第41章:夢を邪魔するもの
翌日、しっちゃんは一人で宝塚病院に向かっていた。
シュートをどう説得しようか考えながら。
病室に入ると今日、お母さんはいなかった。
シュートがポツンと寂しそうに窓の外を眺めていた。
しっちゃんが入ってきたのに気付き、
「しっちゃん 心配かけてすまない」
「次回の試合に向けて、イメージトレーニングとメンバーを
考えていた」
「しっちゃん 紙と鉛筆を貸してくれ」
シュートは先発メンバーとポジションを書き出し始めた。
しっちゃんは何も言わずに、シュートを見つめていた。
「今回の試合が俺の夢への試金石になるから、俺はフルタイムで出場する」
「あと、しっちゃんはリベロでなく中盤に入ってくれ。
長谷川に好き放題中盤でボールを持たれるのはまずからな。。。。」
シュートが病室で考えていたことを熱を込めてしっちゃんに
話だした。
しっちゃんは一通り説明を聞きいた後、シュートの目を見ながら
真剣な表情で語りかけた。
「ひとつを除いて、シュートのメンバーと作戦で進めていいと思う」
「一つはどこがだ?」
「シュートが試合に出ること」
しっちゃんが淡々と伝えた。
「俺の体調か。こんな病院すぐにでも退院してやる。
俺がいないと宝梅に勝機はないぞ」
「それはやってみないとわからない」
「僕を含めたチームメート、顧問、シュートのお母さん・・
みんなシュートの体調が良くなるまで、試合に出ないことを望んでいる」
と言いながら、カバンから全員のメッセージが入ったボールをシュートに
手渡した。
「シュートが試合に出ないことを望むのはみんなの意思でもある。
体調をしっかり見極めてから復帰してくれ。頼む」
シュートは病室の床を見つめながら
「しっちゃんは俺の夢を潰すつもりか?全国大会で優勝
して、プロサッカー選手になることを。二人で目指したよな」
「まだ高校生があるだろう。焦るな」
シュートはきつい目でしっちゃんを見ながら言った。
「俺の夢を邪魔するような奴の見舞いは断る。
出てってくれ、二度とくるな」
「わかった」
しっちゃんは病室を出て行こうとした。
「これも持っていけ」
シュートはメッセージ入りのボールを背中めがけて投げつけた。
しっちゃんは背中に当たったボールを無視して病室を出た。
病室の外にはシュートのお母さんが佇んでいた。
「二人きりの方がいいと思いここでいました。
ありがとうございます。シュートを試合に出さないようにしていただいて」
「少し興奮していると思いますので様子を見てあげてください」
頭を下げて病院を出て学校に向かった。
「美樹。朝ごはんは食べないの?」
母親の声に起こされ、ミッチは瞼の腫れがないか、鏡に映る自分の
顔を確かめていた。
昨日の晩は考え事で眠れずに、眠りについたのは朝方だった。
「今日は朝抜いていく」とミッチは答え、母親と顔を合わせないように
玄関を出て行った。
少し遠回りになるが、宝塚病院に行ってから学校に行くつもりであった。
途中の逆瀬川のバス停で、しっちゃんを見つけた。
「おはよう 今日は少し遅いね?」
「シュートの見舞いとサッカーのことについて話に行っていた」
ミッチは視線で先を促した。
「試合には出さないと伝えると、もう二度と顔を見せるなって言われた」
「そうだったの。今からシュートのところへ行こうと思っているの」
ミッチはしっちゃんと別れ、宝塚病院へ足を向けた。
シュートの病室のドアを静かにノックしゆっくりっと入っていった。
「ミッチか。わざわざ学校に行く前に来てくれたんだなぁ。
ありがとう」
「うん。昨日はあまり話せなかったので。今日は話しても
大丈夫?」
「さっき、しっちゃんが次の試合には出さないと言いに来た。
俺の夢を邪魔するなって追い返した」
「そうなの。シュートのサッカーは私の宝塚の夢同じだもんね」
「そうだろう。ミッチの宝塚の夢を諦めろって言われたら。。。。
辛さはわかるだろう」
「そうだね」ミッチは目を伏せてうずいた。
「明日、レッスンの帰りにシュートの好物のケーキを
持ってきてあげる。シュプールのショートケーキ」
ミッチはそう言い残し学校へと向かった。
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