第13章:遠い面影
紀子はいつものように、母親との夕食のおかずを料理していた。
母親の里美は、シングルマザーであり、女手で紀子と自分の生活のため、
“大宝デパート”の事務と、土日の”市役所前市場”でのパートの仕事を
していた。
そのため、を紀子は進んで家事全般の手伝いをしていた。
今日は久しぶりに里美のパートが休みであったため、
一緒に夕食を過ごすことができるのであった。
里美とゆっくり話すのは久しぶり。
紀子は楽しそうに話し出した。
「お母さん、しっちゃんがサッカー部に入ったって話ししたっけ?」
「ううん、初めて聞いたよ。あの子は文化系だと思っていたけど。
どうしてサッカーを始めたの?」
「なんか、サッカーの試合を見て優勝したキャプテン?の姿を
みて、俺もああなりたいって思ったらしい」
「あの子は、意志が固いからやり遂げるかもね」
里美は松岡のことを小学生の頃からよく知っているのであった。
「あとね、新しい友達が二人できたんだよ。ミッチとシュート」
「ミッチは大阪からの転入生で頭良くて、美人で、バスケも優秀みたい。
憧れるー」
「シュートは静岡からの転入生でサッカーのプロを目指しているみたい。
ちょっとカッコいいんだ」
「あら、しっちゃん以外に新しい友達できてよかったね」
「この前さぁ、4人でハイキングに行ってきた!」
「今回の中間試験は、しっちゃんが英語を教えてくれたから
補修がなかったんだ」
「ご褒美にみんなで武田尾に行ってきた!」
「あと、お母さんだけに内緒で教えてあげる」
「ミッチは”小林美樹”が名前。豪邸に住んでいるお嬢さん」
「で、ハイキングの時お父さんが車で送ってきたんだけど」
「お父さんは、阪急電車にポスタがある”小林一三”さんに
そっくり」
「ミッチが私だけに遠い親戚って教えてくれた」
里美はその話を聞いて、口に運び掛けの箸が止まった。
今の話に驚いている自分を悟らせ無いように、紀子に聞いた。
「お父さんのお名前は?」
「知ら無い。でも楽しいお父さんだったよ」
里美が唐突に
「明日、お母さん早くから仕事があるので。あなたはもう
寝なさい」
紀子は母親が急に話を辞めたことに少し違和感を感じたが
「お母さん。おやすみ」
と言って部屋へ帰って行った。
里美は、夕食の後片付けを終え、紀子が自分の部屋に
いることを確認し、自分の部屋に入り、化粧台の奥から
一枚の写真を取り出し物思いに耽っていた。
(紀子の友達のお父さんって・・・まさか彼?)
(彼は遠い昔に、東京へ行ってしまった)
里美と若い一人の男性が肩寄り添い写っている写真からは
何の返事もなかった。
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