじまって数か月ですでにいくつも問題を起こしているのは否めない。


 いやでも、どれも不可抗力だと思うのよ!

 サラマンダーのときは何かそこに行かなきゃいけない! って思ってたし、実際わたしが行ったから山火事がおさまったようなものじゃない? まあ、わたしは何の役にも立たなかったけど、わたししか見えなかったサラマンダーを水の檻に閉じ込めたおかげで山火事がおさまったんだもの、わたしの功績と言っても過言ではないはず。

 墓地のときだって、あれも仕方がなかったのよ。アレクサンダー様の妹であるアグネスを目覚めさせるためだったし、アンデットに襲われてやむにやまれず無茶をしたというか……。

 それで今回も、まさか攫われるとは思ってなかったし、光魔法を使ったのだって、ヒルデベルトが目を失うかもって焦って咄嗟に使っちゃっただけだしさあ。


 うんうん、どれもわたしは悪くないはずよ!


 それなのに、お兄様にもアレクサンダー様にもニコラウス先生にも問題児扱いされているような気がするのよねえ。


 ……最近は、そこにヴォルフラムまで加わった節があるのよ。同級生にも問題児だと思われるってわたしってどれだけなのかしら。悲しいわ。


 ヴォルフラムは今日、学園を欠席していた。

 ボールマン伯爵たちや黒豹のことで、お父様と一緒にお城に呼ばれているのよ。

 だけど、放課後の生徒指導室でのお話し合いには参加するって言ってたから、そろそろ学園に戻って来るでしょうけどね。


 ボールマン伯爵がやらかした悪事だけど、まあ、出るわ出るわ! 今回の件のほかに、お兄様やアレクサンダー様が調べていたこともあったし、他にもまだまだあったみたいで、なんか今お城はとっても大変だそうよ。

 お父様もアレクサンダー様のお父様も駆り出されて、ボールマン伯爵家の取り調べを行っているみたい。


 ……特にお父様は、わたしが攫われて売り飛ばされそうになっていたことを聞いて大激怒していて、ボールマン伯爵家とその関係者を徹底的につぶすつもり満々みたいよ。うぅ、お兄様もだけど、お父様もこういうときは容赦ないからね。怖い怖い。


 お父様からも「マリアちゃん、危ないことをしたらダメでしょう⁉」って怒られたし、危うく護衛という名の監視を増やされそうな危険すらあったけど、それは何とか諦めてもらったわ。

 だって、学園に連れて行ける使用人は一人だけですからね。学園に無理を言って(脅してともいうけど)増やすなんて特別扱いはできないわよ。わたしが説得しなかったらするつもりだったみたいだけど。


 まったく、我が家の男の人ってどうしてこう過保護なのかしら?


 とにかく、そんなこんなで、ボールマン伯爵家はもうおしまいだと思う。

 墓地の結界を壊しただけでも大事なのに、ボールマン伯爵は他にもいろいろやりすぎていた。

 国王陛下は当然のことながら激怒しているし、アラトルソワ公爵家とナルツィッセ公爵家まで出てきたのでは、ボールマン伯爵を庇う人は誰もいない。

 まだどういう刑罰になるのかは決まっていないけど、お兄様とアレクサンダー様が口をそろえてボールマン伯爵は処刑だろうと言っていたから、そうなる可能性が濃厚だ。


 伯爵家は取りつぶしで、ツェリエをはじめ伯爵の家族にも相応の罰が与えられるだろうとのこと。

 そして、ボールマン伯爵家を告発――したことになっている――したオルヒデーエ伯爵には、あちこちから称賛の声が上がっている。

 ボールマン伯爵がヒルデベルトのことをばらしても、恐らくたいしたダメージにはならないだろうとのことだ。むしろ、幼少期にボールマン伯爵と黒豹のせいで息子が攫われたオルヒデーエ伯爵には同情の声が上がるだろう。

 そして、これを機に、オルヒデーエ伯爵家はアラトルソワ公爵家の派閥になるそうだから、お父様の庇護下に入る。公爵家の庇護下にいる伯爵を表立って非難する馬鹿はいないだろう。


 本当は、アラトルソワ公爵領に領地を持つ貴族以外を派閥に入れるのは珍しいんだけどね。今回はお父様も特別に許可したみたいよ。

 オルヒデーエ伯爵はグレックヒェン公爵領内に領地を持っているんだけど、グレックヒェン公爵も派閥を移ることに関しては何も言わなかったそうだ。息子を助けてくれたアラトルソワ公爵家に恩を感じるのは当然だと言っていたみたいだけど――たぶんあれは、厄介払いもあったんじゃないかな。

 ボールマン伯爵が世間的に責められることはなくても、ヒルデベルトの存在が消えるわけではないからね。

 グレックヒェン公爵としては面倒ごとは避けたいってことなのだろう。


 ……ま、これはお兄様の受け売りだけどね!


 って、ゆっくりゆっくり階段を上ったんだけど、とうとう到着してしまったわ、生徒指導室。

 入りたくないなあと思いつつも諦めて扉を開くと、ニコラウス先生とお兄様とアレクサンダー様、それからヴォルフラムはすでに到着していてわたしを待っていた。


「お呼びだてしてすみません、マリアさん」


 ニコラウス先生がにこやかにわたしに席を勧める。


 ……お兄様とアレクサンダー様の真ん中かぁ。


 そして対面にはニコラウス先生とヴォルフラム。うん、尋問される予感しかしない。


「本当は、ヒルデベルトさんも来てくださればよかったんですけどね」


 ニコラウス先生、怖いことを言わないでください!

 ここにヒルデベルトまで加わったら、わたし、怖すぎて泣いちゃいますよ!


「彼はまあ、来ないでしょうね。それ以前に連絡が取りにくいですから」


 アレクサンダー様が苦笑する。

 ヴォルフラムは複雑そうな顔をしていた。

 ボールマン伯爵の問題が片付いても、ヒルデベルトがオルヒデーエ伯爵家に戻れるわけではない。

 過去に攫われたとはいえ、ずっと義賊として活動していたヒルデベルトを迎え入れるには、貴族社会は厳しすぎた。

 オルヒデーエ伯爵やヴォルフラムがどう思おうと、世間はそれを許しはしない。戻ってきた瞬間に捕縛されるだろう。

 それがわかっていて戻るはずがないのである。


 ……だから、オルヒデーエ伯爵もヴォルフラムも、表立って家族と呼ぶことはできないのよね。


 白獅子を結成しているヒルデベルトが、この先どうやって生きていくのかはわからない。

 このまま義賊を続けるのか、はたまた白獅子を解散して市井で暮らすのか、それは彼が決めることでわたしたちがとやかく口を出せる問題ではないのだ。

 だけど、どちらに転んでも、オルヒデーエ伯爵やヴォルフラムと堂々と会うことはかなわない。

 隠れて会うくらいはできると思うけど、頻繁には無理だろう。

 そしてヒルデベルトに会う気があるのかどうかも、わからない。


 ……本当、ボールマン伯爵も黒豹も、許せないわ。


 彼らはヒルデベルトから、そしてオルヒデーエ伯爵やヴォルフラムから家族を奪ったのだ。

 本当だったら、父と息子、兄と弟と呼び合う仲だった彼らから、それを奪ったのである。

 むうっと眉を寄せると、ヴォルフラムがわたしを見てちょっと笑った。


「気にするな。……父も俺も、兄が生きていたとわかっただけでよかったと思っている」


 ……兄、か。


 ヴォルフラムがヒルデベルトを「兄」と呼べたことにホッとした。

 思うところはあるんでしょうけど、ヴォルフラムにとってヒルデベルトは紛れもなくお兄様だものね。

 黒豹も捕縛されたから、ヒルデベルトが右目を失うこともなくなった。

 よかったよかった……って、あー……。わたし、またゲームの内容を変えちゃった……。

 ごめんね、リコリス(ヒロイン)……。

 でも、後悔はしてないよ。だって右目を失うなんてつらすぎるもの! ヒルデベルトが怪我をしなくて本当によかったわ!


 ……まあ、そのせいで、今日こうして呼び出されているんだけどね。


 ヒルデベルトの話で、目的の話が脇にそれてくれたら嬉しかったんだけど、もちろんそう都合よく進むはずもなく。

 ニコラウス先生がわたしを見て、それから困ったように眉を下げた。


「ええっと、それでですね、マリアさん。ここに来てもらったのはほかでもありません。……ヴォルフラム君から、マリアさんが光魔法を使ったと聞いたのですけど、本当でしょうか?」


 違いますと言えたらどんなによかったか。


 わたしはこの場にいる全員に注目されながら、かくんとうなだれた。




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― 新着の感想 ―
人知れずヒルデベルトの目を守って、マリアちゃん偉かったねえ。 ひとまず一件落着して良かった。いや、まだマリアちゃんには乗り越えるべき試練がありそうかな。。 そしてマリアちゃんパパ、多分ものすごい優…
素直なのは可愛らしい
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