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架空ヴィジュアル  作者: 安達粒紫
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さよなら絶望先生





―――翁がアニメ好きになる…少なくとも、アニメをネタにブログセラピィをやる程には、それに没入したきっかけ…それは、前も書いたように約一年前だった。―――



――――その約一年前――――


―――翁は自室から離れ、精神の疲れを大なり小なり解消するために妻でも息子でもなんでもいい…とにかく人のいるところへ…と、行動し、後先は考えず、癇癪と暴力の事はつとめて頭の中心からよけて、居間へやってきたのだった。―――その頃、まだ一つ前の病院に通って居た―――茶の間へ来た翁、そこで眼に飛び込んできたのが、息子が観ていた「俗・さよなら絶望先生」だった。――――


――――「あ、お父さん、なんだか久しぶりの様な気がする……会うのが」

「これは、所謂オタク文化の一角を担うという分野なのかな。ご覧の通りアニメなのだけども。」―――息子は翁に、控えめに、そして簡単にそれを紹介した。――――

「うるさかったら消すよ。」――――


――――翁は息子に答えた「いや、いい。多少音があった方が気が紛れる」これは半分は息子の機嫌を損ねないために、半分は現代のアニメーション作品を観てみたいという鬱屈とした中にも芽生えた好奇心からだった。――――


――――「たった今、観始めたばかりですのよ、気分転換になればいいのですけれども…」妻が言った。「しげちゃん、何か、お父さんにもっと合うようなアニメというのはないの?」――――



――――息子が返答する前に翁が叫んだ「いいんだこれで!余計なことを言うな!」当時の翁は、この一年ちょっと後の宗教勧誘で殆ど怒らない彼とは、かなり違っていた。――――息子は、まだキレるには早いな、と、変な表現だが、冷静に怒るタイミングを見計らっていた。――――(できればお父さんに立腹したくない)息子の本心はそうであった。――――



―――TVからはOPの「ルンバルンバルンバルンバルンバ」というのが聞こえたかと思えば翁は一点集中しだし、後にやってきた糸色望という【翁の以前の職業である教師という点で同じキャラクター】の自分で自分を逝かせようとするシーンが有ることに衝撃を受けた。――――それは【普通】と言われるのにショックを受ける女子高生、つまり生徒、の目の前での出来事だった。―――



――――観賞しながら翁は感じていた、(なんだこれは…今のアニメーション作品というのは、こんなに面白いのか?)それは繰り返し、通称、絶望先生と呼ばれる教師へのシンパシーが無いではなかった。――――




――――「しげ、この前衛的なアニメはどういう評価を受けているのかわかるか?」翁は息子へ訊いた。「前衛的って言われても、うーん、10年以上前に放送されてるものだから…云々」息子の後の言葉は父には入ってこなかった(10年以上前!これがか!なかなか美術的表現も現代でも通用しそうに美しい。この作品が多分もう前時代的なものとして今は、扱われている!)

(現職時代にこのアニメに出会っていたら随分私の心が癒えたかもしれない……しかし、その時、息子はまだ、私にこれを紹介できる歳ではない…。)――――



――――「あなた、どうなさったの?このアニメ、やはり合わなかったのでしょうか?しげちゃん、お父さんの事も考えて。こんな自死を扱う様なもの…危険よ。」息子は黙り込んだ父をやや心配そうに観察していた…。「お父さん、悪かったね、今日はもうやめにしよう、今度は、明るいのにするから」……翁はそれを聞いて、いかん、と思い、気丈にふるまい始めたが、それは二人へ気を使う、という意味を持つとともに本音でもあった。「いや、しげ、これは非常に興味深かった!トラウマをなぞった先から癒してくれるような感覚を私は感じた。」

そして妻に、「君、その気づかいは余計なものだ。きついならきついと自分で言える。私は子供ではない。」

翁は続けた「そうなんだ、しげ、このアニメーション作品、この父に貸してはくれないか?まだ一話目を観たばかりだが、続きも観れそうな気がする。なにより精神にいい意味で作用してくれそうなんだ…どうかね。」――――



――――本来の名、しげあつ、はこれを返答する一瞬の間に嬉しい思いがよぎった。(今日のお父さんは、正常だ。【本来の】お父さんだ。きっと絶望先生、つまりアニメがいい刺激になったのだろう。喧嘩せずに済む…)

「わかった、いいよ、お父さん。けれどこれは、簡単に言えば、シーズン2なんだ。後から、1、を部屋へ持っていこう。お父さんはPCが古いから逆というのもなんだけど、ブルーレイが観れたはずだ。」――――



―――(私は今日は何と嬉しい日になったのでしょう。あの人が何か自分からやりたいことを見つけるなんて。病気のほうもこれで改善されれば尚よいのですが。)――――



―――さらにしげは思い出したように言った。

「そうだ、動画配信サービスというものに僕は入ってて。ネッチフィリックスというのは確か2人同時に観れる。あと、Qアニメストアというのも、パスワード等を入れておきましょう。これは一人専用だけども、昼間は大体僕は大学に…まあ、ボケっとですけど言っているから…。その間に好きなだけ観てよ。」

「…まてよ、その作戦ならルーフ―というサービスもIDなど通しておく。昼、観れる」――――

――――(息子は何か私に好意的なことを言ってるらしいが内容がさっぱり把握できない。古い人間に新しいことを言われても…となるではないか。けれど、ありがたいことだと思われる。習得まで、しげや、妻の手を借りないといけないが覚えよう)

父は息子に言った。

「すまんな。」と。

けれど、しげは、しげにとっての母と何か喋っており言葉は届いていなかった。

だが、翁は「すまんな。」と感謝の意を口にしただけで、何か心が浄化されるのを感じていた。それは、久しく感じたことのないものだった。いつからか忘れていたもの。…。翁は自室に戻る旨を二人に伝えると、その通り、リビングから出た。しかし途端に寂寞とした気持ちに逆戻りしてしまった。――――



―――その気持ちは、しげが持ってくるアニメ「さよなら絶望先生」を視聴するまでは、とりあえず続いたのだった。……――――




――――こうして、翁はアニメの道へ一歩ずつ入っていったのだった―――









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