XXX、応答セヨ
死亡事故調査資料 業務無線記録
10月8日21時56分、施設内で作業員一名が死亡した事故について、事故発生前後の業務無線記録を文字起こしした。
事故当時、三名の作業員が施設内の各区画を分担し、巡回点検を行っていた。
配置人員は以下の三名。
佐伯 主任
三田 作業員
小野 作業員
以下、事故発生14分前からの記録。
――――
21:42:08
「三田、三区見てくれるか」
「了解」
「こっち異常なしです」
「了解。小野はそのまま六区」
「六区向かいます」
21:44:03
「主任、三区止めます?」
「いや、まだいい。そっち二人で見て」
「了解」
「確認します」
21:46:51
「誰か五区寄れます?」
「近いんで行きます」
「お願いします。じゃあ俺、六区戻ります」
21:49:20
「五区、問題ないです」
「了解です。ありがとう」
21:53:42
「主任、三区終わりました」
「確認した」
「五区も終わりました」
「了解。じゃあ全員そのまま待機」
「了解」
「了解です」
「了解」
21:55:18
「主任、五区、警報出てます」
「五区?」
「圧、上がってます」
「五区、応答して」
「……」
「五区、聞こえるか」
「はい」
「何が起きてる」
「問題ありません」
「いや、警報出てる。確認しろ」
「問題ありません」
「お前、今どこにいる」
「五区です」
「三田?」
「俺、三区です」
「小野?」
「六区です」
「……」
「お前、誰だ」
「……」
「名前を言え」
「……ア、■■、シテ、■■■」
「三田?」
「俺じゃないです」
「■■、ア、■■■■、シテ」
「……主任、今の、小野ですよね?」
「違う。三田じゃないのか?」
「俺は主任がしゃべってるのかと……」
「どういう――」
[警報音]
「主任、六区も上がってます!」
「小野、そこ出ろ!」
「扉、開きません!」
「非常通路は」
「五区側なら行けます!」
「行くな。五区には行くな!」
[衝撃音]
「うわっ」
「小野!」
「大丈夫です。まだ」
「三田、六区行け!」
「無理です! 五区通らないと行けません!」
「小野、聞こえるか!」
「はい!」
「そこ動くな!」
「でも、ここ」
[警報音]
「主任、何か開きました」
「何が」
「五区の扉」
「行くな!」
「……」
「小野?」
「……コッチ、来テクダサイ」
「小野、行くな!」
「……主任?」
「俺じゃない!」
「でも、ここしか」
「待て! 小野!」
[走行音]
「小野、戻れ!」
「小野!」
[大きな衝撃音]
[約四秒間、通信なし]
「……小野?」
「……」
「小野」
「……」
「応答しろ」
「……」
「小野!」
「……」
「大丈夫ですか」
「……」
「小野、応答しろ!」
[記録終了]
音声解析結果
事故発生後、記録された音声について話者照合を実施した。
事故当時の配置人員は三名。
しかし、記録からは四名の独立した話者が確認された。
話者A 佐伯
話者B 三田
話者C 小野
話者D 該当者なし
録音上の話者Dは、佐伯、三田、小野のいずれとも話者一致しなかった。
話者Dによる発話は十三箇所。
話者Dの最初の発話は、記録開始直後の21時42分台に確認された。
「こっち異常なしです」
以降、話者Dは、
「確認します」
「近いんで行きます」
「五区、問題ないです」
「五区も終わりました」
など、通常の業務連絡に継続して参加している。
21時55分18秒以前の記録において、佐伯、三田、小野のいずれも、話者Dの発話に対して確認、訂正、または不審を示していない。
21時46分51秒、小野からの五区確認要請に話者Dが応答。
21時49分20秒、話者Dは、
「五区、問題ないです」
と報告した。
小野はこの報告を受け、五区へ向かわず六区へ移動している。
事故後の調査では、五区では同時刻以前から異常値が記録されていた。
21時55分以降、佐伯が五区からの応答者を確認したところ、三田は三区、小野は六区にいることが判明した。
同時刻、五区に作業員はいなかった。
その後、話者Dは身元確認に応答せず、意味不明の発話を二度行っている。
21時55分台、六区にいた小野に対し、
「コッチ、来テクダサイ」
と発話。
小野は直後に六区を離れ、五区方向へ移動した。
小野の遺体は五区で発見された。
生存者への聞き取り、および事故前の作業記録を照合したところ、事故発生以前の話者Dについて、
佐伯は三田、
三田は小野、
小野は佐伯、
の発話だと、それぞれ認識していた。
三名とも、当日の配置人員については、
「三名だった」
と回答している。




