↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
契約の真実  作者: 皐月 悠
PR
6/7

【7】


【六、花の蜜、蝶はどこにとまるのか】




マスターは、少女漫画でよく見られるかなりの鈍感キャラだったりするらしい。

この容姿で。呆れたため息をルカは押し出す。

「言葉に出さないと、相手は不安になります」

ルカは自分がいれるべき、コーヒーをドロップでいれていく。

ひいてある豆を、冷凍庫からスプーン3杯いれる。

銀で先の長くなっているポットで、豆にゆっくり優しくしめらせるようにお湯をおとす。

「……」

「自分の気持ちを言わないで、おさえて閉じ込めたのは、本当は自分のため。

彼女のためじゃない」

正面からルカは、零音をみすえる。

零音は、ルカから視線をそらした。

「自分の気持ちから逃げだす事は、自分も大切にはできない。

彼女も大切にはできない」

ぽたんっと最初の一滴がおちる。

ルカは零音から視線をガラスのコップにうつす。

そこからは、途切れないようにお湯を細く長くおとし続けていく。

「結末がどうなろうとも、気持ちと向き合い続ける。

向き合った結果は成長させてくれる。

美味しいコーヒーが、時間をかけ途切れないように、お湯を細く長くいれ続けていなければならないように」

ルカは、お湯をそそぎ終わると、視線をあげて零音を見る。

苦笑を浮かべると、コップを銀のお盆にうつす。

「俺はそう思います」

そう言うと、ルカはお盆を持って厨房から出ていった。

「……そのとおり、かもな」

零音も苦笑を浮かべて、ルカが出ていった方に視線を向けた。

黒崎は、今いれている紅茶のセットを零音にさしだす。

「この紅茶、あの子のです。壁際の席にいるので、出して来てください」

「黒崎…」

「今日は早くからお店に顔をみせているから、会ってないんでしょう?

行動もしないで後悔するマスターの顔はみたくありませんから」

「お前も、な」

銀のお盆を受け取ると、零音は厨房から出て行く。

その後ろ姿を見ながら、黒崎はライバル役なんて必要なかったと笑みを浮かべる。

洗い物をしながら、不思議そうにつぶやいた。

「…お前もなって、私にはそういう相手がいないのに、誰の事だ?」

ここにも、鈍感な人が一人いた。

他人の事の方がよく分かるらしい。


「お待たせ致しました。アップルティーでございます、お嬢様」

小さな音をたててテーブルにコップを置く。

じっと美佳は零音を見上げる。

かすかに頬が赤い。緊張しているのか、どこかよそよそしい。

琴音は笑みを浮かべる。

「ありがとうございます」

「零音、好き……な紅茶の入れ方教えて?今夜」

「はい、かしこまりました。まだ、仕事がのこってますのでもどります」

笑みを浮かべると、零音は厨房にもどって行く。

琴音は美佳に話しかける。

「告白、するつもりなの?」

「分からない。気持ちは伝えたいとは思うけど、うまく言えるのか不安で」

「そう。あまり、考えすぎない方がいいと思うよ」

「ありがとう」

今日、伝えてみよう。ありのままの言葉で。

そう思っていたら、気になって夕飯は何を食べたのかもあまり覚えていなかった。

気がついたら、夜になっていてお茶の入れ方を台所で教わっている。

「ねぇ、零音。好き」

心の中で言ったはずの言葉が、口に出しているのに気がついたのは、彼が驚いた表情を浮かべていたからだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。