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158.別れ…と再会の誓い

「ほれ、お前たち。そろそろ出発の時間だぞ」

「「えぇ〜!?」」

「はぁ……はぁ……耐えたぁ……!」


ダニエルさんの声に、エリーゼとフレデリカは凄く残念そうな声をあげた。

逆に俺は助かったとガッツポーズ。


結局自画自賛が恥ずかしかった俺は、2人には秘密だと貫き通し、今の今までエリーゼに羽交(はが)()めにされ、フレデリカにくすぐられていたのだ。


(むぅ〜……!コウスケさん、私のことをどう思ってるか言えばよかったじゃないですかぁ〜……)

(いやいや…俺がマグへの気持ち言ったら、女の子へ向けるものになっちゃうから駄目でしょ?)

(そうですけど〜……)


俺が彼女の好きなところを言わなかったとブー垂れるマグ。


何も知らないエリーゼやフレデリカ、ココさんらその他の冒険者などはまだしも、ハルキとダニエルさんが聞いてる前でそんな堂々と言える度胸は俺には無い。

絶対からかわれる。


(……みんながいないときね)

(!…はいっ♪)


もう……マグの可愛らしいわがままに弱いなぁホント……。


マグにめっぽう弱いことを改めて感じている俺に、エリーゼが悔しそうに、くすぐっていたフレデリカが疲れた声で話しかけてくる。


「むぅ~っ!まだマーガレットの好きな人聞いてないのにぃ~!」

「はぁ……はぁ……!マーガレット…結構体力あるのね……」

「くはは……!いろいろあったからね……!」

「ギルドのお仕事って大変なのね……!」

「私は特別忙しいと思うけどね……!」

「えっ?そうなの?」

「いろんなところに顔出して、お手伝いしていろいろ学んでるからねぇ……」

「へぇ~!だからそんなに頭が良いんだね!」

「…まぁ…ほんと……いろいろあったからね……」

(…ありましたね……)

「な、なんでそんなに遠い目をしてるの……?」

「マーガレットに何があったの……?」


ははは……なにがあったかって……毎日がイベントの連続だったとしか言えないかな……。


「いい?エリーゼ、フレデリカ」

「な、なに……?」

「ど、どうしたの……?」

「どんな理不尽があっても…折れてはいけないよ…?」

「「えっ…と……」」

「諦めずに考えていればきっと攻略法が見つかるからね……」

「「は、はい……」」

「何を教えてるんだお嬢……」


何をって……ふふふ……それをあなたが言うのかダニエルさんよ……。


「こほん……まぁそれはともかくとして、勉強頑張ってね?でも無茶しないでね?さっきも言ったけど、油断しちゃ駄目だよ?」

「うん。ちゃんと気を付けるよ」

「マーガレットのように何を考えているのかさっぱり分からない相手が、向こうにいないとも限らないものね」

「あれ?今さりげなく暴言吐かれた?」

「褒めてるのよ」


ホントにそうなの、フレデリカ?

信じていいんだね、フレデリカ?


「というかエリーゼはいつまで私を捕獲してるの?」

「だってこうして誰かにぎゅってするの、すごく久しぶりだから……」

「ぎゅっていうかガッなんだけど?」


羽交い締めにしながらそんなしんみりした空気出されても困るのだけど?


「あはは…そうだよね…これは違うよね…ごめんね…?」


少し寂しそうに俺を解放するエリーゼ。


……はぁ……。


俺はエリーゼの方を向いて彼女を呼ぶ。


「エリーゼ」

「なぁに?」

「ほいっ」

「わっ!?」

「あっ!?」


俺が抱きつくと、エリーゼとフレデリカが驚いた声をあげた。


「ほれ。ぎゅってしたかったんでしょ?それぐらいなら、言ってくれればしてあげるから」

「……えへへ…ありがとうマーガレット…♪」

「あっ…あっ…!ずるいっ!(わたくし)も!私もっ!」

「くすっ。うん、おいで」

「やった!」


嬉しそうに頬擦(ほおず)りしてくるエリーゼ。

それを羨ましがるフレデリカも呼び、俺は2人のことをぎゅっとしながら話しかける。


「2人はどうだった?この街のこと」

「楽しかったよ!…貴族が嫌いだって話を聞いたときは、ちょっと悲しくなっちゃったけど……でもそのおかげ…なのかな?それでマーガレットと会えたんだから、そんなこと気にしてないよ!」

「えぇ。あなたは(わたくし)たちにいろいろ教えてくれたわ。お金のこととか、学校で教えてくれないようなことも教えてくれて、本当に助かったわ!それに…こうしてお友達になってくれた。この街のことはまだちょっと思うところはあるけれど、少なくともあなたのことは好きよ。あなたのおかげで、この街で楽しい思い出が作れたの!だから…」

「「ありがとう!マーガレット!」」

「…そっか……ふふ♪」


俺の知らないところで嫌がらせを受けてたりしないか心配してたけど、この様子なら大丈夫そうかな。

物凄く良い笑顔だもの。


「(それならよかった♪)」


本当によかった。

この街で嫌な思い出しか無いなんてことにならなくて。


俺は2人の頭を撫で始めながら、お別れの挨拶をする。


「…!…えへへ…あったか〜い……♪」

「…!…優しい手ね……♪」

「ありがとう♪…2人とも…元気でね?」

「「うん…♪」」

「怪我とかには気を付けてね?」

「「うん…♪」」

「怪しいことには首突っ込んじゃ駄目だよ?」

「「うん…♪」」


…………。


「…話聞いてる?」

「「うん…♪」」

「でも本当は?」

「「うん…♪」」

「聞いてないじゃん!」


お仕置きに、撫でていた手で髪をわしゃわしゃ〜!


「「きゃあ〜♪」」


それすらも楽しそうに笑うエリーゼとフレデリカ。


まぁ俺も本気で乱す気は無く、少し早めに撫でただけだからな。


「やれやれ……それでちゃんと向こうでもお話聞けるの?」

「聞けるよ〜!」

(わたくし)たちは優等生だもの!」

「だったら私の話も聞きなさ〜い!」

「「きゃあ〜♪」」


再びわしゃる俺と、喜ぶ2人。


まったく……こうしてると、はたから見れば普通の女の子だもんねぇ……この子たちも、マグも。


俺は彼女らのわしゃった部分を軽く整え、ポンポンと優しく叩いてから離れる。


2人は名残惜しそうだったが、さすがにこれ以上はと、素直に離れてくれた。


2人は最後に俺の手を握ると、別れの挨拶をしてくる。


「…それじゃあ…元気でね、マーガレット……」

「また会える…わよね……?」

「会えるよ。会おう、絶対」

「!……えぇ!もちろんよ!」

「えへへ…♪()()()!マーガレット!」

「またね。エリーゼ、フレデリカ!」


挨拶を交わし、準備万端な馬車へと乗り込む2人。


あっそうだ。


「ねぇ2人とも。手ぇ出して」

「?いいよ」

「こう…?」

「ありがと」


俺はバッグから有り余ってるアレを2つ取り出し、それぞれの手に乗せる。


「これあげる」

「?これって…お守り?」

「これ、《救壁の護符》よね?いいの?」


2人にあげたのは《救壁の護符》。

この間シエルの魔法を防いだあれだ。

俺も新しいのをまた身に着けている。


「うん。といっても、私も貰ったものだけどね。まだ8個あるから2人にお裾分け」

「わぁ〜!ありがとう!」

「なんでそんなに……?まぁでも、ありがとう」

「うん。使い方は分かる?」

「え〜と……」

(わたくし)は知ってるわ。魔力を流すのでしょう?」

「そうだよ。ただし、1回しか使えないから気を付けてね?」

「えぇ。それで、壁は目の前に出る…でしょ?」


これなら任せて大丈夫だな。


「そ。じゃあエリーゼにも教えてあげてね、フレデリカ」

「分かったわ」


間違っても、うっかりどこか関係ない場所で使っちゃった、なんてことの無いようにしてほしい。


とにかく、護符を渡した俺はダニエルさんに合図を送る。


「すみません、お待たせしました」

「もういいのか?」

「はい。大丈夫です」

「分かった。よし、出してくれ」

「はい」


それを確認したダニエルさんが、御者に出発を促す。


そうして出発した馬車の荷台から2人が手を振る。


「じゃあね!マーガレット!」

「元気でね!」

「うん、またね!エリーゼ!フレデリカ!またねぇ!」


そうして馬車が見えなくなるまでお互いに手を振り続けた。


これが、異世界(こちら)で出来た友だちとの初めての別れだった。




馬車が見えなくなった道をぼーっと見つめる俺。

そんな俺にハルキが話しかけてきた。


「…行っちゃったね」

「……はい」

「寂しい?」

「はい……」


テレビやマンガで、友だちが遠くに引っ越すことになったっていう話はよく聞いていた。


いざ自分の身に似たようなことが起こると、ここまで寂しいものなんだな……。


「…2人とも、いい子だったね」

「はい……」

「…ありがとう、マーガレット」

「…へっ……?」


突然のハルキからのお礼に戸惑う俺。


何かお礼を言われるようなことをした覚えは無いんだけど……?


「君のおかげで、貴族もみんながみんな悪いやつじゃないって知ることが出来た。だから、ありがとう」

「…そんなことですか……?」


十人十色。まったく同じ人間はいない。

働きアリの中に必ずサボり屋がいるように、腐った場所でも2人のような可憐な花が咲くことはある。


だから例え王都の貴族がクズ揃いでも、1人2人ぐらいまともなやつがいてもおかしくないと思うのだが……。


あまり釈然(しゃくぜん)としない俺に、ダニエルさんが訳を話してくれる。


「そんなこと、じゃねぇのさお嬢。お嬢は元から冒険者の知り合いが何人かいたのもあって、この街に馴染むのも早かったが…あの2人は違う。俺らの中で最も嫌われている王都の貴族…らしきやつらだ。だが、お嬢のおかげで貴族の中でもまともな奴はいるってのが分かった。それはスゲェことなんだぞ?」

「そう…なんですか……?」

「あぁそうさ。その上お嬢はあの2人に気に入られた。…これから忙しくなりそうだなぁおい。そうだろ?ハルキ」

「うん。僕たちとしても今回の件はかなりプラスになる。そういう損得的な意味も込めて《ありがとう》だよ」

「ふふ…商人らしいことで。そういうことならありがたく受け取りましょう」


わざとらしく丁寧なお辞儀をする俺と、それを見て笑うハルキとダニエルさん。


ひとしきり笑ったところで、俺は宿屋の店員であろう女性に聞く。


「あの…今回はあの2人を泊めてくださりありがとうございました」

「はははっ、気にしない気にしない!ウチにって言ったのはハルキさんだからね。あたしも貴族は嫌いだけど、あの子たちみたいな素直ないい子は大歓迎さ。もちろん、あんたもね。いつも頑張ってるそうじゃないか?」

「ふふふ、ありがとうございます。でもまだまだやることはありますからね。もっと頑張らないと!」

「無茶はしないようにね?あの子たちにあぁ言っといて、自分がやられてちゃ世話ないからねぇ!」

「へへっ…はい!」


よかった。

話ぶり的に、何か問題があったとかは無さそうだ。


「あぁそうだマーガレット。新聞のことは皆さんには聞いてくれた?」

「えっ?……あっ……」

(そういえば……)

「完全に忘れてた……」

「ははは、まぁ昨日もいろいろ大変だったもんね」


そうさなぁ……。

やばい新聞にひでぇ4階層のボスの話、極め付けはエリーゼとフレデリカ……。


ははは……よくもまぁ1日でここまでイベント起きるよなぁ…ホント……。


「こほん……新聞のことは今日聞いてみます」

「うん、お願い」


今度は忘れないようにメモしておこう……。

…………よし。


「書けた?」

「はい」

「それじゃあここはもうお開きで。ココさん。マーガレットのことお願いします」

「任せて」


ココさん、帰りまで送ってくれるのか。

ありがたい、帰り道が分からなかったんだ。


…そりゃ送るわな。


それはさておき、ココさんのおかけでエリーゼたちとキチンとお別れできた。


ココさんにもお世話になりっぱなしだよなぁ……。


(ココさんにも何かお礼をしたいなぁ……)

(そうですね……う〜ん…あっそうだ。ココさんと仲が良いララさんに聞いてみましょうよ!)

(おっ!ナイスアイデア!さっすがマグ!冴えてるねぇ〜!)

(ふふ〜ん♪)


おっ。

今日は謙遜しないのだな。


ドヤってるマグも可愛いぞ。


「準備はいい?」

「あっはい。お願いします」

「あ〜ちょい待ちお嬢」

「えっ?」


ココさんの問いに答え、いざ帰宅となったところでダニエルさんが待ったをかける。


「どうしましたか?」

「狐っ子に伝言頼めるか?たまにはウチにも顔を出せってな」

「あっ…あぁ〜……」


確かにユーリさん…隠密ギルドのカードもらってから顔を出してない気がする。


「そうですね、分かりました」


ユーリさんと話す口実も出来るし。


「おう、頼むわ。んじゃあな」

「はい、また。ハルキさんも」

「うん。またね」


ダニエルさんとハルキと言葉を交わした俺は、宿屋の店員さんにも声をかける。


「そちらも、ありがとうございました」

「あぁ、お仕事頑張りなよ。でも無理はしないように!」

「はい!もちろんですよ!それでは、ココさん。お願いします」

「わかった」


みんなと挨拶が済んだところでココさんにお願いし、俺は再び空の旅を満喫した。

前の投稿で言ってたパスワードは無事に解決しました。

ツ〇〇ターって便利だね。


まぁそんなことより、エリーゼとフレデリカは今後重要なファクターとして活躍させる予定です。

この子たちとモニカちゃんたち街の友だち組を早く絡ませたいなぁ……。


さて、次回は5/7(金)に更新する予定です。


お楽しみに!

ではでは

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