122.幼馴染とまったりお話…恋人と過激なお話
〔マグ〕
「んふふふふ~♪」
自己紹介も終え、みんなで横並びに座っておしゃべりを楽しんでいると、隣に座っているショコラが私の顔を見て急に楽しそうに笑い出した。
私はそんなショコラに話しかける。
「ん~?どうしたのショコラ?なんだかご機嫌だね?」
「だって今日のマグ、昔のマグとおんなじなんだもん!」
「えっ?」
昔って……そんなに時間は経ってないと思うけど……?
「だってマグ…急に遊んでくれなくなっちゃったし……この前は…その……いっぱい泣いちゃって、外に出ていったと思ったら、すごく大人っぽくなってて、ショコラの方が甘えちゃったし……」
「あぁ~……それは……」
この前のは、教会に行った時のことだよね……。
それはコウスケさんが対応してくれたからなんだけど……。
「だから…すごく怖くて……。あっでも、優しくぎゅってしてくれて、なでなでしてくれたのは嬉しかったし…すごく安心したから…嫌ってわけじゃないんだよ?」
「う、うん……」
…さすがコウスケさん……安心感を与える優しさの塊……!
「えっと…でも……マグが全然知らない人みたいで…やっぱりちょっと寂しくて……」
「ショコラ……」
…そうだ……。
久しぶりに会った友達が別人のように変わってたらそうなるに決まってる……。
…しかも本当に別人だったわけだし……。
まぁそれでも安心したって言ってるんだから、やっぱりコウスケさんはすごい……。
まぁそれはともかく……
「…ごめんね、ショコラ……急に遊ばなくなっちゃって……」
「うぅん……マグがショコラたちのことを嫌いになったわけじゃなさそうでよかった……」
「嫌いになんてならないよ」
「じゃあなんで遊んでくれなくなっちゃったの……?」
「…私に婚約者が出来たからだよ……」
「「「えっ!?」」」
「あれ?」
ショコラだけじゃなくて他のみんなも驚いちゃった……。
メリーちゃんも驚いてるなぁ……。
そんなに意外?
「マーガレットって貴族だったの……?」
フルールさんがそんなことを聞いてくる。
「は、はい……言ってませんでしたっけ……?」
「え、えぇ……」
「……(こくこく)」
(…あ~…そういや貴族って言ったこと…ナバロさんぐらいじゃないか……?)
あっれ~?そうだっけ……?
そういえば私もコウスケさん以外に言った覚えが無いかも……。
メイカさんたちは知ってるし、ロッサ村から焼け出されたことは冒険者さんの間ではそこそこ知れ渡ってる感じだったけど……。
それで1回ケンカになっちゃったし……。
だから冒険者と毎日関わる冒険者ギルドのスタッフにも知れ渡ってるのか、ララさんはそこには驚いていなかった。
「そう……う~ん…でも今更気にすることじゃないか……」
「えっ?」
「いえ、こっちの話よ。それより、婚約者がいるなんて……大丈夫なの?」
「えっと…何がですか……?」
「だって…ねぇ……?」
「うん……」
「……(じー)」
?
どうしたんだろう……?
何かを言いたそうだけど……。
(あれかな?婚約者いるのに俺と仲睦まじくて大丈夫なの?ってことじゃない?)
(あっなるほど)
「えっとですね……顔も知らない人ですし、村も無くなってしまってしまったので、多分もう無効になってると思いますから……」
「そ、そっか……それならまぁ……?」
「そうねぇ…いいんじゃない?私も王国には良い思い出無いし」
「……(こくこく)」
あぁ…やっぱりダメなんだ……。
自分の育った国なんだけど、ここまで信用が無いと、私もちょっとどうかなぁ…って気分になるなぁ……。
う~ん……まぁいっか。
その婚約者も、お父さんの反応的にあんまりよさそうじゃなかったし。
それに今の婚約者はコウスケさんですからね!
コウスケさん以外の人となんて結婚したくありません!
「そうなんだ……でも、なんで婚約者が出来たら遊べなくなるの?」
「それは…いろんなお稽古が増えたから……」
「お稽古?」
「うん……挨拶の仕方とか、淑女の歩き方とか……」
「えーっ!?そんなことまでするの!?」
「うん…他にも話し方とか、身だしなみの整え方とか…ピアノのレッスンも続いてたし……」
「うわぁ……そんなのショコラ、耐えられないよ……」
うん、きつかったよ。
…でもちょっとうろ覚えなんだよね……。
嫌だったことは覚えてるし、技術とかもしっかり身についてるんだけど……あんまり記憶が無い……。
…多分、無心でやってたからかな……。
じゃないと…我慢できそうになかったから……。
「マグ…」
「…あっ…うん、なに?」
「…ごめんね……」
「えっ……?」
あのときのことを思い出していた私がショコラに呼ばれて慌てて返事をすると、ショコラが突然謝ってきて戸惑う。
「そんな顔して……辛かったんだよね……?」
「そんな…顔……?」
「なんていうか……えっと……」
「……無表情」
「そうそう!」
む、無表情……?
泣きそうとか顔をしかめてるとかじゃなくて……?
「…嫌なこと思い出させてごめんね……?」
「そ、そんな!ショコラは悪くないよ!私がちゃんと言わなかったから…!」
「うぅん、違うよ!ショコラが変なことを聞かなければ…!」
「そんなことないよ!」
「あるよ!」
「2人とも、落ち着いて」
「あっ…ご、ごめんね……」
「う、うぅん…ショコラの方こそ、ごめん……」
どっちが悪いかでケンカになりかけていたところで、ララさんが止めに入ってくれた。
危なかった……少し熱くなっちゃってたみたい……。
「はい、じゃあここはどっちも悪いってことで、この話はおしまい。久しぶりのお話なんでしょ?だったらもっと楽しいお話をしようよ」
「「楽しいお話……」」
楽しいお話かぁ……。
う~ん……楽しいお話…楽しいお話……。
(…コウスケさ~ん……)
(え~…そうだなぁ……あ、そういえば……)
(なんですかっ!?)
(おぉぅ…そんながっつかなくても……)
(あぅ…だってぇ……)
本当に思いつかないんだもん……!
(あぁ落ち着け落ち着け……俺が思ったのは、ショコラ以外のマグの友達は今どうしてるのかな?ってこと)
(あぁ…そういえば……)
(そういえばってあーた……)
(うっ…い、いえ…覚えてはいたんですよ?ただぁそのぉ……ちょっと忘れてだけで……)
(…………)
あ、呆れられている……!気がする……!
(しょ、しょうがないじゃないですかっ!いろいろあったんですから!)
(それ言われちゃうと、そのいろいろに巻き込み巻き込まれな原因としては何とも言えなくなるなぁ……)
ふ、ふふん!そうでしょうそうでしょう!
(それに…ほら!あの~…コウスケさんも忘れっぽいですし!)
(おっと?言ったな?最近の俺の悩みをズバリ当てたな?よ~し分かった。それなら俺と勝負と行こうじゃないか)
(しょ、勝負……?)
いったい何の勝負を……?
(今からここでマグと俺とで約束を1つ交わす。それを俺がきちんと覚えてて実行したら俺の勝ち。忘れていたらマグの勝ち。どう?)
(ふむ…なるほど……記憶力勝負ですか……)
(そういうこと)
…普通に考えればかなりこっちが不利だよね……。
覚えやすいものや、日常で普段やっているようなことを約束すれば勝つんだから……。
(コウスケさん。先に何を約束するかを教えてください。じゃないとコウスケさんが有利すぎます)
(おっ…さすがに引っかからないか)
(ふふん、これぐらいは当然です♪)
コウスケさんとももうそこそこのお付き合いですからね♪
(そいじゃあ約束の内容を言うぞ?それは……今夜、《すっごく甘いものを口にする》、だ)
(すっごく甘いもの……?それはどのくらいの甘さですか……?)
(そうだなぁ……この前のモニカちゃんのクッキーよりも甘いもの…かな?)
(う~ん……)
確かにモニカちゃんのクッキーは美味しかったけど……
(あれはほんのりした甘さだから、それより上となると……)
(そうだね……う~んじゃあ……角砂糖5個分より甘いものでどう?)
(…それはすごく甘いですね……)
(せやろ?)
角砂糖5個分かぁ……。
この街ならそれぐらいは簡単に手に入るけど、そんなに入れるのをメイカさんやフルールさんが許してくれるとは思えないし……。
(まさか角砂糖を買ってきて部屋で食べるとか……)
(しないしない。さすがにそんなに一気に食べたら胸やけ起こすよ。それに、《角砂糖5個分の何か》だから、角砂糖は無し。それを入れた飲み物とかも除外。これでどう?)
…それは……そんなに甘いもの、他にあったかな……?
でもコウスケさんが勝算の無いことをするとは思えないし……。
(う~ん……)
(まだ悩むか……。そうだなぁ……じゃあ、勝負ってことで、何か賭けてみる?)
(賭け?…でも賭けれるものなんて……)
お金も服もアイテムも、全部コウスケさんが頑張って手に入れたものだし、私が何かあげれそうな物なんて……
(単純なものだよ。でも絶対喜ぶ…と思う……よ……?)
何故か急に自信を無くすコウスケさん。
…いったい何を賭けようとしたんだろう……?
(えっと……こほん。あ~…勝った方は…負けた方を…明日の夜好きにできる……ってのは……)
(やります)
(凄い食いつきだ……)
そんなの決まってるじゃないですか。
もうっ!自信なさげに言ったから何かと思えば……そんな勝っても負けても良いことありそうな勝負を受けないわけが無いじゃないですかっ!
……ハッ!まさか!?
(コウスケさんこれを狙ってましたね!?)
(俺が、マグが本気で嫌がりそうなことをするとお思いで?)
(好きっ!)
(最近マグのキャラブレブレだよね!?)
ふふふ……♡
最初からコウスケさんの手のひらの上だったんですねぇ……。
さすがですねぇ……♡
「…マグ……?」
「うへへへへ……♡」
「マグ?」
「うへへ……へ?」
「ど、どうしたの急に……?大丈夫……?」
「うえっ!?だ、大丈夫大丈夫!大丈夫だよっ!うんっ!」
「そ、そう……?」
あ、危なかった……!
(もうっ!コウスケさんが嬉しいこと言うから危なかったじゃないですかっ!)
(いや~…ちょっと我慢できなかったものでつい……)
(!~~~~~っ♡)
「ま、また!?ホントに大丈夫なのっ!?」
「だだだダイジョーブダイジョーブ!」
「ホントっ!?変な物とか食べてないっ!?」
「食べてない食べてない!ホントに大丈夫だから…!」
ダ、ダメだ……!
今コウスケさんと話し続けたらまずいことになる……!
心的には大喜びなんだけど、ショコラとの関係がダメになる!
ふぅ~……落ち着こう…落ち着いてぇ…深呼吸……。
……よ~し…落ち着いてきた……。
これ以上追及されないように話題を変えておこう……。
「え~っと……そうだ、ショコラ!他のみんなは元気?」
「う、うん…元気だよ」
「確か仕事を探してもらってるんだっけ?」
コウスケさんにあとから教えてもらった。
「うん。もう何人かお仕事をもらったよ」
「そっか。それならよかった」
どうやら生活に困って盗賊に…なんてことはなさそうだ。
「…ねぇ…マグ……」
「うん?」
「マグは……許しちゃうの……?その……えっと……」
許す……?はて……何かあったかな……?
「えっと……マグのお父さんとお母さんのせいだって言ってたってこと……」
「あぁ……」
そのことかぁ……。
許す気はないなぁ……。
でも、極限状態だと、何か心の支えが欲しくなるよね……。
……うん、それでなんで私たちの文句に繋がるのかは分かんないな……やっぱり許さないな、うん。
「許さないよ~」
「そ、そんなにのんびりと……」
「う~ん……そりゃあ私よりも数日遅れてこの街に来たってことだけでも、みんながすごく大変だったんだろうなって思うよ?でもだからって私たちの悪口を言うってことは、前から不満があったってことだから……」
「だから?」
「…この機会に私たちの…もしくは貴族の信用を下げようとしたのかなって……」
「?なんでそんなことするの?」
ショコラの疑問はよく分かる。
私もなんでか分からないから。
…でも…なんとなく頭に思い浮かぶ人がいるんだよね……。
「この街に来てから、王国のお話を聞くこともあるんだけど……全然良い話を聞かないんだよね……」
「えぇ……」
「……ねぇ、もしかしてさ……その文句言ってた人って、《ノーマ》さん?」
「う、うん…そうだけど……よく分かったね……?」
「あの人にいちゃもん付けられたことあるから……」
「えぇっ!?」
(ほう?)
ノーマさん……。
村に一つだけある雑貨屋さん、ヴァインおじさんの息子さんで、一度ロッサ村から王都に出稼ぎに出てたことがあったんだけど……。
昔は優しいお兄さんだったんだけど…出稼ぎから帰ってきたら、人が変わったように私やお父さんたちに冷たくなっちゃって……。
しかもそれを他の人には見られないようにしてたから、多分知ってる人はいないんだろうなぁ……。
あのときはなんで冷たく当たってくるのか分からなかったけど、もしかしたら王都で何かされたんじゃないかな……?
だから貴族の私たちに冷たく当たるようになったのかも……。
…辛いことがあったんだろうけど、私たちは関係ないよね?って思うのは……冷たい…かなぁ……?
「ノーマさん、優しい人なのに……なんで……」
「う~ん……それは分からないけど、ここでこの話をしたってことは秘密だよ?下手したらショコラも巻き込まれちゃうから……」
「でも…それじゃあマグが……!」
「私は別のところでお世話になってるから大丈夫だよ。でもショコラはまだ教会にいるんでしょ?」
ノーマさんがまだいるのかは分からないけど、もしまだ教会にいるのだとしたら、ショコラのこともいじめるかもしれない。
それはダメだ。
「それに…私には頼りになる人がいっぱいいるから。だから大丈夫」
「…ほんと……?」
「うん!というかむしろ…ノーマさんの方が危ないかも……」
「えっ……?」
「あぁ…マギーちゃんのファンっていっぱいいるから、マギーちゃんをいじめたらその人たちに逆にいじめられちゃうだろうねぇ……」
「えぇっ!?」
ララさんが補足してくれた通り、コウスケさんが日ごろ頑張ってくれているおかげで、マーガレットはみんなに親しまれている。
気さくに話しかけてくれるし、困っていると手伝ってくれるし、冒険のお話もいっぱいしてくれる。
世間話に花が咲いて、ララさんやリンゼさんに嗜められることもある。
だからそうかなぁ…って思ったんだけど……よかった…ララさんもそう思ってくれてて……。
自分で自分を人気者…なんて言いにくいよ……。
「でも、そっかぁ…それなら大丈夫だね。みんなマグを心配してたから……」
「そうなの?」
「そうだよ!特にパメラがずっとそわそわしてて……」
「あぁ…それは…ごめん……」
そうだね…あの子は心配性だから、元気だよ〜ってぐらいは伝えておいた方が良かったね……忘れてたよ……。
(パメラってどんな子なの?)
(パメラはショコラと同じく私の友達で、鳥人族の女の子なんです)
(鳥人?…ってことは、鳥の羽やら脚やらの特徴があるの?)
(はい、背中に羽があって、脚も鳥類の脚なのが特徴です。パメラはハトの鳥人なんですよ)
(鳩かぁ…穏やかな子なの?)
(はい。おっとりしてて、村で一番と言っていいほど優しい子ですよ)
(へぇ~)
くぅ~……
コウスケさんにパメラと鳥人族のことを話していると、隣からお腹の鳴る音が聞こえた。
見ると、ショコラが恥ずかしそうにお腹を押さえている。
お腹…すいちゃったんだね……。
えっと…時計は……?この部屋無いのかな?
いいや、懐中時計あるからそれで。
「えっと……あぁ…もうお昼だね」
「?マグ、それ時計?」
「うん、そうだよ」
「わぁ~!かっこいいね!誰かにもらったの?」
「うん、ハルキさんにもらったの」
コウスケさんがね。
あのときのコウスケさん、今のショコラみたいに目を輝かせててかわいかったなぁ……♡
…おっと、いけないいけない……。
まただらしない顔をするところだった……。
「ハルキさん…か……」
私がまた心を落ち着かせていると、ショコラは何かを考え始めた。
そして、私が何か言おうとする前にこちらを向いてこんな問いをしてきた。
「ねぇ…マグってさ……」
「うん……?」
「…ハルキさんのこと…好きなの……?」
「?良い人だとは思うよ?」
「あ、あれ……?」
私がありのままを答えると、困惑した声を出すショコラ。
なんでそんなこといきなり聞くんだろう?
「えっ?あれっ?違うの?」
「うん。お世話になってるし、優しい人だとも思うけど、恋とかじゃないよ」
「そ、そうなんだ……」
「それにハルキさんはもう結婚してるよ?」
「えっそうなの!?」
「うん」
「まだ若いのに……」
(…感想がおじいちゃんっぽいなぁ……)
(あ、あはは……ショコラのところはおじいさんおばあさんにショコラとそのご両親が一緒に暮らしていましたから……)
(なるほどね)
くるる~…
そんな話をしていると、今度はショコラとは反対の方からお腹の鳴る音がした。
「……お腹すいた」
「あぁごめんねメリーちゃん!ショコラもう帰るから……!」
「えっ!帰っちゃうの!?久しぶりに会えたんだしもうちょっと……せめてお昼ご飯ぐらい一緒に食べようよぉ!」
「あぅ…ショコラもそうだけどぉ……でもお金持ってないし……」
「それなら大丈夫。私が払ってあげるよ。ナバロさんには私からお話しておくから」
悩むショコラにララさんがそう言ってくれた。
次いでフルールさんたちに聞く。
「フルールさんたちはどうする?もしあれなら、ここで待ってても……」
「いえ、どうせだから一緒に行くわ」
「……♪」
「この子もみんなと離れたくないみたいだしね」
「くすっ…♪分かった。じゃあ行こ?この階層には屋台が並んでるエリアがあるの」
そういうことで、私たちはララさんの案内でお昼ご飯を食べに屋台エリアへと向かった。
主人公組の会話、我ながらバカップルだなって思う……。
楽しい。




