第10話 強くなっている
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『平民出身の転生執事、最強王女を育成する』という作品です。
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坂を下り、ベルガントの城門へ近づいていく。
「近くで見ると、もっと大きいですね」
「ですね」
城門の前には長い列ができていた。
荷物を満載した馬車。
旅装の商人。
武器を持った冒険者。
二頭立ての大きな荷馬車も何台か並んでいる。
順番を待ち、俺たちも門をくぐった。
「……すごいな」
思わず声が出る。
真っすぐ伸びた大通りの両側に店が並んでいた。
武器屋。
防具屋。
宿屋。
露店。
見たことのない道具を並べた店もある。
大通りを歩く人の数も、これまでの町とはまるで違った。
「まずはギルドへ行きましょうか」
「はい」
通りにいた人に場所を聞き、冒険者ギルドへ向かう。
しばらく歩くと、大きな建物が見えてきた。
「これですか?」
「たぶん……」
看板には冒険者ギルドの紋章がある。
中へ入った。
「うわ……」
広い。
受付だけでもいくつもある。
依頼掲示板も一つではなく、冒険者ランクごとに分けられていた。
中には武器を持った冒険者が何十人もいる。
「Eランクはあっちですね」
フェリシアと一緒に掲示板へ向かう。
【薬草採取】
【商隊護衛】
【ゴブリン討伐】
【グレイウルフ討伐】
【アイアンボア討伐】
「依頼の数が全然違いますね」
「選び放題ですね」
さらに隣を見る。
「ん?」
一枚の依頼書が目に入った。
【ベルガント西部ダンジョン】
【魔石採取】
【対象ランク:E以上】
「ダンジョン?」
「知らないんですか?」
「名前は知ってますけど、入ったことはないです」
「私もありません」
フェリシアが依頼書を見る。
「ベルガントの近くにはダンジョンがあるって聞いたことがあります。魔物を倒したり、魔石や素材を採ったりする冒険者が多いそうですよ」
「へえ……」
もう一度依頼書を見る。
「面白そうですね」
「アレンさん」
「はい?」
「今日は普通の依頼にしません?」
「まだ何も言ってませんけど」
「顔に出てます」
「…………」
どうやら分かりやすかったらしい。
そのとき。
ギルドの入口付近がざわついた。
「《銀狼》だ」
近くにいた冒険者の声が聞こえる。
「戻ってきたのか」
四人の男女がギルドへ入ってきた。
先頭を歩くのは、二十代後半くらいの男。
背中に長剣を背負っている。
その後ろには大きな盾を持った男、杖を持った女魔術師、白い外套を着た女性。
「あの人たちは?」
「《銀狼》です」
フェリシアが小声で答える。
「有名なんですか?」
「はい。リーダーのクロードさんはAランク冒険者ですよ」
「Aランク……」
俺たちはまだEランクだ。
四人が受付へ向かう。
周囲の冒険者たちが何度も彼らを見ていた。
先頭の男が大きな魔物の牙を受付へ置く。
何の魔物なのか、俺には分からない。
「アレンさん」
「はい?」
「見すぎです」
「あ、すみません」
俺はEランクの掲示板へ視線を戻した。
◇
「Eランクで受けられる討伐依頼で、難しいものはどれですか?」
受付嬢に尋ねる。
「難しいもの、ですか?」
「はい」
受付嬢が少し考え、掲示板から一枚の依頼書を取った。
「でしたら、こちらでしょうか」
【アイアンボア討伐】
「アイアンボア?」
「大型の猪型魔物です。皮膚が非常に硬く、突進も危険です。Eランク向けですが、その中でも難しい依頼ですね」
「一体ですか?」
「はい。ただ、Eランク一人での討伐はおすすめしていません」
受付嬢が俺とフェリシアを見る。
「お二人で受けられますか?」
フェリシアを見る。
「どうします?」
「行きましょう」
「ではお願いします」
依頼書を受け取った。
「アイアンボアか」
後ろから声がした。
振り返る。
さっき《銀狼》の先頭を歩いていた男だった。
「それを受けるのか?」
「はい」
男の視線が俺の冒険者証へ向く。
「Eランク?」
「そうです」
「そうか」
依頼書を見る。
「背中と肩は特に硬い。脚の内側か喉を狙った方がいい」
「ありがとうございます」
「クロード」
奥から仲間に呼ばれる。
「今行く」
クロードが俺を見る。
「気をつけろよ」
「はい」
それだけ言って仲間のところへ戻っていった。
「今の人がクロードさんです」
「Aランクの?」
「はい」
受付嬢からアイアンボアが出た場所を聞き、ギルドを出た。
◇
ベルガントを出る前に《会員》を開く。
【筋力:232】
【耐久:253】
【敏捷:303】
【魔力:18】
「……ん?」
もう一度見る。
【筋力:232】
「二百三十二?」
「どうしました?」
「能力が増えてます」
「え?」
「最後に見たとき、筋力は二百三十だったんです」
耐久も二百五十から二百五十三。
敏捷も三百から三百三。
「Pを使ったんじゃなくて?」
「使ってないです」
「旅の間に?」
「たぶん」
フェリシアが自分の身体を見る。
「私も確認してみます」
「お願いします」
フェリシアが自分の能力情報を開く。
すぐに目を見開いた。
「……増えてます」
表示を確認する。
【名前:フェリシア・ロート】
【筋力:9+23】
【耐久:11+25】
【敏捷:13+30】
【魔力:32+1】
「筋力、九になってます」
「前は八でしたよね?」
「はい。耐久は九から十一、敏捷は十一から十三です」
フェリシアの視線が一番下で止まる。
「魔力も……三十二」
「二つ増えてますね」
「《魔弾》をたくさん使ったからでしょうか?」
「そうかもしれません」
フェリシアが杖を握る。
「私自身も強くなってるんですね」
「そうですね」
「……嬉しいです」
「じゃあ今日も使えますね」
「使いすぎないようにします」
俺たちはアイアンボアが目撃された丘陵地へ向かった。
◇
ベルガントを出て一時間ほど。
街道を外れると、低い草と岩の多い土地が広がっていた。
「この辺らしいですね」
「気をつけましょう」
しばらく探す。
やがて、大きな岩の向こうから音が聞こえた。
ザッ。
ザッ。
「います」
フェリシアが杖を構える。
岩陰から巨大な猪が姿を現した。
「大きい……」
黒っぽい皮膚。
太い脚。
口元からは二本の牙が突き出している。
「ブオオオオッ!」
こちらを見つけた。
「来ます!」
地面を蹴る。
巨大な身体が一気に迫った。
横へ跳ぶ。
アイアンボアがすぐ横を通り過ぎる。
踏み込み、横から肩へ剣を振った。
ガキンッ!
「硬っ……!」
剣が弾かれる。
クロードが言っていた通りだった。
アイアンボアが方向を変える。
「アレンさん!」
今度はフェリシアへ向かう。
「大丈夫です!」
フェリシアが横へ走り、突進をかわした。
「《魔弾》!」
バシッ!
脚へ命中する。
「《魔弾》!」
二発目。
すぐに三発目が飛ぶ。
「《魔弾》!」
「……前より速い」
「そのまま同じ場所を!」
「はい!」
四発目。
五発目。
「ブオッ!」
アイアンボアの右脚が崩れた。
「今です!」
走る。
前脚の内側へ回り込み、そのまま首の下へ剣を入れた。
「はっ!」
今度は通る。
「ブオオオッ!」
アイアンボアが暴れた。
剣を抜き、もう一度振る。
深く斬り込んだ。
巨体が傾く。
ドンッ!
地面が揺れた。
動かない。
【150P獲得】
【保有:220P】
「倒せましたね」
フェリシアが近づいてくる。
「クロードさんの話を聞いておいてよかったです」
「本当に硬かったですね」
「肩に当てたとき、すごい音してました」
「剣が折れたかと思いました」
討伐証明となる牙を取る。
「戻りましょうか」
「はい」
◇
ベルガントへ戻ったのは午後だった。
冒険者ギルドへ入り、受付へ牙を出す。
「アイアンボアです」
「もう戻られたんですか?」
「はい」
受付嬢が牙を確認する。
「確かにアイアンボアですね。討伐を確認しました」
【依頼達成を確認しました】
【100P獲得】
【累計獲得P:1,930P】
【保有:320P】
「三百二十か」
「倒せたか」
声をかけられた。
少し離れた席にクロードがいる。
他の《銀狼》の三人も一緒だった。
「はい」
「どうだった?」
「教えてもらった通り、正面からは剣がほとんど通りませんでした。脚を崩して、喉を狙いました」
「そうか」
クロードの視線がフェリシアへ向く。
「二人で?」
「はい」
クロードが俺とフェリシアを順番に見る。
「……そうか」
さっきより少しだけ長く、俺たちを見ていた。
そのまま仲間との話へ戻る。
俺たちも受付を離れた。
途中、依頼掲示板の前で足が止まる。
【ベルガント西部ダンジョン】
【魔石採取】
「アレンさん」
「はい?」
「次はあれが気になってますよね?」
フェリシアがダンジョンの依頼書を指差した。
「……分かります?」
「もう分かります」
笑われた。
◇
その夜。
宿の部屋で《会員》を開く。
【保有:320P】
「五回使えるな」
筋力を二回。
耐久を二回。
敏捷を一回。
【筋力強化(中)を2回購入しました】
【筋力:232 → 292】
【耐久強化(中)を2回購入しました】
【耐久:253 → 313】
【敏捷強化(中)を購入しました】
【敏捷:303 → 333】
【250Pを使用しました】
【保有:70P】
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頭に浮かんだのは、昼間見た依頼書だった。
【ベルガント西部ダンジョン】
明日は、あそこへ行ってみよう。
累計獲得P=1,930P
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