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架空ヴィジュアル  作者: 安達粒紫
9/14

のんのんびより






―――翁は今日もタイピングにいそしんでいた…即ちブログに精魂を込めていた(少なくとも精魂を込めているつもりには変わりない。…)――――


のんのんびよりの三期まである中第一期が好きで、よく私はそれを中心に視聴している。

一時期は、放送当時に、激しくリピート再生していた頃の、負の感情などを思い出し、遠ざかっていたが、今はもう気にならなくなった。

大変嬉しい。

繰り返せば、放送当時、激しくリピート再生していた頃の私自身の、心の問題の負の感情、作品とは別個のもの…を思い出し遠ざかっていたが、また近寄れ出した。

大変嬉しい。

就中10話の、皆さんご存じ、やぶれかぶれのやぶいしゃが、たけやぶのなかへすたこらさ、やぶからぼうにすたこらさ、やぶれたらぶれたもってすたこらさ…と続く、宮内れんげ=れんちょん、の歌は虞美人草のような色彩を放ち、その花言葉のように、思いやり、にあふれている。


―――(妻も息子も、お義母さんのところへ行っている。つまり今、この家にいるのは私だけだ。心が軽い。これならブログ作成も捗るだろう。)―――


――――ピンポーン、ピンポーン、(せっかくノリかかってきたというのに!)翁は玄関へ、短い脚を交差させ向かっていった。――――


――――築年数から考えるに、そして翁の不精から引っ張り出されるに、当然、インターホンなどはついていない。必然、玄関へ向かう必要があった―――


――――がちゃり、というありふれた音を立てて翁はドアスコープを覗かないまま扉を開けた。――――


――――(なんだ、言葉は悪いかもしれないが、不摂生に見える、おばさんじゃないか…年の頃、50くらいか?)翁は自分の不用心をほったらかしにして、女性の第一印象を導き出した。―――


――――「何用ですか?」翁は問うた。…そして彼女は何を言葉にするかと思えば、

「失礼ですが、万事にかない給うおん主、の加護を受けられませんか?」という必死の第一声が飛び出してきた。―――

翁の頭は、一瞬で、おん教!?今時???と捉えていた。―――当然彼自身、混乱しかかる。―――

それは、昔のカトリック教の表現を顕していた。

1600年代にも起こった、隠れキリシタンの火あぶりや磔―――


―――中年女は、つづけた「あなたさえ、その気になれば、今すぐにでも、さん・じょあん・ばちすた、は、姿を現すのですよ」―――

唐突すぎる宗教勧誘に戸惑いながらも返答する「なんだなんだ、そういうことはカステラの町ででもやってくれ…」翁は家の目の前が【昼間の】公園のため、なるべく小さく咆哮した。―――

だが、女は応酬する「なるほど、その意は汲みますが、生憎ここは、南蛮貿易の町ではありません。そのような態度では、いんへるの、へ堕ちてしまいますわよ!」―――

「もう、いい!」戸張翁はドアを強引に閉めようとした…女が叫んだ「どうか、ばぷちずも、のおん水を!」…翁はその、慟哭を聞き、急に女が哀れになり、一瞬限りの同情心が芽生えた。

結果、別れの言葉として閉まりかけのドアから放った、「私は、あんたらの言葉で言えば、ぜすす、を全く信じない者ではない。けど、もう勘弁してくれ!」

…翁はドアを閉め、思いっきり力を込めて鍵をかけた。

しかしそれから自分の事として、ハッと気付いたが、

(我ながらよく自分で、やり取りを終わらせたな…一昔前なら、この手の人間に出会えば、いかに論破するかという事が最優先の事となっていたのに…)などと我が身の変化を考えた。――――



――――戸張翁は自室へ戻ってきた。しかしブログの続きを書く気には最早到底なれなかった…。そのかわり?…そのかわりあらゆることに祈りを捧げたくなった。

植物の葉の水滴に。薪をくべられた暖炉の火に。数無き夜空の星に。…

一時的に敬虔なクリスチャンとなった翁は、祈りの姿勢に入った。――――


――――ガチャガチャどたどた「あー疲れましたね、しげちゃん」「まあ。…まあ。けどそれは言っちゃ失礼だ。母さん。」「そうですわ。確かに。…また母に至らぬところがあったら教えてくださいね。」――――



――――翁の上述の姿勢はすでに無く、息子と妻が帰って来たのを一瞬にして感じ取ると、何事もなかったようにPCの前の若者向けのゲーミングチェアに傍から見ればムスッとしたように再び座るのだった。――――










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