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フェイトの記憶 : 創造主の反響   作者: Yūyake
シーン2 - 私はダモクレスの剣だ
21/21

間幕 : 霧の中の子供。

フェイト

今朝、僕は書斎の掃除をしなければならなかった。

もう数日間、そこは散らかったままだった。

僕はほとんどの時間を、魔獣図鑑の作成に費やしていた。

そして今日、じいちゃんは本当に怒っていた。

「 フェイト!!!」

僕は両手で耳を塞いだ。

見ると、彼は扉の枠に立っていた。

その目は怒りで黒く染まっていた。

「俺が何と言った?!」

「 書斎を片付けろって……?」

「 それで――なんでまだ終わってないんだ?!」

僕は椅子から立ち上がり、本を一冊ずつ掴んだ。

「 他の腕は使わないのか?」

「 うん。必要もないのに使うのは好きじゃないから。」

最近、おばあちゃんが時々僕たちのところへ来るようになってから、彼女は僕に魔法を教えてくれていた。

僕にとっては二人目の先生みたいな存在だった……。

でも、もっと厳しくて――そして、あまり優しくない先生だった。

だから数ヶ月前から、僕は実はある魔法を使えるようになっていた。

それは、翼が繋がっている二本の腕を消すための隠蔽魔法。

その結果、僕には人間の腕だけが残る。

弱いけれど、「普通」の腕。

僕が隠していない身体の部分は、角と……。

「 うわっ!! 尻尾に気をつけろ。動かすたびに埃が舞ってるぞ。」

「 あ、ごめんなさい。」

僕はじいちゃんの方を向いた。

最近、彼はすっかり不機嫌になっていた。

ヘンリーさんは歳のせいだと言っていたけど……違う。

僕には分かっていた。

何かを気にしている。

だから本を片付けている途中、僕は手を止めた。

「 どうした?」

彼が尋ねた。

「 ううん。ただ……最近のじいちゃん、変だなって思っただけ。」

何もかも我慢できなくなってるみたい。

彼は手に持っていた本を床へ置いた。

そして微笑み、立ち上がると僕の頭へ手を置いた。

「 心配するな。」

これは七歳の子供が関わるような問題じゃない。

そう言って、彼は去っていった。

彼の顔は、言葉とは逆のことを語っていた。

僕がよく知っている笑顔。

守ると言いながら、本当は隠そうとしている笑顔。

彼は僕を手伝い終わっていないのに、書斎を出て行った。

僕は立ち上がり、彼が部屋を出ていく姿を見た。

なぜ?

どうしていつも、守るという理由で僕に何かを隠すの?

僕はもう、自分を守れるくらい大きいのに。

僕はリビングへ向かった。

彼は気分転換をするためなのか、外へ出ていった。

僕はテーブルを見た。

そこにはガラス製の花瓶が置かれていた。

おばあちゃんが持ってきたものだった。

僕はテーブルへ近づき、一枚の手紙を手に取った。

薄い紙の手紙。

村の管理者が書いたものだった。

僕はそれを開き、読み始めた。

*

**

「親愛なるラプラスへ。」

最近、霧の大地の環境は、もう村にとって住めるものではなくなってきている。

そこには一匹の獣が徘徊しており、生態系そのものを変化させている。

私たちに残された選択肢は二つ。

それを殺すか――この場所を去るかだ。

だが、おそらく君も私たちと同じで、去るつもりはないのだろう。

だから村全員で考えた。

あの獣を追跡し、殺すことを。

姿も分からない。

そして、命を賭けることになるかもしれない。

もちろん……君もその中に含まれている。

フェイトへ別れを告げる時間として、二日間を与える。

心配するな。

もし君に何かあったとしても、ヘンリーがいる。

彼の家族がフェイトを引き取ることになる。

もう一度言う。

こんな選択を君に押し付けることを、本当にすまないと思っている。

私も、自分の息子たちへ別れを告げた。

だが、愛するものを守るためには、他に方法がないのだ。」

*

**

私は手紙を静かに置いた。

じいちゃんは家へ戻ってきて、暖炉の前にいる僕を見つけた。

二ヶ月後には、冬が私たちの家へ訪れる。

僕には分かっていた。

もし彼がそこへ行けば、生き残る可能性よりも、帰ってこない可能性の方が高い。

「 フェイト、薪を運ぶのを手伝ってくれるか。」

「 うん、今行く。」

時間は天使のように過ぎていく。

彼の顔にはすでに皺が刻まれ、身体は弱っていた。

もし戦いに行けば、僕はもう彼に会えない。

僕は暖炉の前へ薪を置き、彼へ振り返った。

「 じいちゃん……本当に行かなきゃいけないの?」

彼は何も言わず、僕を見た。

「 手紙を読んだのか?」

「 うん。」

「 ああ……。」

彼はため息を吐いてから言った。

「 知っているか?」

お前の母親とお前を引き取った時、こんなにも多くのことを経験するなんて思っていなかった。

彼はそこで一度言葉を止め、台所へ向かった。

そして食事の準備を始めた。

「 でもな、お前たちと一緒に暮らすことで、生きることがどれだけ楽になるのかを知った。」

正直に言えば……お前に出会っていなかったら、俺はまだ生きていなかったと思う。

「 どういうこと?」

彼は手を止めて言った。

「 俺は……いや、違うな。」

きっと、俺はその前に自分で命を絶っていたと思う。

突然、彼は僕の方を振り向き、固まった。

僕はその場から動けず、Tシャツを握りしめていた。

そして泣いていた……。

「 じいちゃんに死んでほしくない。」

彼は微笑んだ。

そして僕へ近づき、しゃがみ込むと僕の頭へ手を置いた。

「 俺たちは生き物だ、フェイト。」

物語を終わらせる時が来るのは自然なことだ。

でも、自分がもう誰の役にも立てないと思った時……。

時には、早く終わらせてしまいたいと思う方が楽に感じることもある。

もし、いつかお前が俺と同じ場所まで来ることがあったら、考えるんだ。

僕は泣くのをやめ、彼を見た。

「 自分が誰の役に立っているのかを考えるんだ。」

僕は大きく距離を取った。

この年齢でも――こんなことを言われるのは普通じゃないと思った。

それでも、彼の瞳には悪意なんてなかった。

ただ、経験だけがあった。

彼は穏やかだった。

余計な考えもなく、とても澄んだ心をしていた。

世界の中での自分の居場所を理解した男。

そして、自分がいつ必要とされているのかを知っている男。

「 たぶん……分かった気がする。」

「 それでいい。」

夕食の後、じいちゃんは母さんを部屋へ連れて行った。

その後、僕は書斎へ向かった。

祖父はリビングへ移動した。

僕の目の前。

開いたままの母さんの部屋の扉の向こうで、彼女は僕を見ていた。

僕は本を置き、彼女の元へ向かった。

部屋へ入り、彼女の足へ腕を回した。

彼女は大きな努力をして、僕の頭へ手を置いた。

そしてゆっくり撫でてくれた。

「 お母さん……僕、何か悪いことした?」

「 ……」

「 もっと頑張らないといけないのかな……。」

「 ……」

いつものように、彼女は答えなかった。

僕は微笑み、彼女から離れた。

「 ありがとう。」

僕は離れて、部屋を出ようとした。

「 フェ……フェイト。」

僕は目を見開き、彼女へ振り返った。

彼女は温かい笑顔を見せていた。

僕は自分の感情を表現するのが、とても難しかった。

彼女が僕の名前を呼んだことが、今まであったのかすら分からなかった。

でも僕は笑顔を返し、自分の部屋へ戻った。

全員が眠りについた後、僕は起き上がった。

扉を開け、暗闇に包まれた廊下を見た。

そこを照らしているのは、月の光だけだった。

リビングへ行き、入口に置かれていたじいちゃんの剣を見た。

「 僕も……役に立たないと。」

僕は彼の剣を持ち、外へ出た。

夜は淡い青白い光を作り出していた。

霧の大地の霧によって、ぼんやりと滲んでいる。

私が石の通路へと向かうと、キオクタたちは私を見つめていた。

私はそのまま石造りの通路を進み、やがて目的の場所へ辿り着いた。

その先で……私は誰にも許可を取らずに家を出ていた。

そして、じいちゃんの剣を持って……なぜ?

じいちゃんに死んでほしくなかったからだ。

だから、私は一人でその獣を倒しに行かなければならなかった。

ルシアが見せてくれた夜空を眺めながら、私は左へ顔を向けた。

森との境界線は、霧の大地から始まっていた。

私はその森へ向かって歩き出した。

石の壁に沿って進み、二十分ほど歩いた頃、ついにその有名な森の入り口へ辿り着いた。

中を覗き込む。

そこを完全に覆っている霧以外には、何も見えるものはなかった。

私は心臓の鼓動を落ち着かせるために、息を吸い、ゆっくり吐いた。

「 ほら、フェイト。今は逃げ出す時じゃない。」

私は正面を見つめ、森の中へ入り始めた。

空気は冷たくなり、ほとんど湿っていた。

「つ一つの坂道、起伏、その全てを感じ取ることができた。」

たぶん二十分ほど経った頃、それは落ち着いた。

私は呼吸を整え、周囲を観察した。

二メートル。

それが私が見ることのできる距離だった。

それだけで、あらゆる動きが一気に危険なものになる。

自分がどこへ進んでいるのか分からなかった。

どこへ行けばいいのかも。

「 不思議だ……。」

正直に言えば、不快ではなかった……いや、むしろ心地よかった。

全てが静かだった。

全ての音、全ての響きが、まるで自分の一部であるかのようだった。

「 ああ……。」

そうだ。

私は、私が霧の大地から来たと言ったじいちゃんの言葉を理解した。

私は地面に座り、そのまま湿った草の上へ横になった。

ここでは、自分が自分の居場所にいるような感覚がした。

まるで繊維で作られた繭のような場所。

温度も、その周囲にある全てのものも、私の自然な領域の一部だった。

「 ……」

気づかないうちに、私の意識は揺らぎ、瞳孔は細くなっていった。

そして、まるで夢の中にいるかのように、私は眠りへ落ちた。

*

**

遥か、遥か昔。

四本の恐ろしい脚で大地を踏みしめることのできる獣たちがいた……。

巨大な翼によって空を切り裂き、巨大な顎によって岩を砕くことのできる存在。

その獣たちは、こう呼ばれていた。

ドラゴン。

ドラゴンと人間の女性の血を引く若者は、その身にドラゴンの本能を持ち合わせていなかった。

その欠落によって、彼は自身の全ての力を発展させることができずにいた。

しかし、ドラゴンは自分自身の本質を理解している。

どのような形であれ、彼らは自分と相反するものを支配することができる……。

「 なんだ、この不思議な感覚は?」

若者は走り出し、四本の手足を地面についた……。

彼の周囲からは、奇妙な濃い霧が立ち上っていた。

いや、二本の大きな腕に繋がった翼が、その姿を霧のように見せていたのだ。

しかし、もはや少年はそれを気にしていなかった。

彼は自分の自然な空間を楽しんでいた。

夢の中に溶け込むように、強烈な感覚の全て、聞こえてくる音の全てが少年の頭を混乱させていく。

そして彼は、別の獣と出会った。

それは、爬虫類の身体を持つ、まるで鶏のような生き物だった。

その獣はすぐに警戒態勢に入った。

目の前に存在する黒い塊に怯えていたのだ。

二メートル先すら見えないほど濃い霧の中で、赤い二つの瞳だけが浮かび上がっていた……。

突然。

黒い塊は、その鶏へ飛びかかった。

肉を引き裂く音が響き渡った。

血が周囲へ飛び散った。

そして、骨が砕ける音が聞こえた……。

少年は顔を上げた。

黒い鱗に覆われたその顎は、濃い赤色に染まっていた。

しかし、その時。

背後から枝が折れる音がして、彼は不意を突かれた。

彼はゆっくりと、その音の方へ顔を向けた。

背後。

動いた尾によって霧が晴れた場所の近く。

そこには、黒い髪を持つ若い男がいた。

彼の背中には、秋色の髪をした黒髪の若い女性が背負われていた。

不思議なことに、その少年はその獣を見ても、とても落ち着いていた。

口からこぼれた言葉は、ただ一つだけだった。

「 ドラゴンが、ここに?!」

黒いドラゴンは、赤い瞳を持つ少年の方へ振り向いた。

彼は顔を上げ、そして二人の視線が交わった。

これは、革命の時代の話。

出会う運命にあった二つの魂の邂逅の物語である。


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