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異世界で少女とまったりするために頑張る  作者: レモン彗星
第1章…迷宮都市での基盤づくり
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46.鍛治ギルド見学…ココさんの強さ

「水ぐらいしか出せないけど、どうぞ」

「あっ、ありがとうございます」

「ありがとう」


鍛治ギルドのスタッフに案内された部屋は、ここの事務所だった。

ドワーフ親子のケンカの声は聞こえるものの、防音性能は高いらしく、ドア1枚で繋がっているとは思えなかった。


…これはこのドアがすごいと言うべきか、あの親子の声量が凄いと言うべきか……。


「それじゃあまずは自己紹介をさせてもらうかな。俺はグラズ、鍛治ギルドの書類整理を一任されてる」

「私はマーガレットです。まだ冒険者ギルドで働き始めて3日目の新人ですので、色々と勉強させてもらおうと今日は来ました。よろしくお願いします」

「あぁ、よろしく、マーガレットちゃん。それじゃあさっそくだけど、書類を出してくれるかな?」

「はい。(ゴソゴソ)……はい、こちらです」

「うん。……ふむ……はい、確かに。それじゃあどうする?次に隠密ギルドに行くらしいけど、すぐに出発するの?」

「あ、えっと……」


どうしよう……。

出来れば鍛治ギルドをじっくりと見学したい。

でも、この後隠密ギルドに行かなきゃだし、さっきのドワーフの人みたいにいきなり怒鳴られたりするのは嫌だしなぁ……。


そう思いながらココさんをチラッと見る。


「問題無い。好きにすると良い」

「えっと…じゃあ、その…少し見学させてもらって良いですか?」

「うん!大歓迎さ!親方はあんなんだけど、他のやつはみんな優しい奴らばかりだから、あんまり緊張しなくても良いよ」


うっ、バレてる……。

そんな顔に出てたかな……?

気をつけないと……。


まぁとにかく…


「ありがとうございます、グラズさん」


俺がお礼を言うと、彼は満足そうに頷いた。


「うん、それじゃあさっそく案内しちゃうね。まずは…」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「どうだった?マーガレットちゃん」

「すごく楽しかったです!」

「それは良かった」


グラズさんの案内で鍛治ギルドの中を見て回り、一周したので事務所に戻ってきた。


鍛治ギルドの構造は、入り口すぐにカウンターが、その裏手に工房が、そのどちらからも入れる場所に事務所といった配置の1階と、冒険者ギルドと似たような作りの2階といった具合だった。


ただ、冒険者ギルドと違い会議室は無かった。

大体の話は下で済むので必要ないらしい。


代わりに物置がとても広く取られているようで、危険な物もあるらしく中には入れてもらえなかったが、入り口から見ただけでも凄まじい物量だった。


いや、ホントに楽しかった。


(ふふ、コウスケさん、何か見るたびに嬉しそうに声をあげてましたもんね)

(だってさ…ファンタジーの定番たる武器や防具が(つく)られてるところなんて滅多に見れないよ?)

(今後はギルドのお仕事で来れるじゃないですか

(それはそうなんだけど、でもほら、マグも武器が出来上がったところを見て、歓声を上げてたじゃないか)

(あ、あれは!だって、あんなの見たら「凄い!」ってなるじゃないですかっ!!)

(分かる)


出された水を飲みながら、マグとそんな会話をしていると、事務所のドアが開き、そこからさっきの女の子…リオと呼ばれたドワーフの子が入ってきた。


「いやぁ悪い悪い。まさかお客さんの前でケンカしちまうなんてなぁ。まったく…あのオッサンにも困ったもんだよ」

「お、リオちゃん。親方は?」

「4番カウンターに突っ込んだ」


大惨事では?


「そっか。あ、リオちゃん、この子が冒険者ギルドに新しく入った子だよ」

「おう!やっぱりそうか!オレはリオ!一応この鍛治ギルドのマスターの娘だ。とはいえ、そのマスターがあんなんだから、そこまでかしこまらなくても良いぜ!」


一応仕事なんだけど……。

多分聞かないかな……。


まぁ、ラフに接することができるのはありがたい。

こっちも変に気を張らずに済むし。


「えーっと…それじゃあ遠慮なく。私はマーガレット。よろしくね、リオ」

「おう!よろしくマーガレット!」


俺が手を出すと、リオは握手に応じてくれた。


よろしくオレっ娘。


せっかくだし、リオからも色々聞こうかな。


「リオはドワーフなの?」

「そうだぜ!だから身長のことは言うなよ?怒るからな」

「言わないよ……」


そんな見えてる地雷、踏むやついるのかよ……?


「リオは普段、何をやってるの?」

「アタシは裏で手伝いが多いかな。まだ練習の段階だから、依頼や店に下ろす分の装備品を作ることは出来ないんだ」

「まだ見習いってこと?」

「そ、結構良い線行ってるとは思うんだけど、まだまだだってオヤジがなぁ……」

「あぁ…厳しそうだもんね……」


しかも下手したら武器飛んできそうだし。


「まぁなぁ…でも、オヤジは馬鹿だけど鍛治に関しちゃ1番だからなぁ…馬鹿だけど」


馬鹿ってめっちゃ言うやん。


「聞こえてんぞリオォ!!」

(ひっ!?)

「っ!?」


そんな怒号と共にカウンターと繋がっている方の事務所の扉がとんでもない勢いで開かれた。


あんなん食らったら死んじまうよっ!?


「テメェ客人に何吹き込んでんだぁ!!」

「その客人に剣投げつけたやつに言われたかねぇわぁぁ!!」


あかん。

また始まってしまった……。


このままじゃ事務所(ここ)も戦地に……。


「2人とも、そんなに喧嘩しているとまた奥さんに怒られますよ?」

「「うっ!?」」


グラズさんの言葉に動きを止める2人。


「この前も依頼を出しに来た人に怒鳴り散らして追い返して、それで喧嘩してこっぴどく叱られたんでしょ?」

「「うぅ!?」」

「け、けどよぅ…あれはふざけた武器の作成依頼を見せられたから……」

「だからってカウンターをぶっ壊す必要は無かったでしょう?」

「ううぅ……」


いや、何やってんのこの人?

このギルドそんな日常的に破壊されてるの?


「リオちゃんも、止めるためって言って接客中のお客さんを踏み台にして飛び蹴りしたこと忘れてないでしょ?」

「ううぅ……」


踏み台にしたの?

大の大人を蹴り飛ばせる脚力で踏み台にしたの?

その人大丈夫?生きてる?


「だから、人の話は、よく聞いてください」

「「はい……」」


おぉ…グラズさんの言葉にさっきまであんなに言い合ってた2人がシュンっとした!


そんなに奥さん怖いのか…?

うーん…想像がついてしまった。


まぁ、ある意味これもお約束だしな。


「それじゃあ親方、マーガレットちゃんに謝ってください。親方のせいで死にかけたんですから」

「…それは悪いと思ってるよ……済まねぇな、娘っ子」

「いえ、私は怪我は無いんですけど…ココさんが……」

「あん?ココがどうかしたのか?」

「薄手の指抜きグローブで剣の刃を掴んでて……」

「いつものことじゃねえか」

「剣の(やいば)直掴(じかづか)みがっ!?」


てか毎回投げてんのかオッサンッ!?


「あー…マーガレットちゃん、もしかしてココさんのこと知らないの?」

「えっと…今日出会ったばかりで…ララさんのお友達としか…」

「そうなんだ」


え?

二つ名持ってるし、凄い人だろうとは思ってたけど、そんな有名な人なの?


(マグ、知ってる?)

(いえ…聞いたことありません。街ごとに有名な人はいますし、そういうことなんじゃないでしょうか)

(なるほど。ご当地有名人ってやつか)


そりゃ知らんわ。

それ以前にこの世界の有名人知らんわ。


「ココさんはSランクの冒険者で、身体能力と動体視力がズバ抜けて高いんだよ。ココさんの手にかかれば、親方の投げた剣を掴むのも朝飯前なのさ」

「そう言われるのは(しゃく)だが、相手がココじゃな……この街で五本の指に入るほどの実力を持った冒険者って言われてるほどだ。鍛治屋の俺じゃ相手にならん」

「へぇー!」


そんな凄い人なのか!

ダークエルフで隠密で最強の一角にいるクール美女……


「カッコいい…」

「ガハハ!良かったじゃねぇかココ!ファンがまた増えたぞ!」

「別に」


またって…まぁ確かにファンクラブとかあっても不思議じゃないなぁ。


豪快に笑うオヤジさんに対し、極めて冷静な返事をするココさん。


見事に正反対だけど、だからって仲が悪そうには見えないな。

…そこまで親しい仲でも無いし分かる訳ないが。


「ま、そういうわけで、ココに怪我の心配なんざ娘っ子にゃ、100年早ぇって話だ」

「はぁ〜…なるほど……」


Sランクは「とても腕の良い冒険者」としか認識してなかったけど、まさかそれほどとは思わなかった。


(冒険者って凄いな…)

(それが後何人もいるんですね…会ってみたいなぁ)


冒険譚(ぼうけんたん)大好きなマグがしみじみと言う。


Sランクかぁ……。

その人たちがいれば、龍狩りも少しは楽になりそうだけど……。


その場合は依頼するか防衛戦か、か。

冒険者がタダで働くとは思えないし、タダ働きなんてしたら、仕事にならない。


命を張ってもらうのだから、せめて謝礼ぐらいはキチンと用意したい。


防衛戦はその名の通り。

これはハルキに、守りたくなる街になるよう頑張ってもらおう。


「マーガレット、そろそろ」

「えっ?あ、はい」

「うん?もう行くのか?」

「ダニエルが待ってる」


考えを巡らせている俺に、ココさんが出発を促す。


…ダニエルさんが待ってるってなんか怖いんだよなぁ……。


「ダニエルが待ってる、か……娘っ子、ずいぶん気に入られたんだな」

「えぇ?そうなのでしょうか?少し怖いのですが…」

「あぁ…ダニエルさんなぁ…まぁ確実になんかされるだろうな……」

「や、やっぱり……」


リオまで言うとは……余計怖くなってきた……。


「ココさん…ダニエルさん何かやるとか言ってました?」

「行けば分かる」

「あっはい……」

「まぁ…頑張れマーガレット!」

「応援してるよ、マーガレットちゃん」

「生きて帰れよ、娘っ子」

「怖いこと言わないでください!?」


それがあのオヤジさんに言われたってのが余計怖いっ!?


「うぅ…これも仕事…これも仕事……」


俺はそう自分に言い聞かせつつ、ココさんと共にダニエルさんの待つ隠密ギルドに向かうため、鍛治ギルドを後にするのだった。


あぁ〜…嫌な予感しかしない。

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