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契約の真実  作者: 皐月 悠
5/7

【6】


【五、一輪の花ひらく】




ダークアッシュで長めのショートカットの髪型。

黒く細いデザインのズボンに黒のジャケット、黒い高襟のワイシャツを着ている。

琴音が先輩と呼んだその人は、厨房に入ると、黒崎に話しかけた。

「雫ちゃん、前に話したのはどんな感じ?」

黒崎は視線を話しかけてきたルカに向けて、首を横にふる。

「…この前、女性だとバレました。大体、マスターの好きな子に近づいてやきもちをやかせてくっつけるなんて…うまくいくとしたら、恋愛小説か漫画の世界の話ですよ」

冷たい目をルカに向け、一言つけくわえた。

「他人の恋路の邪魔をして、馬にけられたくありません」

「あぁー…あったね、そんな言葉。でも、マスターには行動しないで後悔なんて事は、してほしくない」

行動しないで、何かを諦めるとどうして長い間後悔するのだろう。

「ほんの少し手をのばせば、届くのになにもしてないのを見てると、背中をかるい蹴りたくなるのもあるな」

ルカは、苦笑を浮かべた。

黒崎はそれを見て、複雑そうな表情をみせる。

ルカがなぜ、そう感じるのか分かる気がしたからだ。

「あなたも、どこか本心を隠していますね」

 「まぁ、その方がうまく人と付き合える時があるから。

俺の事より、マスターだよ。

プラン変更、彼女にやきもちやかせる」

「―…他のプランなんて、存在したんですね」

黒崎は呆れたため息を押し出す。

その少女漫画のようなプランはどこから出てくるのだろう。

現実の恋は、うまくはいかない。

「今、思いついた」

「それで、私は何をすればいいんですか?」

「そのままで大丈夫。マスターは、ここを始めた事も彼女には話してなかったから。

知らない事を知っている存在なら」

そう言うルカを黒崎は不思議そうに見る。

頭がいいのか、よくないのか分からない人だ、彼女は。

厨房に入り、紅茶の茶葉を銀のスプーンに一杯だけすくい、ティーポットにいれる。

電気ポットからお湯をティーカップにいれながら、横目でルカ視線を向けるとニヤリと口元を持ち上げていた。

……やっぱり、この人は、面白がっているだけ、なのかもと黒崎は思う。

タイマーを数分セットし、ティーポットにいれるためのお湯を中にいれる。

裏の出入口から執事の格好をした青年が来るのが視界に入った。

「あ、マスター」

「マスター、おはようございます」

「おはよう」

「今日、あの子来ていますよ。よかったですね」

ルカは、笑みを浮かべた。

必要以上にキラキラした笑顔で、零音はその笑顔を見なかったふりをして、在庫の茶葉を確認する。

それぞれ、綺麗に整頓された棚に缶がならんでいる。

数を確認すると、メモをとってから振り向く。

「ルカ、その表情はからかいたいだけだろう」

「いいえ、両思いなら告白すればいい…と思っただけです」

「……どうして、両思いだと思うんだ?」

……あの子の気持ち気が付いてなかったのか、と黒崎とルカは目をあわせた。

好意を抱いていないのに、執事になってと言わないだろう。

喫茶店に来て、零音を見る視線が熱く頬が赤くなっているのに。


「言動や雰囲気がそんな感じです。」

「なんていうか、感覚的に」

「……」

恋愛対象に見られていないと思っていたが、客観的に見るとみてくれていたという事か。

嬉しいな。

ふっと笑みを浮かべた。

胸からあたたかい気持ちが広がってくる。

まるで、蜜のようだ。

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