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エルダニア大戦記  作者: 志摩 伊純
第0章:小男爵家五男と二人の幼馴染

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第7話 黒い棘


 ヴェルカに吹く風は生ぬるい。


 港都ルミナより南方に位置する都市であり、海からの湿った空気が直接、流れ込んでくる地形でもある。


 この生ぬるさの理由が地理的なものだけなのか、僕の心がそう感じさせるのか、今はまだわからなかった。



 この日も僕はヴェルカ内の見回りに出ていた。


 ガレス、ブルーノも同行し、気になるところがないか鋭い視線を向けている。


「最近、水路裏や倉庫街での荷が消えるという話をよく耳にするよね」


 ヴェルカ着任直後から、そのような話はぽつぽつと耳にしてはいたが、ここ最近は特によく出る話題だ。


「ああ、表立っての話ではないが、困っている者は多そうだ」


 ガレスが辻角に止めてある荷車を見つめ、ため息をついている。


 本格的に調査を始めない衛兵に思うところがあるのだろう。


「怪しいやつを取っ捕まえて、片っ端から殴ればはやくねえか?」


 ブルーノはブルーノだ。


「それはだめ、かなぁ」


 ブルーノも本気では言ってないと思う。そうだよね?


「まだるっこしいなぁ」


 特にイライラしている様子ではないが、辟易はしている感じのブルーノだ。


「とりあえず、怪しい人がいても殴らずに聞き込みね」


「あいよー」


 そんな会話を続けていると、話題にしていた倉庫街が近づいてくる。


「ここは、別班が調査している予定のはずだが……」


 ガレスの視線が厳しい。


「うん、念のため僕たちも行ってみよう。 何かあれば支援できるかもしれないしね」


 二人は思うところありそうな顔をしているが、特に否定することもなく、ついてきてくれた。



「くそ、また見回りしていないではないか!」


 声は抑えつつも、怒気は抑えきれていないガレス。


 倉庫街の見回りをしつつ、手が空いてそうな人々に周辺の状況などを聞き込みしてみたところ、荷消えの話も出てきてはいたが、衛兵の見回りなんて暫くぶりだ、との声も多く聞かれた。


 確かに、歩いていて、珍しいものを見るような視線がやけに刺さるとは思っていたけれど……。


「うん、いったん今それは横に置いて、見回りを継続しよう」


 ヴェルカの衛兵の緩さをここでボヤいても何が変わるわけでもない。


 今は僕たちでできることをやる、それくらいしか思い浮かばなかった。


「それにしてもよぉ。 荷がこんだけ消えてるのに、街全体ではあんまり話題になってないのが気になるよなぁ」


 そう、そうなのだ。


 被害にあった荷主や関係者は、聞き込みをすれば、恐る恐る語ってはくれるのだが、能動的に通報して、ということはあまり聞かない。


 たまに外部の商人の荷が消えての通報などはあるのだけれど。


「いったん詰所に戻って、荷消えについての話を聞いてみようか」


 まともな仕事をしていない感じはあるけれど、詰所の衛兵たちはずっとこの街で活動しているのだ。何か知っていることがあるかもしれない。


「……期待はせずに、いったん聞くだけ聞いてみるか」


 ガレスは鋭い視線のまま頷いた。



 詰所に戻ると、昼飯時ということもあり、思っていた以上に人が多かった。


 僕を見た同僚の衛兵は、最初はニヤニヤしていたのだが、続いて入ってくるブルーノを見て、視線を逸らす。


「おう、そういえば今昼飯どきかよぉ。 どおりで腹が減ってると思ったぜ」


 ブルーノは、視線など気にする様子もなく、お腹をさすっている。


 というか、ブルーノは、いつでもお腹空いてる印象だけれど。


 続いてガレスも入ってくるが、ブルーノのおかげか特につっかかられることはない。


「あの、ちょっと倉庫街などの荷消えの件で、話を聞きたいのだけど」


 僕は、一息つくこともなく、早々に話題について触れた。



 結果、まともな回答は得られなかった。


 ある衛兵は言う。


「荷が消える? 南潟じゃ珍しくもねえよ」


 別の衛兵は……。


「水路裏の荷なら、どうせ荷主もまともじゃねえ」


 最後に聞いた衛兵に至っては……。


「揉め事をいちいち拾うな」


 誰に聞いても、荷消え自体は認識しているようではあるが、まともに取り扱う気はなさそうだ。


 期待こそしてはいなかったが、ここまでだとは思っていなかった。


 二人を連れて、詰所を出る。


「どうしようもねえなぁ。 殴ってみるか?」


 ブルーノが頭を掻きながらまんざらでもないという顔で僕を見る。


「だめだ、俺も我慢しているんだ、揉め事を増やすな」


 僕が何かを言う前にガレスが溜息混じりにそう告げた。


「うん、いったん振り出し気味だけど、また足で頑張ろう」


 ちょっと気落ちはしたけれど、いったん昼飯を食べて改めて見回りを、と思っていたら詰所からエルヴィンと、お調子者のトマが一緒に出てきた。


 エルヴィンは、少し思案した後、僕たちに一言告げた。


「昼にいくんだろ? 俺たちも一緒に行かせてくれ」



 詰所から少し離れた繁華街の一角にある定食屋で、僕、ガレス、ブルーノと、エルヴィン、トマが大きめの卓に座り注文した料理が届くのを待っていた。


「エルヴィンが昼食に声をかけてくれるなんて珍しいね」


 僕は、先に届いていた水をちびちび舐めながらエルヴィンを見つめる。


「ああ」


 相変わらず、エルヴィンは寡黙だ。


「あー、なんで俺までって感じですけど!」


 エルヴィンの横に座っているトマがちょっとおどけたように、僕に顔を向けた。


「トマとは……ちゃんと話すのは初めてかも?」


 トマは衛兵ではない。


 衛兵隊に雇われている荷運び人足の一人で、南潟詰所に出入りしている、ちょっとお調子者の若者だ。


「そっすね! アズールさんたちは、少し浮いてますもんねえ。 詰所で話しかけると、いろいろ面倒に巻き込まれそうで!」


 かなり明け透けに言うのが、逆に悪い人ではなさそうって印象だ。


 そんなことを話していると、エルヴィンが卓を指で一度たたく。とん、と。


「荷消えの件。 トマを連れていけ」


 なんでもない、という風な口調で僕を見つめるエルヴィン。


「えー! 俺、午後も忙しいんですけどー!」


 それを聞いたトマは”とんでもない!”といった表情でエルヴィンへ抗議する。


「どうせ、サボっているではないか」


 エルヴィンの指摘が刺さる。


「ぐ、ぬぬ……」


 ”ぐぬぬ”って言う人をはじめて見た。


「そうは言いますけど、俺は何も知りませんよ!」


 嫌そうな顔をしながら、こちらを向いたトマ。


「ああ、事件の詳細は別だ。 お前は荷運びであのあたりの道に詳しい」


 あー、なるほど。まだヴェルカ初心者な僕たちの案内役って感じで同行を勧めているのか。


「荷が消えた現場の情報くらいは、耳に入れているのだろう?」


 エルヴィンが畳みかけるように続ける。


「そこを案内してやれ」


 トマは目を閉じて、うんうん、考えている。


「詳細は知りませんよ! あくまで同業者から聞いた荷消えの場所だけです」


 目を開いたトマが、むん、といった感じで頷きつつ承諾する。


「あ、うん、助かるよ。 都度、聞き込みして場所を確認していたから」


 ガレスも黙ったまま頷く。


 ブルーノは天井を見ている。たぶん、早く定食が来ないかと思っている顔だ。僕にはわかる。


「エルヴィンもありがとう。 でも、どうして?」


 僕はどうしても気になった、それを聞かずにはいられなかった。


「何、俺もこのままで良いとは思っていない。 それだけだ」


 なるほど。もしかしたらエルヴィンはエルヴィンで裏で何か動いているのかもしれない。


 そんなときに、僕たちも動き出したから手を増やす意味でトマを回してくれたのかも。


「うん、このあと回ってみるよ」


 そうこうしていると、定食がやってきた。


「おっしゃ! やっと来たぜ!!」


 ずっと黙っていたブルーノが”待ってましたー!”とばかりに目を輝かせる。


 ガレスは、そんなブルーノを見て、ため息を吐きつつ一言。


「エルヴィン、この借りはいずれ」


 受けるエルヴィンは、表情は変えず、小さく頷く。


 横のトマは「俺にはー!」って騒いでいた。



 結局、トマの昼食代をこちらで負担し、飯処を出て、最初の現場に案内してもらった。


 倉庫街の横道を抜けた先にある一軒の倉庫だ。


「ちょっと前に、ここの荷が消えたって話だ」


 トマが現場を見渡しながら僕たちに伝えてくる。


 少し確認しただけの感じだと、特に普通の倉庫で、施錠もしっかりしたものに見えるし、ちゃんと戸締りされていれば、そう簡単に持ち出せるような倉庫ではない。


「ここの荷はなんだったんだろう?」


 僕は率直な疑問を口にした。


「あー、何て言ってたかなあ……。 食材だったような記憶だけど」


 食材か……。


「となると、物にもよるけど、結構な重さの可能性もあるよね」


 小麦や豆などは一粒は軽いものだけど、袋に詰めたり、それをさらに木箱に詰め込んだりすると、大変な重量になる。


「ああ、そうだな」


 ガレスは路面を確認している。


「ここは、頻繁に荷の積み下ろしがある場所なのか?」


 何か気になるところを見つけたのかガレスが聞いてくる。


「ん-、この倉庫は一時保管とかではなくて、ちゃんと必要な時まで預けておくところだって聞いたような……」


 なるほど、それじゃ、必要な時には利用するけど、普段はあまり誰も近寄らないのかもしれない。


「そうか……」


 ガレスは何かを考えこんでいる。


 しばらく、倉庫周りをいろいろ確認してみたが、戸口の脇に、炭でこすったような黒い傷があったくらいで、特に何か異常を見つけることはできず、続いて、次の現場へ向かった。


 次の現場は、先ほどの倉庫から少し離れた、貧民区寄りの水路沿いにある開けた野原だった。


「ここは?」


 背の低い雑草が覆い茂った野原は、青臭く、でも、不快ではない香りがした。


「あー、ここは荷車の一時停止場に使われてて、止めてた荷車から消えたってきいたよ」


 なるほど。


 確かに野原の奥に、二台ほど、使われなくなってかなり久しい雰囲気の朽ちかけてる荷車が見える。あれは事件とは無関係なただ放置されたものだろうけれど。


「水路が近いな……」


 ガレスは水路を気にして、そちらの方へ歩いて行った。


「今は、荷車が止まってないんだね」


 見た感じ、朽ちかけた荷車以外は広々として、他の荷車は見当たらない。


「ああ、ここは夜間が基本かなぁ。 たまに日中もあるみたいだけど」


 トマは雑草にとまったテントウムシをつつきながら答えた。


 ブルーノは、まったく興味がないようではあるのだが、野原にずかずかと入り込み、しゃがみこんで何かを見ている。


「アズール、ここよぉ、なんか人が揉めたのか、重いものでも担いだのか、草が乱れてるぜ」


 ブルーノが何か気づいたようで、僕は駆け寄り同じ部分を確認する。


「あ、ほんとだね。 ここから水路の方へ続いている?」


 明らかに車輪跡ではない、雑草の乱れ方だ。


「水路には、小舟が寄せられるように細工がされていたぞ」


 戻ってきたガレスが、開口一番で告げる。


 ガレスの案内で、小舟寄せの細工を確認してみる。


「あ、本当だね。 巧妙にできてるから、言われないと気づかなかったかも」


 さらに良く見ると、水路脇の杭に、黒く擦れたような跡が残っていた。


 何かの印にも見えたが、僕にはまだ、それが何なのか分からなかった。


 そのあと、またブルーノの位置まで戻る。


 消えた荷は、ここから担いで、小舟に載せた?


「こんなん、ちぃっと見れば俺でも気づくくらいだぜ?」


 そう、そこだ。


 明らかに怪しい痕跡がある。あるのに誰も注視してない。


 いや、あえて見ないふりをしている?


「うん、でも、まだいったん決めつけないでおこう」


 あらかた野原の確認を終え、次の現場へ足を向けた。



 あれから、二カ所ほど現場を見て回った。


 野原を超えた先にある倉庫街の端の小倉では、荷箱が三つ消えたとかで、近くにいた作業員に聞き取りをした。


 消えた荷には黒い棘の焼き印がしてあったとか、南の旧道でも荷が消えたとか、いくつか新しい情報が手に入った。


「黒い棘……」


 思い当たるものは何もないけれど、何かを表しているような気がしてならない。


「トマは、黒い棘の話で、何か知ってることはない?」


 ここまで付き合ってくれたトマなら何か知っているかも?と投げかけてみる。


「え? あー……知らないかなぁ」


 歯切れが悪い。


 トマが直接関わっている、とは思わないが何かを知っているのかもしれない。


「そういえば、最初の倉庫や水路の小舟寄せにも、似たような黒い印があったな」


 ガレスが思案するように目をつぶる。


「んぁ? んじゃその黒い棘に関わるやつらを叩けばいいってことか?」


 しゃがんでいたブルーノはやっと自分の出番か、と顔をあげる。


「何か関係ありそうではあるけど、出番はまだだよ」


 ブルーノは「なんだよー!」って言いながら立ち上がり、僕に身を寄せて小さくささやく。


「後ろの大きい木箱の裏から、覗いてるやつがいるぜ」


 僕はびっくりしつつ、態度には出さないように必死に自分を抑え込んだ。


 ガレスも僕を見つめて、頷いている。


 僕は、いいよ、という意味を込めて、小さく頷く。


 その瞬間、ガレスが矢のように走り出して、木箱の裏にいた男へ向かっていく。


 ブルーノは僕を守るかのように近くにいてくれている。


「え? え? 何?」


 トマは突然の出来事にびっくりしてきょろきょろしている。


 覗いていた怪しい者は、ガレスが向かうや否や、猛然と反対側へ走り出して、角を曲がり見えなくなった。


 追いかけているガレスも角を曲がり消えていった。


 しばらく、待っているとガレスが一人で戻ってきて、首を振る。


「足の速いやつで、追いつくどころか離されて見失った、すまん」


 申し訳なさそうに語る。


「いや、たぶん、そういう担当だとすれば足が速いのは当然だろうし、仕方ないよ」


 ガレスも足は遅いことはないが、特別速い、ということもない。


「んだよぉ、せっかく譲ったのによぉ」


 ブルーノは不満げだ。


「でも、ブルーノの方が足遅いから、同じだったかも」


「アズール! ひでえよ」


 ブルーノは自覚はあるのか、口から出た不満とは違い少し笑っている。


 トマは、ずっとそわそわしているが、おそらく彼は直接的には関係ないんじゃないかと思っている。


 むしろ、協力してしまって報復を恐れているような態度に見える。


 僕の勘だけど。


「これは、たぶん、裏で誰かがまとめて動かしているね……」


 頷く、ガレスとブルーノ。


「よし、いったん詰所に戻ろう」



 詰所に戻るころには日が傾き、夕暮れ時となっていた。


 詰所にはユルゲン所長が卓に足を投げ出して天井を見つめている。


 他の衛兵はまだ戻っていないのか、もう帰ったのか所長しかいない。


「アズール、以下二名、戻りました」


 所長は、こちらをちらりと見てまた天井に目を戻す。


「おう、おつかれ」


 トマは詰所まで戻ると「おつかれさまでしたー!」と、逃げるように裏口へ向かっていって、今はガレスとブルーノを連れているだけだ。


「はい、荷消えについて、調査してきました」


 所長の眉がぴくりと動く。


「へぇ、何か掴めたかい?」


 目線だけこちらに向けて問いかけてくる。


「黒い棘」


 僕はカマをかけるようにその一言を告げる。


「黒い棘?」


 所長は、訝しむように問い返してきた。


 知らないのか、知っていてとぼけているのか……僕にはわからない。


「はい、荷が消えた場所に、黒い棘の印などが付けられていました」


 所長は、卓から足を下ろし、身体ごとこちらに向けて見つめてくる。


「それがどうした」


 だん!っと後ろから音がして、振り返ると、飛び掛かりそうになるガレスをブルーノが肩を掴んで止めていた。


「盗みなんざ毎日ある」


 所長はガレスを気にする様子もなく続ける。


「大事にするな。商人から苦情が来る」


 そう告げると、立ち上がり、手をひらひらさせながら奥へ消えていった。


 商人から苦情? 荷を取られた側から?


「何故とめる!!」


 その声に振り返ると、ガレスがブルーノに詰め寄っていた。


「落ち着けって、それはお前の役目じゃねえだろうがよぉ?」


 ブルーノが諭すように告げる。


「その役は俺のもんだ。 そうだろ?」


 ガレスがはっとしたように我に返り、僕とブルーノへ視線を回す。


「……そうだな、熱くなった。 すまん」


 ブルーノはニッと笑う。


「良いってことよ。 お前が行かなきゃ、たぶん俺が行ってたしな!」


 少し空気が優しくなったころ、入り口からエルヴィンが入ってきた。


「おかえり、エルヴィン」


 僕はできるだけ空気を戻そうと、明るくエルヴィンへ挨拶をする。


「ああ、戻った」


 エルヴィンは、外套を脱ぎ、椅子へ掛けて、こちらを見つめてきた。


「黒い棘」


 僕はエルヴィンが求めているであろう、それを告げる。


 エルヴィンの口の端がほんの少しだけ上がる。


「掴んだか」


 きっとエルヴィンも黒い棘までは掴めていたはずだ。


 だが、一人でできることには限りがある。


 そして、僕たちが来た。今日、情報を得た。


 エルヴィンは立ち上がり、僕たちを見る。


「簡単な仕事ではない」


 簡潔すぎる一言に、理解が追い付かない。きっと大きな何かが蠢いているということに対しての言葉だろう。


「うん、でも、このままにはしておけない」


 ガレスもエルヴィンも頷く。


 ブルーノは窓の外を見ている。


「エルヴィン、この件に協力して欲しい」


 この四人ならもう一歩前に進めるかもしれない。


「ああ、こちらこそだ」


 エルヴィンが力強く頷いた。



 事件が解決したわけではない。


 大きく進んだわけでもない。


 まだ、”黒い棘”という、この件に関わっていると思われる印の情報を得ただけだ。


 この件に関わろうとしない、所長。


 黒い棘に怯えたような反応を見せたトマ。


 おそらく、想像しているより大きな存在が関わっているのかもしれない。


 でも、知ってしまったからには、見なかったことにはできなかった。


 危なくなれば、ガレスとブルーノを止めて逃げる選択も取る。


 だけど、やれるところまではやりたい。


 まだ何者でもない僕が、それでも一歩だけ踏み出してしまった日だった。


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