教授と院生とあんぱんまん ~その2~
日曜日。
冬の晴れた日は、本当に気持ちいいですね。
ちらついていた雪はすっかりやみ、雲一つない真っ青な空が広がっております。
今日は院生君の姪っ子の誕生日。
お誕生パーティーの行われる舞台は大学の教室です。
教授をはじめ、教室のみんなが主役が来るのを、今か今かと待ちわびております。
午後1時になりました。
『こんにちは!』
教室のドアが開きました。
みながそちらに目をやると、お母さんと手をつないだ姪っ子ちゃんがにっこり笑っています。
春の陽だまりのようなその笑顔...
『あっ!!いんせいだ!!』
院生君に気付いた姪っ子ちゃんはお母さんの手を振り切ると、猛然とダッシュしてきました。
可愛らしかった天使の笑顔が、獲物を見つけた獣の表情に変わりました。
その変貌を見逃した者は誰一人いませんでした。
ガツーーン!!
『あう...』
姪っ子の硬い前頭部が、院生君の顎にクリーンヒットしました。
『うう...痛い...痛いよ...姪っ子ちゃん...』
『いんせい!いんせい!!』
涙を流し、鼻から流血する院生君。
そんなことはお構いなしの姪っ子は、久々に会った遊び道具に大はしゃぎです。
小さな拳から繰り出される容赦ないパンチ。
ビシバシと音を立て、院生君の頬をとらえております。
『喰らえ!
いんせいめ!!アンパーンチ!!』
『あう..あうう...』
『おお...
なんと壮絶な...いや、ほのぼのとしたやりとりじゃ...』
『本当に痛ましい...いえ、和やかな雰囲気ですね...』
ばし!!
『ぐええ!!』
鈍い音が教室中に響くと、院生君は膝から崩れ落ちました。
『め、姪っ子ちゃん...
レバーはダメだよ...』
『わーい!
いんせいに勝った!勝った!!』
『...無邪気じゃのう...なあ屯島君...』
『...え、ええ...』
『それでは準備を始めようかのう!
なあみんな!!』
『そうですね!ところで院生さんは大丈夫ですか?』
『心配ありがとう...
屯島君...
これくらいもう慣れっこさ...うう...』
さていろいろありましたが、とうとう寸劇が始まるようです。




