3.崩れかける幸せ
結婚さえしてしまえば全てがうまくいくと思っていた。
王子妃教育は断念した。リリーって思った以上に地頭が良くなかったみたい。残念。
王子妃の公務は王子様がつけてくれた者が代わりにしてくれることになった。
まぁ、当然だよね。だって、私はヒロインなんだもの。
王子様とは婚約から一年後に結婚した。
これでやっと本当のエンディングが訪れた。後は幸せになるだけだと思ったのに全然、その幸せが訪れない。
「まだ、子供ができないのですか?」
「殿下にはお世継ぎが必要なのですよ」
「まぁ、お義姉様は結婚してもう二年も経つのにまだ子供ができないのですか?」
王子様には妹がいて、その妹は結婚してから一年後には子供が生まれた。しかも、男の子だ。
私が妊娠していないから現在、王位継承権第一位になる。そのせいか、社交界では自分が最高権力者のように振る舞っている。
王子様もそれを許してるし。
私の方が身分は高いはずなのに。
「私はあなたと違ってまだ若いですからそこまで焦る必要がないと思います」
だって私、まだ十代よ。日本では高校生、子供だよ。私が子供なのに、親になるとか無理。それなのに、みんな産め、産めってうるさいのよ。
なのに、王子様まで子供を気にし始めるし。
「あら、随分と呑気なのね」
「仕方がありませんわ、リンステット様。所詮、私たちとは違いますもの」
「ああ、そうでしたわね、所詮、ですわね」
「お世継ぎの心配をする必要のない家柄で羨ましい限りですわね」
乙女ゲームは終わったはずなのに、まだ悪役令嬢?悪役おばさん?がいるなんてヒロインに試練はつきものだけど、これが現実だと疲れる。
ゲームだったらスキップできるのに。
それからもひたすら子供自慢
さっさと産めと言われて産めるものではない。よく言うじゃん。子供は授かり物って。そんなことも分からないなんて頭のネジが緩いんじゃないの。
私の子供が産まれるまでは王子様の妹の子供が時期国王候補だった。だからずっと偉そうだったし、周りもそれに追随した。
たかが子供一人でそんなに偉そうにできるなら子供はあった方がいいな。
ここは日本と違って親が育てるわけじゃない。乳母が全部してくれるなら産んでもいいかもと思った。
だけど、子供は全然できなかった。
すると、周りは私を嘲笑し始めた。欠陥品だと言う奴もいた。
「うるさいっ!」
「きゃあっ」
「なんて乱暴なの!?」
あまりにもうるさいから近くにあった壺を投げつけてやった。壺は近くの壁に当たって砕けた。別に怪我をしたわけでも、当たったわけでもないのに大袈裟なのよ。
大体、最初に喧嘩を売ったのはそっちじゃない。
それなのに、ぎゃあぎゃあと。
「リリー、少し落ち着け」と何故か王子様まであっちの味方するし。
「子供がいるだけで王子様に味方してもらっていいですね」と言うと王子様は「子供は関係ない」とか言うし。
でも、実際そうじゃん。私は何も悪くないのに私を責めるのはそういうことでしょ。
その日を境に王子様とは微妙な関係になっちゃった。
どうしてこんなふうになっちゃったんだろう。
子供さえできればまた好転するのかな?
私自身、その日を境に子供を強く願うようになった。
そうすると神様が願いを聞き届けてくれた。やっぱり私はヒロインなのよ。
願えば、何でも叶う。
「うっ」
でも、妊娠は思ったよりも最悪だった。
「王子妃様、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないわよっ!さっさと、この気持ち悪いものを下げて」
食事の匂いが気持ち悪い。花や香水の匂いが気持ち悪い。
少しのことでイライラする。
それに、毒を盛られて死にかけることもあった。
「リリー、少しでもいいから何か食べてくれ」
「いやよっ!王子様も知ってるでしょう。死にかけたのよ。こんな事になるぐらいなら子供なんて作らなきゃ良かった!」
「・・・・・リリー」
「みんなが望んだのよ。なのに、できたら殺すの?意味分かんない」
「リリー、最初に言ったはずだ。王族に危険はつきものだと。王位継承争いで殺し合いが行われた歴史に関しても説明はしたはずだ」
「それは、でも、だって」
そんな危険からヒロインを守るのが王子様の役目でしょう。
大体、説明はされたけどさ、そういうのはいつだって画面の向こうだったんだもん。




