47.隠密ギルド…ギルドマスターと会合
隠密ギルドに向かう間、相変わらず俺とココさんは一言も喋らずに歩いていた。
さすがにそういうもんだと慣れてきた俺は、マグと鍛治ギルドのことや、冒険者の話をして暇を潰していた。
そこで俺は気になったことをマグに聞いた。
(なぁマグ。マグはSランクの冒険者って誰か知ってる?)
(う〜ん…知らないですね……。メイカさんたちがAランクだということも昨日知ったばかりですし……)
(え、そうだったの?)
(はい。元々メイカさんたちとは3〜4ヶ月に1回会うぐらいで、仲は良いんですがそんなに皆さんのことは知らないんです)
(へぇ〜、じゃあ今度好きなものとか聞いてみようか)
(はい!そうしましょう!)
「こっち」
「! はい」
マグとそんな話をしている間に、どうやら大通りから脇道に入るようだ。
迷わないようにしっかり覚えないと。
(私も頑張ります!)
(ありがとう!)
こういう時気の置けない相手がいると安心感が段違いだよなぁ。
そこの人に送ってもらうって手もあるけど、気ぃ使っちゃって「あ、大丈夫です」って言っちゃうからなぁ、絶対。
さ、頑張って道を覚えましょい!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(…マグ…道覚えてる?)
(…ごめんなさい…覚えてないです……)
(まさかここまで複雑だとは……)
ココさんに案内され脇道に入ったのは良いのだが、曲がり道は多い、分岐も多い、同じような道が多いで、俺たちは道を覚えることが出来なかった。
…帰るとき送ってもらうしか無いなこりゃ……。
「着いた」
ここまでも無口だったココさんがそう言って足を止めた。
「ここが隠密ギルド……」
「そう」
外観は他2つのギルドと同じ感じかな?
そういえば、鍛治ギルドを見たときに気付いたのだが、冒険者ギルドとは屋根の色が違う。
冒険者ギルドはオーソドックスな紺色。
鍛治ギルドは朱色…辺りかな?
それでここ、隠密ギルドは深い緑色。
なんだろ、こう…暗いってわけじゃないんだけど落ち着いた色合いな感じ。
そうなると、まだ見ていない魔術ギルドや商業ギルドは何色なんだろう?
「あっ」
俺がまだ見ぬ他のギルドのことを考えている間にココさんは扉を開けようと歩いていってしまう。
慌ててその後を追う俺。
そしてココさんは扉を開けた。
…武器とかは飛んでこなかった。
ホッとした。
それは良いのだが、開けたときはガヤガヤと賑わっている声が聞こえたのに、ココさんが姿を現すとピタリと止んで、ココさんに視線が集まってしまう。
必然、側にいる俺にも視線は向けられるのですごく居心地が悪い。
「見てみろよ、《絶影》だぜ?」
「すげぇ…本物だ……美しい……」
「ねぇねぇ、その隣の子、もしかして《戦慄の天使》じゃない?」
「え?あの子が?そんな凄い二つな付けられるようには見えないけど……」
はー、居心地悪い。
またその二つ名か……。
ホント、誰だよその二つ名考えたやつ。
傍迷惑なやつだよまったく。
そんなことは気にせず、ガンガンカウンターまで進んだ行ったココさんは、受付のお姉さんに簡潔に用件を伝える。
「ダニエルに客人、何処にいる?」
「えーっと確か…」
「ここにいるぜぇ」
「(ひゃあっ!?)」
突然後ろから聞こえた声に驚いて振り返ると、そこには昨日と変わらないにやけ顔のダニエルさんがいた。
「かわいい悲鳴だなお嬢。ひゃあっ!だってよ」
「突然後ろに立たれていたら誰だって驚きますよ……」
なんでこの人はいつも後ろにいるんだろう……?
人によっちゃ撃たれるぜ?
「ダニエルさん、その子が?」
「そ、マーガレットちゃん、通称「お嬢」だ」
「へぇ〜」
「…昨日から思ってたんですけど、なんでお嬢呼び何ですか?」
確かオークション終わりぐらいからお嬢呼びだった気がするんだけど……。
あとしれっと受付のお姉さんにお嬢呼びさせようとすんのやめて?
「今更だなぁ」
「こんなこと聞いてる余裕は無かったので」
「ま、昨日はそうだろうな。あの2人の様子はどうだ?」
「元気ですよ。今は私のいる寮に住んでもらっています」
「そうかい、そりゃ良かったな」
軽く言ってるが、なんとなく心からそう思って言っていると感じる。
なんだかんだ言って、心配だったんだろうな。
「それで?何故お嬢呼び何ですか?」
「誤魔化されないかぁ」
「別に誤魔化すほどの理由でも無いでしょうに」
「えー?結構深刻な理由なんだがなぁ?」
「思いつきですよね?」
「まぁな」
「やっぱり…」
どうせそんなこったろうと思ったよ……。
「はい、そんな貴方にはこちらをどうぞ」
「仕事のプレゼントは間に合ってるぜ」
「安心してください。明日にはまた増えますよ、きっと」
「余計いらねぇ…」
「じゃあはい、お姉さん。後でこの人の机に置いといてください」
「え、あっはい、承りました」
「あ!汚ねぇ!」
「別に全部やってほしいと頼んでるわけじゃないんですから、書類の仕分けぐらいは自分でやってくださいよ」
というか、そこまで多くないでしょ。
俺が苦もなく持ってこれる程度の量だよ?
「そういうのは全部部下に任せるから苦手なんだよなぁ」
「ダニエルさん部下いたんですか?」
「酷くねえ!!?」
おん?
なんだなんだ急に。
ギルドにいた人達がココさんを除いて全員吹き出したぞ?
なにごと?
「…そういやお嬢には俺の役職言ってなかったっけか?」
「聞いてないですね」
「お嬢はなんだと思う?」
「え?うーん……」
ダニエルさんの役職……
ギルドマスターでは無いだろうな。
となると…
「ベテラン工作員?」
「ほーん?なんでそう思ったんだ?」
「うーん…なんとなく、ダニエルさんがそこそこの地位にいるとは思ってたんですが…」
「が?」
「ダニエルさんは…こう……あんまり真面目な所を見てないんですけど、なんとなく…腕が立ちそうというか……もしかしたらもっと上の…ギルドマスターの信頼とか凄そうというか……」
俺の答えに、さっきまであんなにそこかしこから笑いを堪えたような声がしていたギルドが、シーンと静まり返った。
……え?
俺なんかまずいこと言った?
「くくく……はははは…ハッハッハッハッ!」
そんな圧倒的静けさの中、急にダニエルさんが大声で笑い出した。
え?何?
怖い。
「どうよ、これがお嬢だぜ!?びっくりしただろ!?」
「は、はい…まさかそんなことを言うとは思いませんでした…」
「えっ?えっ?な、何か失礼な事言ってしまいましたか?」
「い、いえ!そうではなく…」
「お嬢ぅ、惜しいとこまで行ったんだがなぁ。残念だがハズレだ。正解は…」
相変わらずのもったいぶった答えの言い方をするダニエルさん。
惜しいってことは、その辺なんだろうけど……。
だが、ダニエルさんの答えはそんな予想を遥かに覆すものだった。
「隠密ギルドのマスターだ」
………………?
何言ってんだろうこの人は?
「へぇ」
「…お嬢信じてないだろ」
「あんまり」
「なんでだよっ!?」
いや、なんでと言われても……
「逆にどこが惜しかったんですか?確かにギルドマスターに近いとは言いましたけど…」
「おうよ、お嬢の予想は大体合ってるぜ?お嬢の言う通り、俺は裏方よりも表で動く方が性に合ってるんだ」
「ふんふん」
やっぱり。
じっとするのが苦手そうなんだもの。
「だから本当に惜しかったな!理由は合ってるんだから」
役職…ギルドマスター?
…うーん……。
「…お嬢、夢じゃ無いから自分の頬をつねるのはやめてくれ」
「……そのようですね」
夢かどうか確認するためにやったはずなのに、マグのほっぺたぷにぷにで楽しかったから離し難くなってしまった。
しかし、そうなると……
「…お嬢、別に熱とか病気では無いから、オレの額に手を当てるのはやめてくれ。というか無言でやるのをやめてくれ。割と心に来るものがある」
「……平熱ですね」
少なくとも俺の手よりは生温かい。
そっかー…じゃあ……
「忖度?」
「お嬢、言葉の意味は分からんが絶対違うからな?そんなにオレが隠密ギルドのマスターであるのが意外か?」
「うーん…なんというか……」
だって…ねぇ……?
「ダニエルさん、ギルドマスターとか絶対やりたがらなそうなので」
「それはまぁ…大正解だ」
だろうね。
(コウスケさん、なんでそこまで分かるんですか?)
(んー…なんとなく…かな…)
(むぅ〜…それにダニエルさんのこと、すごく信頼してるような……)
(あーそれは、どうだろう……)
(え?)
(ダニエルさんのことは「チャランポランだけど仕事は完璧にこなす人」じゃないかな?って思ってるから……)
(…えっとじゃあ…「油断ならない人」…ってことですか?)
(当たりでございます)
多分ハルキもそうだと思う。
昨日の感じだと、あんまり弱みを見せたくない相手って感じだったし。
(じゃあ、あんまり信用はしていないんですか?)
(まぁ、ハルキは俺たちのことを話せる相手だと思ってはいるらしいから、そこまでではないけどね。本当にちょっと、なんか…無茶振りされるかも?ってぐらい?)
(???)
駄目か〜、伝わんないか〜。
俺もよく分かんなくなったからどうしようもないなぁ〜。
(ま、何かあったらハルキが助けてくれるらしいし、俺たちも別に何かするわけでも無し、そんな身構えることはないだろうさ)
(そうですね。コウスケさんの言う通りなら、便りになる人ではあるようですし、大丈夫ですよね)
(?)
どういうことだろう?
まぁ、今はダニエルさんとお話中だ。
後で聞くとしよう。
「そういえば、ダニエルさん。わざわざ冒険者ギルドに連絡までして私を誘うなんて、今日は何かイベントでもあるんですか?」
「おっ!さすが鋭いねぇ!その通り、今日は新しく隠密ギルドに入りたいっつー奴らのための試験があるのさ」
「試験…ですか?」
ギルド入団に試験がある、ってだけなら不思議じゃないんだけど……。
冒険者ギルドは特に無かったよな?
「そ、冒険者ギルドと違ってオレたち隠密ギルドや魔術ギルドみたいな専門的なギルドに入るには試験を突破する必要があるのさ。というか、冒険者ギルド以外には大体あるぞ」
「へぇ〜!んー…と…」
「あぁ、たとえ専門のギルドに入ったとしても冒険者ギルドから離れたわけじゃないから、冒険者ギルドに登録してる限り冒険者であることに変わりはないぜ」
「あ、そうなんですね。勉強になります」
しれっと俺の聞こうとしたことを先回って言ってきたダニエルさん。
…まぁ、普通の疑問だもんな。
「先回った」というよりは「補足した」の方がいいだろう。
「それでその試験はいつなんですか?」
「もうすぐさ。受付で参加受付を済ませて、今は試験会場で待ってるぞ。受付時間ももう終わるし、オレたちもそろそろ……」
バァンっ!!
「ふぁっ!?」
「うおっ!?」
と、その時。
ギルドのドアが勢いよく開かれた。
そこから現れたのは、露出多めの扇情的な踊り子の服を着た、キツネ耳にキツネ尻尾のついた、褐色肌のナイスバディな獣人の女の子だった。




