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【書籍化企画進行中】公爵令嬢フローラの選択  作者: ごろごろみかん。
3.チェックメイト、ですわね

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5.良いようにされる気はない



「メルンシアが誘拐された……?」


ちょっと、いえ、にわかには信じにくい。

ミリアが鋭く玄関扉を見つめながら、私に聞いてくる。


「……どうする?姉様」


どうする?


この場合、選択肢はふたつだ。


出ていって、釈明するか。



あるいは──


「ぶちのめす?」


「はっ……」


私とアシェルの声がハモった。恐らく、驚きで。


「向こうは、十人もいないみたい。私とアシェルのふたりでなら、蹴散らせるわ!」


ミリアは腕まくりをして答えた。

意気揚々と武力行使しようとする妹に、私は額に手を当てる。


「そんなことしたら、罪を認めたも同然になるわ。戦闘はしない。それより今は──」


私は玄関扉に視線を向けた。


(本当にメルンシアは誘拐されたの?

誘拐されたのなら、犯人の意図は?

どうして、今?)


扉の向こうに控えているのは、衛兵だろうか。


メルンシアの誘拐事件、と、くればネイサンは間違いなく、権力を行使して近衛騎士を動かしているだろう。


もし、そうなら──。

ネイサンが近衛騎士を動かしているのなら。


ネイサンの命を受けた彼らは私の話なんて、聞かないはずだ。

彼らが命じられているのは私の捕縛だけだろうから。


そこまで考えて、私は顔を上げる。

そして、ふたりに宣言するように言った。


「…………逃げましょう!」


「やっぱ、そうだよね。そうすると思ってた」


既に脱出の準備を整え始めていたアシェルが答える。手には、鞘から抜かれた短剣がある。武器の確認を行っていたらしかった。


(彼らはまだ私が在宅だと気がついていないわ)


それなら、勝機はある。


ドンドン!ドンドン!!……と扉を叩く音がだんだんと激しくなってくる。

今にも壊れそうである。もう少し優しくして欲しい。この家、この前買ったばかりの新居なのよ!?


壊されたら弁償して欲しい。


「とはいえ、これでネイサンの手の者だとわかったわ」


小さく私は零した。


いくらお父様と関係が悪化しているといえど、私はれっきとしたローレンシア公爵家の娘。


公爵令嬢にここまで強気に出られるのは──王家の手のものしか、考えられない。


王家は私を犯罪者に仕立てあげるつもりのようだ。


(ミリアは生贄にして、私は牢獄に送るつもり?)


婚約解消を求めた腹いせに?


(それ、逆ギレって言うのではなくって?)


私は、自分の命が消費されることを拒んだ。

国のために死ねと言われて、断ったらこの仕打ちよ?

どこまでこの国は……いいえ。

ネロワローの王家は、腐っているのだろうか。


怒り、というよりも、悔しかった。

ここまでコケにされたことが。


今頃、ネイサンはざまぁみろと思っているのだろう。国家権力に逆らったからこうなったんだぞ、とくらいのことは思っているのかもしれない。


(王政のこの国では、王家がルール。絶対的君主だと言われようとも)


それに従おうとは思わない。

良いようにされる気は、なかった。


手は抜かないわ。

向こうがその気なら。


「……とことんやってやろうじゃない?」


私は手早く、チェストから手持ちの魔道具を取り出した。


「この後、城に向かうわ。そのまま地下に入って、魔道具を確認。記録を確認して問題なければ、祭壇を破壊する。その方向で行くわ」


私の宣言に、ふたりは目を瞬いた。


「……そうね。姉様、私も一緒に行くわ!」


「それしかないよね」


ミリアとアシェルがそれぞれ同意する。

双子を巻き込むことは不本意だけど、もうこうなってしまったら、そんなこともいっていられない。


このままローレンシア公爵邸に戻っても、ふたりは厳しい事情聴取を受けることだろう。

私の罪を確定させるために、自白を強要される可能性だってある。


ふと、その時お父様は今どうしているのか気になってしまった。

もしかしてもう、王城に連れていかれてしまったのかしら?


あのお父様のことだ。

私が本当にメルンシア誘拐事件に関わっているか、そもそも首謀者なのかどうかよりも、双子のことを気にするだろう。


(お父様の考えからして──)


私が首謀者だと認めて双子の情状酌量を求めるか、知らぬ存ぜぬで通すか。


どちらにせよ、やはり双子は公爵邸には帰さない方が良さそうだった。


私は手持ちのポーチに入るだけの魔石を、中に入れる。

入り切らなかったものは、魔力に変換しておく。


「急いで、姉さん、ミリア!このままだと、扉が破壊される!」


そこで、アシェルが私とミリアを呼んだ。


ミリアは地下に潜るために、だろう。

ショールを取りに行って戻ってきたところらしかった。


アシェルは地下への隠し通路を開けている。


隠し通路への扉はいつも、テーブルの下のカーペットに隠されていた。

テーブルはズラされ、カーペットは捲られ、扉の鍵は解錠され。

ぽっかり空いた穴の下には、地下に続く階段が続いていた。


真っ暗なので、地下に降りる時は魔力灯の携帯が必須だ。


「行きましょう、姉様!」


「……ええ!」


ミリアの言葉に頷いたその直後のことだった。

重たいものを玄関扉にぶつける音が聞こえてきた。





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