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第30章:転換点

県大会を前に、

サッカー部は大きな転換点を迎えていた。

市内大会を勝ち抜き、阪神大会も突破したことで、

3年生の引退は延びた。


シュートは チーム編成を自由に変えられる

立場 になった。


しかし、最初に頭を悩ませたのは——

旧キャプテンと旧副キャプテンや他の

3年生をどう扱うか。

3年生は、チームを長く支えてきた存在。

(……でも、このままのポジションでは勝ち上がれない)

シュートは胸の中で葛藤していた。


初戦は、これまでのチーム構成のまま臨むことにした。


理由はただ一つ。急な配置転換は、チームの空気を乱す。

試合は苦しい展開だったが、なんとか勝利をつかんだ。


しかし、シュートの胸には確信があった。

(……このままでは二回戦以降は厳しい)


試合後、シュートはしっちゃんを呼び出した。

「しっちゃん……正直に言ってほしい。

 このままのポジションで県大会を勝ち上がれると思う?」


しっちゃんは少し考え、静かに答えた。

「……無理やと思う」


シュートは息をのんだ。

しっちゃんは続けた。

「キャプテンも副キャプテンも、本来の適性ポジションが違う」

「前キャプテン本来は トップ(FW)ではなく

 トップ下(MF)だろう」

「決定力よりも チャンスメイク に優れている

 視野が広く、前線より中盤で活きるタイプだと思う」


 「前副キャプテン ストッパーではなく

  右サイドバックが適任、足が速い攻撃参加が得意

 守備専任より“攻撃的な後方”が向いている」


 シュートは深く頷いた。

 しっちゃんはさらに続けた。

 「それと……

  今後のことを考えるなら、 キャプテンと副キャプテンの交代に、

  二年生を入れた方がええ」

 「来年のチーム作りも始めなあかんし、

 今の三年生は、もう最後の大会や」


 シュートは胸が熱くなった。

 (……しっちゃんは、 チーム全体の未来を見てるんや)


 翌日、

 シュートはチーム全員を集めた。

「二回戦から、ポジションを変えたい。 理由は……勝つため」


 前キャプテンも前副キャプテンも、最初は驚いた。

 

 しかし、しっちゃんが静かに言った。

「みんなの力を一番活かせる形にしたいだけや。

 誰も外さへん。ただ、勝つために動く」

 その言葉に、チーム全員が頷いた。


 顧問が言った。

「……よし。 二回戦はその編成で行こう」


 新しい布陣は、驚くほど機能した。

 前キャプテンはトップ下で輝き

 前副キャプテンは右サイドで攻撃の起点となり

 二年生が交代要因で試合に慣れ

 シュートとしっちゃんの連携がチームを引っ張った


 二回戦、三回戦と勝ち進み——

 ついに、近畿大会出場を決めた。


 試合後、

 シュートはしっちゃんに言った。

「……ありがとう。 お前のおかげで、ここまで来れた」


しっちゃんは照れくさそうに笑った。

「まだだ。 ここからが本番だろ、キャプテン」


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