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死蔵書庫  作者: 大窟凱人


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8/15

XXX、応答セヨ

死亡事故調査資料 業務無線記録

10月8日21時56分、施設内で作業員一名が死亡した事故について、事故発生前後の業務無線記録を文字起こしした。

事故当時、三名の作業員が施設内の各区画を分担し、巡回点検を行っていた。

配置人員は以下の三名。

佐伯 主任

三田 作業員

小野 作業員

以下、事故発生14分前からの記録。

――――

21:42:08

「三田、三区見てくれるか」

「了解」

「こっち異常なしです」

「了解。小野はそのまま六区」

「六区向かいます」


21:44:03

「主任、三区止めます?」

「いや、まだいい。そっち二人で見て」

「了解」

「確認します」


21:46:51

「誰か五区寄れます?」

「近いんで行きます」

「お願いします。じゃあ俺、六区戻ります」


21:49:20

「五区、問題ないです」

「了解です。ありがとう」


21:53:42

「主任、三区終わりました」

「確認した」

「五区も終わりました」

「了解。じゃあ全員そのまま待機」

「了解」

「了解です」

「了解」


21:55:18

「主任、五区、警報出てます」

「五区?」

「圧、上がってます」

「五区、応答して」

「……」

「五区、聞こえるか」

「はい」

「何が起きてる」

「問題ありません」

「いや、警報出てる。確認しろ」

「問題ありません」

「お前、今どこにいる」

「五区です」

「三田?」

「俺、三区です」

「小野?」

「六区です」

「……」

「お前、誰だ」

「……」

「名前を言え」

「……ア、■■、シテ、■■■」

「三田?」

「俺じゃないです」

「■■、ア、■■■■、シテ」

「……主任、今の、小野ですよね?」

「違う。三田じゃないのか?」

「俺は主任がしゃべってるのかと……」

「どういう――」

[警報音]

「主任、六区も上がってます!」

「小野、そこ出ろ!」

「扉、開きません!」

「非常通路は」

「五区側なら行けます!」

「行くな。五区には行くな!」

[衝撃音]

「うわっ」

「小野!」

「大丈夫です。まだ」

「三田、六区行け!」

「無理です! 五区通らないと行けません!」

「小野、聞こえるか!」

「はい!」

「そこ動くな!」

「でも、ここ」

[警報音]

「主任、何か開きました」

「何が」

「五区の扉」

「行くな!」

「……」

「小野?」

「……コッチ、来テクダサイ」

「小野、行くな!」

「……主任?」

「俺じゃない!」

「でも、ここしか」

「待て! 小野!」

[走行音]

「小野、戻れ!」

「小野!」

[大きな衝撃音]

[約四秒間、通信なし]

「……小野?」

「……」

「小野」

「……」

「応答しろ」

「……」

「小野!」

「……」

「大丈夫ですか」

「……」

「小野、応答しろ!」

[記録終了]


音声解析結果

事故発生後、記録された音声について話者照合を実施した。

事故当時の配置人員は三名。

しかし、記録からは四名の独立した話者が確認された。

話者A 佐伯

話者B 三田

話者C 小野

話者D 該当者なし

録音上の話者Dは、佐伯、三田、小野のいずれとも話者一致しなかった。

話者Dによる発話は十三箇所。

話者Dの最初の発話は、記録開始直後の21時42分台に確認された。

「こっち異常なしです」

以降、話者Dは、

「確認します」

「近いんで行きます」

「五区、問題ないです」

「五区も終わりました」

など、通常の業務連絡に継続して参加している。

21時55分18秒以前の記録において、佐伯、三田、小野のいずれも、話者Dの発話に対して確認、訂正、または不審を示していない。

21時46分51秒、小野からの五区確認要請に話者Dが応答。

21時49分20秒、話者Dは、

「五区、問題ないです」

と報告した。

小野はこの報告を受け、五区へ向かわず六区へ移動している。

事故後の調査では、五区では同時刻以前から異常値が記録されていた。

21時55分以降、佐伯が五区からの応答者を確認したところ、三田は三区、小野は六区にいることが判明した。

同時刻、五区に作業員はいなかった。

その後、話者Dは身元確認に応答せず、意味不明の発話を二度行っている。

21時55分台、六区にいた小野に対し、

「コッチ、来テクダサイ」

と発話。

小野は直後に六区を離れ、五区方向へ移動した。

小野の遺体は五区で発見された。

生存者への聞き取り、および事故前の作業記録を照合したところ、事故発生以前の話者Dについて、

佐伯は三田、

三田は小野、

小野は佐伯、

の発話だと、それぞれ認識していた。

三名とも、当日の配置人員については、

「三名だった」

と回答している。

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