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狂気の使徒  作者: ひょうすい
1章 学園襲撃編
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31人目 3.785 411 784




 魔力には属性が存在し、「火」「水」「木」「光」「闇」「風」「特」の7種類に分類される。火属性から風属性までの属性は、その属性に応じた魔法が使用できる。が、特属性だけは本人の持つ魔力の性質によって様々である。



――――――――――――――――――――



 ガロンへ向かっている最中、何個か吸血鬼の拠点らしきものを見つけた。しかし、その全てがもぬけの殻かつかなり激しく損壊していた。魔力探知にも引っかかる気配もないため、そのままガロンへ向かった。欲を言えば、向かってる最中に本拠地があってほしかったけどね。

 目の前に広がるのは、見渡す限りの静寂。夜だろうと、家族の団欒くらいは聞こえてもおかしくはない。更に、街の光さえ灯っていない。空を見上げれば、光に遮られることもなく簡単に星が眺められる。青白く光る月は、異様なこの街を暗く照らす。



 「……きっしょ」


 「国に対する侮辱ということで?」


 「そういうことじゃねぇよ」



 ノーツとはまた違う、別の異様さ。ノーツは完全に無法地帯としての異様さがあったが、どうやらこのガロンにはない。代わりに言ってはなんだが、ユーゴスラビアあたりで多く見られたテロ組織の拠点に、雰囲気がよく似ていた。

 それを上手く伝えようとするが……。うーん、まあ難しい。アイリスはユーゴスラビアをもちろん知ってるわけないし、テロ組織と言ってもテロという言葉が魔界(ここ)にあるのかすらわからない。



 「街の静けさがまあきしょいよねって。無法地帯とは違う、何か計画性がある静けさって感じ……?」



 少しの沈黙の後、アイリスがハッと、何かに気付いた様子で私の顔を見る。


 

 「吸血鬼達が潜伏してるってことですか?」


 「そういうこと。もうちょっと正確に言うなら、ここが本拠地の可能性が高い」



 すると、アイリスは1度、誰にも気づかれないよう慎重に魔力探知を発動する。目を閉じ、両手を胸の前へ置く。ゆっくりと息を吸い、吐く。体から放たれる魔力がそれに応じて広がっていく。ゆっくりと、だが確実に。

 アイリスはゆっくりと目を開ける。体から放たれ球の形を保っていた魔力が、その場で一気に離散する。肩の力を抜き、私の方を見て言う。



 「どうやら、ガロン(この街)一帯に吸血鬼の本拠地があるようです。というより、この街が吸血鬼の本拠地ですね」


 「一般人とかはいる?」


 「いえ、全くいません。この街にいる人全員が吸血鬼に所属しているみたいです」



 一般人がいなく、発展に貢献していない街に価値はない。その街は「ただその国にある」だけであり、それ以上でもそれ以下でもない。現在、一般人がいなくテロ組織の人間しか集まっていないという状況で、国に対して発展を見せられるかといえば、それは違う。ということは……、選択肢がかなり広がった。



 「明日、ここを潰す」


 「わかりました。軍の派遣はしない方が良さそうですね」


 「うん。無駄に死なれても困るし」



 私達は1度、ブルームへ戻って強襲の準備を始めた。



――――――――――――――――――――



 明かりはない。窓から冷たい夜風が吹く。外は青白い光が弱く照らす。ほぼ真っ暗だ。闇に包まれた部屋に人影が3つあった。

 ソファに深く座る者が、口を開く。



 「何故国外に手を出した」



 すると、出入口の扉の前で立つ者が、報告のように告げる。



 「上からの指示です」


 「まーた上か。俺らの方針に口出ししやがって……」


 「今の、聞かれてたらまず殺されてますよ」


 「聞こえてなかったら犯罪じゃねぇんだよ」



 2人が会話をしているところに、部屋の隅にあるベッドで寝転がる者が間に割って入る。



 「国内もろくに制圧できてねぇ、そんな状況で国外に手を出した。つまり敵の数を増やしたってわけだ」


 「派手な手段は取れなくなったと……」


 「そうだ」



 ベッドから立ち上がると、2人の肩を軽く叩いてから言う。



 「明後日、本拠地をここから移す。そのための準備をしておけ」


 「了解」



 2人は部屋から退出する。

 風が強くなる。窓のガラスが大きな音を立てる。カーテンは大きく靡き、部屋に残った者の肌に何度も触れる。



 「なんの用ですか?」



 窓の外をゆっくりと振り返ると、邪悪な翼を生やした男が縁に立っていた。



 「次の指令を伝えようとな。具合はどうだ?」


 「良くも悪くも、順調ですよ」


 「の割には、アグロスの件は失敗したようだが?」


 「それはそれ、これはこれです」


 「そうか。……時間がないのでな、次の指令を伝える」



 息を飲む、そんな音が部屋に響き渡る。



 「サラセス・アグロスを暗殺しろ」


 「……担当間違えてませんか? それって第2部隊の管轄内では?」


 「いいや、これは第1部隊に任された仕事だ。理由は知らんがな」



――――――――――――――――――――



 「ってことだから、よろしく」


 「何をどうしたらそうなるの?」



 昨日あった出来事をハイジュに話す。吸血鬼の襲撃が終わってからすぐに学園から姿を消したところから、ガロンに敵の居場所がわかったことまで、その全てを話した。そりゃまあ、そのリアクションにもなる。けど、あんなでっかい話を持ってるなら、多少は慣れてもらわないと困る。

 ハイジュは状況をあまり理解できていない模様だ。……今は状況を理解してもらわなくていいんだけど。



 「とりあえず、今日の夜にガロン行くから一緒に来てねって」


 「まあ、それはわかったんだけど……、なんで私? ゴーン先生で良くない?」


 「ゴーンは扱いづらいから駄目。あと、ハイジュには仇討ちのために、力を養わなければならない。実践は大事だし」



 それっぽく理由をつけてハイジュを何とか行かせる方向に動かす。



 「あ、死ぬの怖い?」


 「怖くないよ」



 煽ろうと聞いたが、その質問だけ驚くほど冷静に答えた。よし、これでスイッチ入ったでしょ。



 「じゃあ行けるね」


 「まあ、無理ってわけじゃないからいいんだけど……」


 「じゃ、夜ここに来るから」


 「あ、うん……」



 ハイジュはふと思った「夜に迎えに来て、夜に作戦を決行する。……どうやって?」と。



 「サングィスまでどうやって行くの? 遠すぎて間に合わないと思うんだけど」


 「え? 普通に瞬間移動」


 「……はぁ?」



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