歓迎
2
-翔龍姫-
針路はレイブンスへ……。
亜空間より一時ホールアウトした翔龍姫は商業航路より大きく外れた公海より再び跳躍した。
「なんでレイブンスなんだよ」
さもしくもカップラーメンを食堂でもそもそとすする雷は、父、ジョーカーを上目使いに睨んだ。
京子と言えば、麺を割箸でつつきながらも複雑な表情だ。よもや宇宙の彼方でカップラーメンをすするはめになるとは思わなかった。
「いい港だぜ、レイブンスは」
ジョーカーは何をするにも楽しそうだ。カップラーメンをもコース料理の一つのように賞味する。
「それは認めるけどさぁ、レイブンスくんだりでぐずぐずしてらんないだろ」
レイブンスは連邦商業区の恒星で、文明と文化の交差点のような星だ。
「軍の目くらましも兼ねてレイブンス経由でアメリアフィールズ入りしたんだけどよ、フェーベ置きっ放しにしちまってな」
あっはっは、と気楽に笑うジョーカーに、雷は冷たい視線を投げつけた。
「オンボロシャトルなんて放っておきゃぁいいだろ」
「そうはいくか。俺の可愛いソフィを置き去りには出来んさ。それにな……」
意味有り気に言葉を区切る。
雷はジョーカーが麺をすするのを辛抱強く待った。
「ちょいと面白い遺跡を見付けてね。その情報を解析しているところだ」
雷が眉を顰めた。
「遺跡……?いやそれより、外部の奴に解析任せっぱなしでいいのかよ」
ジョーカーの口端に笑みが疾る。
「レイブンスには、ゼッカーが居るのを忘れたか?」
雷の目が輝いた。
「そうかゼッカーさんが居るのか!」
フェスト諜報部門の責任者、ハリバートン・ゼッカー。
「あそこの図書館は絶品だってんで、野郎、意地でも動こうとしやがらねぇ」
そして、ジョーカーは雷に真剣な目を向けた。
「で、足のOHも出来るしな」
びくり、と雷は身を引いた。
「お前、右足の整備してねぇだろ」
義足のことだ。
「いや、忙しくて……でも、翔龍姫にいいシステムあるから……」
「俺の目、節穴だと思うか?蹴りの踏み込み、甘いぞ」
「見てたのかよ……」
「決まりだな」
両手を挙げた雷、敗けを素直に受け入れた。
-リュヒテン宙域 フォクスター-
内火艇の接舷、収容を終えて30分、駆逐艦フォクスター内は異様な緊張に包まれた。
原因は……
「銀河連邦最高議長、カイト・オルゲン公に敬礼!!」
格納庫に特設された歓迎用の舞台に、ロックハート中佐のバリトンが轟いた。目を細めるオルゲン。整列し、最大の緊張の中一糸乱れぬ敬礼を向けた第225独立特務部隊の面々へ、軽く手を振り上げた。
「楽にしたまえ。堅苦しいのは苦手でな……」
暗に、この無骨な集団が好きになれない、そんな雰囲気を覗かせていた。
「オルゲン公、何か訓辞を」
共に乗艦した艦長、クラウス大佐は殊更堅苦しく口を開いた。
「そんな物は君がやればいい。私は部屋で落ち着きたいだけだ」
言うが早いか、オルゲンは身辺警護の5人を率いて艦内入り口へすたすたと向かった。
唖然たる宇宙の男たちが見送る中、エアロック前でふと立ち止まり振り返る。
「何をしている大佐。私の部屋へ案内はなしか?」
ざわり……クラウスを神と崇めるフォクスターっ子に、今の言葉は大きな波紋となって広がった。




