迎撃態勢
-ダイモス CDC-
報告を受けて数秒、小さな衛星内部を轟音と衝撃が貫通した。
連続するミサイルの衝撃を緩和する為、基地中央の大型慣性制御装置がフル稼働。通常照明の電力が低下し、非常用の赤色灯に切り替わる。
「ミサイル24機、全弾直撃です!」
衝撃の激しさに転倒したコールは、コンソールに手をかけ立ち上がる。
「被害は!?」
膝を付くランディに手を貸した。
「すまん」
「防宙システム60%大破!Eブロックに32秒の酸素流出確認、隔壁閉鎖しました!」
「フォボスにホールアウトした船艇との関連は!?」
「ネガティブ!」
……してやられた。
地球上でのごたごたで防衛網に隙が生じたらしい。クックばかりに気を取られ過ぎた。
「重力振多数感あり!」
亜空間ソナーの画像に重力変移が多数検知され、警報が激しさを増す。
「くそ、第2波か!?」
「いえ、これは……」
ダイモスの軌道約85kmにホールアウト。その姿が光学映像に捉えられた。
「FF-25ライナー……連邦軍です!」
……連邦だと!
息を呑む。
「至急迎撃体制を取れ!!」
ディスプレイの情報が一新、戦闘用に放出された50機の多眼プローブの映像中心に移行された。
「シルフィード、ロゼッタ隊、ディートリヒ隊発進!」
フェストの迎撃機、単座式のFA-19シルフィードがカタパルトへ移動。次々に漆黒の宇宙へ放り出された。
「重力振多数感あり!跳躍ミサイル第2波です!!」
……しまった!
「シルフィード、ディートリヒ隊発進中止しろ!!」
しかし、開口したカタパルトに向け、多くの跳躍ミサイルが殺到。格納庫に誘爆した。
-医務室-
爆発の衝撃の後、照明が赤色灯へ。戦闘開始の合図と知った雷は思わず立ち上がる。
間を置かず、第2波。
今度は内側からの衝撃に、思わず雷もバランスを失いベッドに転倒した。
「お……重ぉい!」
「悪い」
京子の上より立ち上がり、床に転倒するイゾーデを助け起こした。
「何があった!?」
イゾーデはしばし瞑目。
「敵襲です。跳躍ミサイルの第2波が発進前のシルフィードに直撃し、第4カタパルトから格納庫へ誘爆した模様です」
「軽く言ってくれるぜ……」
医務室の内線が悲鳴のような呼び出し音で注意を引いた。
転倒により、軽く打った頭を振りつつシンディが受話器を掴む。
「はい、医務室」
口を閉ざして数秒、シンディは口許を引き締めた。
「分かったわ。とにかく早く。こっちも至急受け入れ体制を整えます」
「どうしたんですか?」
受話器を置いたシンディの腕を雷が掴む。
「怪我人よ。Eブロックと格納庫から大量に来るわ。オペ室に行くから、貴方達はここで指示を待ちなさい」
そう言い残すと、シンディは椅子に掛けた白衣を取って、医務室を駆け出した。
……いや、指示など待っていたら。
気持ちが逸る。しかし、京子を置いてなど行ける筈がない。
すると、
「王女、何をするんですか」
イゾーデの声に振り返ると、ベッドより抜けた京子がフェスト騎士団の制服に袖を通していた。
京子の着替えに用意しておいた衣装だが……。
「おい京子、何のつもりだ」
「何って、準備してんのよ」
「じゅ……病人が何の準備だよ」
「戦いに行くんでしょ。雷の顔に書いてあるよ」
「行く訳ないだろ!お前の護衛が任務だ」
すると京子は小さく笑う。
「その護衛対象が移動したら、雷も動かない訳にはいかないでしょ」
ベッドの前で自分の衣装を確認する京子。機能的なその制服が、やけに似合う。
「イゾーデからも言ってやってくれよ」
イゾーデは京子の足に取り付き、制服のずれを直す。
「ここの皺が……」
……いや、手伝うんじゃなくて。
「私から王女へ意見する権限はございません」
「そう来たかよ」
京子の目を正面から捉えた。
「雷、行こう」
本気の目だ。
「……ったく、どこ行く気なんだよ」
「翔龍姫の他にある?」
「だよな」
雷は腰に手を回し、銃を引き抜いた。そのまま装弾を確認し、銃身を持って京子に差し出した。
「あくまで護身用だ。俺が生きている間は使うな」
それを受け取った京子は銃を抱き締めるようにして微笑んだ。
「じゃあ、護身用じゃなくて、お守りだね」
……そう終わることを祈るよ。
嫌な予感が拭えない。
雷はそんな思いを振り払うように大きく頷いた。
「いいか、俺の傍を離れるなよ」
「了解!」




