【8】
【七、蜜を吸い、蝶は飛び立つ】
「……それは、どういう好きですか?」
告白をしてそう返されるなんて、思いもしなかった。
動揺している彼を見て、少し期待する気持ちがたかまる。
このまま言ってしまえばいい。
「そんなの、そのままの意味に決まってるじゃない」
ふっと零音は、複雑そうな笑みを浮かべる。
「お菓子、ちょうどお店であまったのがあるのでとって来ますね」
そう言い、台所から出て自分の部屋にはいっていった。
一人のこされて、たかまった感情が冷静になってくる。
なんで、あんな言い方をしてしまったのか、後悔してしまう。
付き合ってください、そう素直に伝えればよかったのに。
零音は自分の部屋で持って帰ってきたお菓子の袋を手にとる。
自分は思っていたよりも、臆病だ。
今まで、好きなのかもしれないというサインを見ないふりをして、気がつかないようにしてきたのかもしれない。
拒絶され、傷つくのが恐かったから。
期待をしてしまう分、そうでなかった時にショックをうけないように逃げてかわしてしまう。
台所にもどると、彼女は平静をよそよってこっちを見ている。
俺は、もう逃げない。
「……お嬢様、私と恋人として付き合いという事ですか?」
「名前で呼んでもらえないの?」
「お嬢様が大切で愛しいです。だから、俺はつきあいません」
何を言っているのか、分からないという表情を彼女は浮かべている。
「君は特別な存在で、俺は、君の執事だ。心のすべては捧げる。いつだって、傍にいる。
君を守りたい。……付き合うとなれば、俺は、君に手をだしてしまう。一度、開けた欲求は自分でおさえきれない」
「…そんなの」
零音はわざと乱暴に美佳の腕をつかみ壁におしつけた。
驚いて美佳は視線を上に向け、零音を見つめる。
今まで、痛いほど力強くつかまれた事ない。
「分かってない。たぶん、君が想像しているよりも強く求めてしまう。
望まれてない事は、したくない。
たとえ、君が他の誰かと恋をしたとしても愛してる、美佳」
美佳は、視線をあげた。
見上げている零音は、今まで見たことないぐらい本当の彼のような気がする。
彼は私よりも年上なのに、傷ついている少年に見えた。
手をのばして、彼の頬に触れる。
「うん、あなたは私の…執事よ」
零音は優しくその手首をつかみ、ひきよせ手の甲にキスをする。
私の気持ちよりも彼は、ずっと深く想ってくれていた。
嬉しい。私がその気持ちと同じようになるまで、付き合いたいと告白するのをやめよう。
彼は、私の執事だ。
―END―




