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第41話『俺の口からは話すことは、できない』

お待たせしました。

第41話できましたので、宜しくお願い致します。


※2022年5月22日改稿しました。

 キス……それは、スズキ目スズキ亜目キス科に所属する魚類の総称である。


 キス……それは、相手の頬あるいは唇等に接触させる行為である。


 キス……それは、非リア充の俺には無縁の概念である。


 そう、俺には全く縁のないリア充イベントのはずなのだが、夢か幻か金髪の美少女のゴールドちゃんにキスしてほしい……と言われたのだ。


 こんな美少女とキスできるとか最高だが、ゴールドちゃんの言うキスとは本当にあのキスなのだろうか?


 さっきも説明したが、美少女とのキスは非リアの俺には無縁のはず。ゴールドちゃんとはそれなりに仲が良いが、キスするほどの仲ではない。


 ということは、そもそもキスの意味が違うのではないか? なんせこのネーミングセンスがイカれた世界だ。キスが全く別の意味になっていてもおかしくはない。


 じゃあキスしてとはどういうことなのだろう? 少し考察をしよう。


 アタシとキス……つまり、今日は魚類のキス料理作りたいから手伝って欲しい……という意味で言った可能性は――

いや、その割にはゴールドちゃんのテンションが低い。常にテンションがバグってるゴールドちゃんがあんな頼み方をするなんて不自然だ。じゃあただ単に落ち込んでるから……と思ったが、それも違う。なぜならゴールドちゃんの性格上、人に気を遣わせることは絶対にしない娘だ。よってこの説もありえない。


 では別の説として、アタシとキス……つまり、アタシ、“トキス病”にかかっちまった! と言っているという説はどうだ? え? そんな病気あるかだって? 知らん! 世界は広いんだしそんな病気があっても、おかしくない! ……いや無いか。誰だよ、こんな考察したやつ――――――俺しかいねえよ!


 ということは……やはりあのキスか……いや勘違いかもしれない。ここはゴールドちゃんに、どのキスかちゃんと聞くべきだ。最初からそうすれば良かったんだ。よし聞こう!


『キスって、接吻の方のキスで合ってる?』


『……?』


 おや? 首をかしげてらっしゃる、この反応は?


『セップンって何だ?』


 おおっと、これは想定外。接吻の意味を知らなかったか。別の言い方で聞こう。


『お互いの唇と唇を合わせることだよ』


『……!?』


 お、この反応は当たりか? 何やら驚いてる様子だ。


『クチビル……な、な、なんて強そうなモンスターなんだ!? そ、そんなヤバそうな奴等を会わせるなんて、ダストっち! 何考えてんだ!』


 まさかの唇の意味も知らないだと!? これまた予想外! というかどういう思考回路してたら、唇がモンスターだ、という発想になるんだよ! ゴールドちゃんってこんな思考回路ヤバい娘だっけ?


『違うよ! チューだよ! チュー!』


『チュー……あ、そうだ。アタシは……ダストっちとキスしたいんだ……だからキスして』


 さっきのテンションに戻った。やっぱり、本当にチューする方のキスだったか……。


 つまり、ゴールドちゃんは本当に俺とキスしたいということだ。


『ダストっち……』


 ゴールドちゃんは頬を染めながら、徐々に顔を近づけた。いつもはあんなに幼く見えるのに今はとても大人びて見える。


 って、顔近い! ゴールドちゃんの顔あっか!


『だすとっち? きすしよ?』


 やば、ゴールドちゃん、めちゃくちゃ可愛い……やっぱ美少女だわこの娘……って見とれてる場合じゃない! 


 このゴールドちゃんなにか変だ。しかも何か顔もめっちゃ赤いし、まるで酔っ払ってるみたいだ……ん? ()()()()()()……?


『ふふふふふ……はははははは! なんかめがまわってきらああああああ』


 突然くるくると回り出したゴールドちゃんは、予測不可能な行動を繰り返しては壁に激突したり、俺にぶつかったりと、本当に酔っ払いのような奇想天外な動きを披露する。


『これ、マジで酔っ払ってる感じなのか?』


『よっれねえぞ、らすろっりりりりりり……ふわあ……ねむいからねるううううう』


 ゴールドちゃんは酔い疲れたのか、部屋にすら入らず、そのまま廊下で大の字に寝始めた。


 寝顔可愛すぎる……ってそうじゃなくて!


『ゴールドちゃん! こんなところで寝てたら風邪引くよ!』


『うーん、むにゃむにゃ……』


 ダメだ、起きそうにない。しょうがないからゴールドちゃんを、部屋まで運ぶことにした。


 ……ゴールドちゃんの部屋どこだ?


 俺がゴールドちゃんの部屋を探そうとすると、タイミングが良いのか悪いのか、ちょうどブロンズちゃんが現れた。


『あ、お兄ちゃん……ゴールド姉、酔ってたよね?』

 

『うん、めっっっちゃ酔ってたよ、ゴールドちゃんの部屋どこ?』


『2階よ、案内するわ』


『ありがとう』


 俺はゴールドちゃんを背負い、ブロンズちゃんに案内されるがままに、ゴールドちゃんの部屋に向かった。


『……ここよ』


 ゴールドちゃんの部屋の前に着いた。ドアには分かりやすくゴールドの部屋と書かれている。シルバーちゃんの部屋のドアと大差ない、ごく普通のドアだ。


 さっきシルバーちゃんの部屋に行ってたが、隣の部屋がまさかのゴールドちゃんとブロンズちゃんの部屋だったなんて、気づかなかったな。


『……じゃあ入るわよ』


『今更だけど、勝手に入っていいの?』


『仕方ないわ』


『そうか』


 ブロンズちゃんは遠慮なくゴールドちゃんの部屋のドアを開けた。


『お邪魔します……ここが、ゴールドちゃんの部屋……』


 ごく普通のベッド、クローゼット、タンス、机があったりと、色がピンクじゃないところを除けば、シルバーちゃんの部屋と全く変わらない。感想と言われても反応に困るレベル。


『はい、早くベッドに寝かせてあげて』


『分かった』


 俺はブロンズちゃんに言われるがままに、ゴールドちゃんをベッドに寝かした。


『これでよし。それじゃ――』


 部屋を去ろうとしたその時、俺は何かに引っ張られる。


『ダストっち……』


『え、起きた? ……ってうわ!』


 ゴールドちゃんは、寝ながらすごい力で俺の腕を掴んできた。マジで背負い投げされるのかと思うくらいの勢いだった。


『むにゃむにゃ……行かないで……』


『ゴールドちゃん?』


 ゴールドちゃんは眠っているのにも関わらず、ゴールドちゃんの腕は決して俺の腕を放すことなく、がっちりホールドした。てか、ちょっと胸が当たってるし……まだ幼いけどそれなりに胸があるんだ――なんてことを考えているとブロンズちゃんが――


『お兄ちゃん?』


 俺の邪な心を読んだブロンズちゃんが、この変態がと言いたそうに俺を睨んでらっしゃる。これは後でおしおきされそうだ……。


『はぁ……もう、仕方ないわね』


『ブロンズちゃん?』


 やれやれ顔のブロンズちゃんは何の対抗心だか知らないが俺の空いているもう片方の腕をホールドしてきた。こっちも胸が当たってるんですが?


『もう、何考えてるの? お兄ちゃんの変態』


 これは確信犯だ、確信犯の笑みだ。目の前にいる小悪魔の美少女。そして無防備に寝ている美少女に腕をホールドされているという両腕に花状態だ。男の妄想がまさに具現化したような事が今まさに現実で起きている。ああ……神様ありがとう。


『お兄ちゃん……やっぱ変態だわ』


 またしても俺のキモい心を読んだブロンズちゃんは今度は引いたような目でこちらを見ている。まあ当然の反応だろうけど、やめてその目は俺に効く。色んな意味で。


『……』


『……』


 お互いに話題を切らしたのか気まずい沈黙が続く。だけどブロンズちゃんは、か弱い力で俺の腕に胸を当ててでも放さなかった。


 一方ゴールドちゃんは未だに意識がないまま、めっっちゃ強い力で俺の腕をホールド……いや締め付けている。気分は最高だけど、さすがに腕が痛くなってきた。


『そういえば、ゴールドちゃんって、何で酔っぱらってたんだ?』


『ああ、喉が渇いて水を飲もうとしたら、間違えてお酒飲んじゃったらしいわ』


『ああ、そうなんだ』


『ええ』


『……』


『ん……』


 また沈黙が続いてしまった……。さっきからブロンズちゃん、なんか変だな。どうしたんだろう? ちょっと聞いてみるか。


『ねえ、ブロンズちゃん?』


()()()()って言ったじゃない。全部お見通しよ』


『ああ、うん』


『ねえ、あえて聞くけど、お兄ちゃんはシルバー姉の部屋で何してたの?』


『……!』


 ブロンズちゃんはもう知ってるくせに俺にそう聞いてきた。内容が内容だからか、あくまで聞いてない体を装っているようだ。


『ごめん、俺の()()()は話すことはできない』


 俺の口からは……な。


『……そう、分かったわ』


 ブロンズちゃんはそう言うと、俺の腕を放しささっと部屋を出ようとした。


『ブロンズちゃん!』


『分かってるわよ、お兄ちゃんって真面目なのね』


 ブロンズちゃんは微笑みながらそう言った。可愛い。


『ふふ……そんな真面目くんに、いい情報教えてあげるわ』


『何?』


『そこのタンスの1番上の引き出し、何が入ってると思う?』


『えっと……服?』


『違うわ、この引き出しの中に入ってるのはね……ゴールド姉の、パ・ン・ツ』


『なん……だと……!?』


 とんでもない衝撃の事実を告げられたような反応をしてみた俺だが、流石にそこまでしようとは思わないよ……。


 もしここで一線越えてしまえば、マジでゴールドちゃん、一生口聞いてくれなくなるよ。それはさすがに嫌だな。


『お兄ちゃん心の中は変態のくせに、そこもやっぱり真面目なのね……でも、想像はしちゃうでしょ? ゴールド姉のパンツがその引き出しの中に入ってることを』


『……否定はできません』


『やっぱりお兄ちゃんは、へ・ん・た・い・ね』


『やかましい!』


 するとブロンズちゃんは少し頬を赤らめつつ、自分のスカートの裾を持ってこう言った。


『じゃあ、私のパンツ見る?』


『な……そ、その手には乗らないよ!』


『じゃあ、見たくないの?』


『そ、それは……』


『本当は、見たいんでしょう?』


『あ、あわわ』


『ふふ……お兄ちゃん慌てすぎ。じゃ、私は夕食の準備をしなきゃだから、ゴールド姉の事よろしくね』


『あ、ちょっと!』


 小悪魔ブロンズちゃんは俺をからかうだけからかってゴールドちゃんの部屋をあとにした。


 最初はさすがのブロンズちゃんも真面目(シリアス)になるのかと思いきや、最後はひたすら俺をからかいまくって楽しんでた小悪魔だった。くっ……からかい上手のブロンズちゃんめ……。



第41話を見て下さり、ありがとうございます。

次回は、明日か明後日に投稿する予定です。

宜しくお願い致します。

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