48.褐色ムチムチキツネっ娘…まだ追加属性あり
隠密ギルドの入団試験を見学しようとした矢先、褐色銀髪のボンキュボンキツネっ娘ダンサーがギルドの扉を勢いよく開けて入ってきた。
その背には槍…いや、薙刀か?
いやまさか……偃月刀か……?
背丈より長い偃月刀を担いでいる。
カッケー!
しかし…ホントに色々スゴイな!?
お胸もお尻もスゴイサイズだが、何がスゴイってそれでちゃんと綺麗に見えるバランスが成り立ってるってのがスゴイ!
フルールさんやココさんもビッグサイズの美人さんなのだが…多分身長が低いからかな?
より大きく見える。
「あ、あのっ!まだ入団試験って申し込めますかっ!?」
「は、はい、まだギリギリ大丈夫です…」
「良かったぁ〜……!」
あの人も隠密ギルドに入りに来たのか……。
……え?マジで?
「踊り子さん…ですよね?」
「あ、あぁ…良い体をしたキツネっ娘の踊り子だろうな……」
「いやまぁ確かに、見事なダイナマイトボディですけど…」
(コウスケさん?)
「んんっ!お、踊り子さんが隠密ギルドに入るんですか?」
なんか、入るところ間違えてない?って聞きたい。
「そ、そうだな…一応聞いとくか……あー、そこのキツネっ娘、ちょっと良いか?」
「はい?なんでしょうか?」
うわっ。
ちょっと振り向いただけなのにたゆんたゆん……
(コウスケさん?)
おっふ。
すいません。
「あんた…ここがどこだか分かってるか?ダンス教室では無いぞ?」
「それぐらい分かっています!ここは隠密ギルドでしょ!?なんでそんな事を……あっ!」
「あっ?」
「ナンパですねっ!?」
「はぁっ!?」
いや、それはさすがにおかしい。
「私が働いていた酒場でもよく誘われましたもん!でも残念でした!そんなつまんない誘い文句で行くほど私は安くないんですよ!!」
「ちげーよ!あんたの格好が踊り子のそれだから思わず聞いちまったんだよ!」
ダニエルさんが反論するがキツネっ娘の耳はペターンと折り畳まれ、見るからに聞く気がありませーん、といった感じでつーんとそっぽを向いてしまった。
と思ったらキツネっ娘はダニエルさんの後ろにいる俺の姿を見つけると、急にハッ!としたようにこちらに近寄ってくると、身だしなみを整え始め…いや遅いよ?
ここでする事じゃないよ?
扉を開ける前にやることだよ?
せめてこっちくる前にやっとこ?
「あ、あの!きょ、今日は厳正な審査、よ、よろしくお願いしますっ!」
「えっ?」
「えっ?」
この子は何を言ってるのかしら?と言った感じで聞き返せば、この子も、えっ違うの?といった感じでこちらを見てくる。
「あー…もしかしてお嬢のこと、ギルドから来た審査員だと思ってんじゃねぇか?」
「え、あーなるほど……」
そういうことか。
びっくりした。
何がびっくりって、頭を下げた彼女の巨大な胸が俺の頭の位置と同じ高さにきてしまい、目の前のこの国宝を至近距離で……
(…………)
あ、やべぇ。
背筋が凍ってしまいそうだわ。
変な汗も出てきたのだわ。
アババババ。
「え、えっと…でも、冒険者ギルドの制服ですよね?それ…」
「…こほん。確かにそうですけど、私はまだ入ったばかりの新人なので、今いろんなギルドを見て回ってるんです。試験のこともさっき知ったばかりなので、試験官とかでは無いんですよ」
「そ、そうなんですね……」
まぁね、確かに冒険者ギルドの制服を着ているけどさ。
ちなみにこのギルドの制服。
実はギルドの屋根の色と同じ線が入っていて、その色でどこのギルドの色の服か分かるらしい。
今「制服着てるじゃん」って言われて、「あーこれは違うんじゃよ」と説明した時、軽くつまんだところで気づいた。
スゴイところで気付くもんだ。
「でも、見学はさせていただくので、頑張ってください!応援しますよ!」
「わぁ!ありがとう!じゃなくて…ありがとうございます」
「ふふ、敬語でなくても大丈夫ですよ?あなたの方がお姉さんでしょうし」
「えっ!?で、でも私まだ15ですし……」
はっ!?15っ!?
その体でっ!?
「へ、へぇ〜…私は10ですよ?」
「えっ!?オーラは20ぐらいなのにっ!?」
「ぶふぅ!」
ダニエルさんが吹き出した。
…そうね、あんた知ってるもんね。
「でも…オーラって?」
「私たち狐の獣人の中には、相手のオーラを見ることができる人がたまにいるんだよ!」
「それがあなた?」
「そうだよっ!他にもユキちゃんとかぁ…」
「こらこら、個人情報…」
「ハッ!」
…抜けてる子なのかな?
敬語が速攻で取れたのは良いけど、人の個人情報をうっかり滑らせてるのは、隠密ギルドに入ろうとする者としてどうなの……?
それにしてもオーラか……。
(もしかして、魂が見える種族とかもいるのかな?)
(いるかもですね。もしそうなら私たちのこと、一瞬で分かっちゃいますね…)
(相手が善人である事を祈るか……)
「まぁとにかく、今は応募を済ませてしまいましょう?」
「あっ!そうだった!」
そう言って受付のお姉さんに応募用紙をもらうキツネっ娘。
…尻尾ふわふわで気持ち良さそう……。
「はぁ…まぁ、とりあえずオレたちも会場に行こうぜ。そこで色々説明してやるよ」
「はい、お願いします」
「おう。…ほらそこのキツネっ娘!案内してやるからこっち来い!」
「えー…なんでナンパ男に……」
「だから!俺はナンパしてねぇ!」
(…なるほど、ダニエルさんは冒険者で言う、「ムードメーカー」なんですね)
(確かに、ムードメーカーではあると思うけど……)
いじられキャラも持ってはいるだろうけど、多分これは素だろうな。
…お疲れ様です。
そんなダニエルさんの後を俺とキツネっ娘、そしてずっといたけど一言も喋らず場を静観していたココさんがついて行く。
…ココさんのこと忘れてた……。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ダニエルさんに案内されたのはギルドの地下、冒険者ギルドにある迷宮への入り口と同じような階段を降りたところが試験会場のようだ。
「「おおぉぉぉ〜〜!!」」
俺とキツネっ娘の声がハモった。
そこは広い空洞になっていて、とてもギルドの地下にあるものだとは思えなかった。
確かに階段は少し長めだったが、まさかあの天井一枚隔ててギルドの床、なんて事は無いよな?
「そういやぁキツネっ娘、お前の名前はなんて言うんだ?」
「人に名前を聞くときはまず自分からでしょ?」
「このガキ……」
落ち着いてダニエルさん。
あ、いや、落ち着こうとしてるから余計イラついてるのか。
ともあれ、この子の相手は俺に任せてくれ。
「えぇと、じゃあ…私はマーガレットです。よろしくお願いします」
「ん!マーガレットね!私は《ユーリ》!よろしくね、マーガレット!」
「はい!よろしくお願いします、ユーリさん!」
未だナンパ男の称号が外れないダニエルさんに代わり、俺が控えめに挨拶をするととてもスムーズに教えてくれた。
…ダニエルさん。
そんなゲンナリした目を向けんであげて。
この子もきっと緊張してるのよ、多分。
「それで、こちらがダニエルさん。ナンパ男じゃなくてちゃんとした従業員さんですよ」
「えっ!?こんな怪しいのにっ!?」
ひでぇw
「人は見かけに寄らない、て言うじゃ無いですか」
「あ、そっか!」
良いのかそれで。
ほら、ダニエルさん。
ナンパ男の称号が外れましたよ。
よかったですね。
感謝してくださいよ。
「怪しいの部分も否定してくんねぇか?」
「じゃあ毎回真後ろに立つのやめてくださいよ」
「そりゃ無理だ」
「なんでや」
だから怪しさが滲み出るんだよ?
「こほん…それでこちらがココさん。隠密ギルドの冒険者ですよ」
「そうなんだ!よろしくお願いします、ココさん」
「よろしくするかは貴女次第」
「は、はい!頑張ります!」
変わらずクールなココさんに、ユーリさんは試験前だということを思い出したようで、緊張し始めてしまった。
うーん…見事にカチンコチンだ……。
少しほぐしたほうがいいよな。
「ダニエルさん、今回試験を受ける人って何人ぐらいいるんですか?」
「んー?そうだなぁ…20人ぐらいか?」
「へぇ〜、合格人数とかは?」
「いいと思ったやつは迎え入れる、そうじゃなければ不合格、だな」
「なるほど、分かりやすいですね」
「だろ?」
てことは、20人全員が受かることもあれば、その逆もまた起こり得るってことか。
大変だね。
「それ、露骨なアピールや賄賂とかしようとする人いそうですね」
「いるぜ。必要な技術ではあるから、面白そうなやつはそれで引き抜いたりもするが、大体は落とすな」
「まぁそうですよね」
ギルドとして成り立ってる以上、手段は選ばないとしてもその後のことを考えているかどうかで決めてるんじゃなかろうか。
受かりたいが為だけに賄賂を送るやつと、あらゆる可能性を考慮して、その上で手段のひとつとして賄賂を送るやつ、どちらが優秀か問われれば、まず後者だろう。
「それでも、それで引き抜きがあるのは隠密ギルドらしい気がします」
「お嬢の隠密ギルドのイメージはどんなんなんだ?」
うーん…なんというか…
「もう少しアウトローな感じと言いますか、「金さえくれるなら仕事は選ばんよ」みたいな人がいるもんだと思ってました」
「他の街や国なら分からんがな、迷宮都市じゃ仕事はきっちり選ばせてもらうぜ。金がありゃ良いってもんじゃ無いからな」
「…そういう考えが普通の方が良いと思うんですけどね」
「ま、人それぞれだからな。無理強いはしないさ」
それを言っちゃそれまでだけどさ……。
やっぱり、平和な国で育った者としては、「命あっての物種」だって考えが先走っちゃうんだよね。
…多分俺、魔物とか倒すの躊躇うな……。
覚悟が全く出来てない。
「ダニエル、そろそろ」
「おっと、そうだな。んじゃあキツネっ娘はそっちの参加者側に行ってくれ。お嬢はこっちだ」
「はい。ユーリさん、頑張ってくださいね」
「うん!絶対合格するよ!またね、マーガレット!」
手と尻尾をブンブンしながら他の参加者たちに合流するユーリさんを見送り、俺はダニエルさんとココさんと共に、学校のグラウンドにあった、校長が開会宣言する時とかに使う鉄のお立ち台の脇に来た。
これの名称なんだろうな?
「さて、時間だ。試験を受けるやつ、こっちに集まれ」
ダニエルさんがその台に乗って受験者たちを集める。
いよいよ試験が始まるんだな。
どんな内容なのか、楽しみだ。
このユーリさん。
属性つけすぎたせいでたまに何か忘れたりしますが、今のところどうにかなってます。
褐色であることをよく忘れそうになる。
脳トレが必要っぽい。




