避難勧告特権
-エステール-
「翔龍姫跳躍確認!」
その言葉に、ブリッジはにわかに沸き立った。
翔龍姫だけは、王女だけはこの場より退避させた。あとは……。
「ライツ、頼んだぞ」
そして、己が命の問題だ。
「フォクスター、ガーヘルト、両艦全砲門こちらに照準されました!」
両艦の主砲、一斉回頭。
……だろうな。
予想はしていたことだ。
「障壁全開!クリス、最期と思って徹底応戦!奴らに僅かでも多くの損害を与えろ!!」
-フォクスター-
クラウスは震えていた。
……やられた!
面子丸潰れである。
かくなるうえは……。
「あの海賊艦、エステールは必ず墜とせ!!」
もはや意地だ。
「ガーヘルトは無視しろ!エステールに全砲門……」
「艦長!」
観測員のオルドレン少尉が割り入った。
「控えんか、少尉!」
ロックハートの一喝。
「艦長命令を遮るとは何事だ!!」
しかし、オルドレンは退き下がらない。
「そんな場合ではありません!ここに環境観測要員として、避難勧告特権を発動します!!」
クラウスとロックハートは顔を見合わせた。
外部環境の僅かな差が、一瞬で命を奪う宇宙空間。連邦航宙法でも定められる特権……それは軍とて宇宙に身を置けば変わらない。
「報告します!落下中の衛星が惑星に衝突します!計算では衝撃波がこの宙域を通過します!!」
「待て、衛星の衝突ごときで……」
しかし、クラウスも思い出す。
「そうか!反応炉の燃料が満載されているのか!!」
オルドレンが硬い表情で顎を引いた。
「戦闘を中止してください」
-エステール-
これは幸運と言うべきか……。
ダイモス最期の仕事だ。
「全艦緊急回避!全速でこの宙域を離れる!!」
しかし、幸運を唄うのは無事この危難を回避してからだろう。
「副長、ダイモス火星に衝突!!」
……予想より早い!
ディスプレイ上の赤い惑星に、鋭い閃光が。
「総員対ショック態勢!!」
数秒後、激しい衝撃波が押し寄せ、艦の機能を次々に破壊していった……




