ゲートが開いた日
十五年前、焼け落ちた集落から救出された少年、尚登
怪異の跋扈する東京で彼は騎士として教育を受けていた彼は三年前両親を失い一人当ても無く暮らしていた。
決意を新たに生きようと誓った彼の目の前に突然異界の門=ゲートが開き
中から女の子が現れた。
「遅かったか……」
やっとの思いで目的の集落を探し当てた私を迎えたのは
夜の闇を煌々と照らしその全てを焼き尽くす大火災だった。
『神剣との契約が失われたらここへ戻って来い。』
平安時代の書簡を頼りに野山を探り歩く事数か月…
どうやら希望は失われてしまったようだ。
「もはやこれまでか……。」
あと一日…一日早ければ……この先どうすればいいのか…?
「もし…もし…」
人の声?何処かにまだ生き残りが?
かすかな声を頼りに近くの川縁に向かう。
すると橋の下に男が倒れているのを見つける事が出来た。
「しっかりしなさい!」
一応声はかけて見るがもう長く無いのは一目瞭然…
「すまない…私がもっと早く辿り着いていれば…。」
ああ、悔やまれる…これでもう…打つ手は尽きたのだ…。
ところが男は穏やかな表情を浮かべる。
「いえ…ようこそ辿り着いてくれました…ありがとうございます…。」
「何を…礼など…。」
「貴方のお陰で…この隠れ里の務めは果たされました。」
言いながら男は大事に抱えていた布の塊を私に委ねる。
「この子を…どうか……。」
その中に包まれていたのは一人の男の子と一振りの直刀…。
「この子か?この子がそうなのだな?」
私の問に男は満足そうに頷くとそのまま息を引き取った。
まだ聞かねばならぬ事はあったのだがそれでも希望は繋がった。
早くこの子と剣を安全な所まで…
「それを渡して貰おう。」
ああもう…全く…どうしてこう…思う様に行かないのか…。
見回すと10人を超える人影に取り囲まれている…。
いや、正しく人と呼んで差し支えないのは見慣れない青い衣を纏った一人だけで
後は黒く波打つ人の形をした影の様な物…
人の姿をして人の言葉を話すなら交渉の余地などあったりしないだろうか?
「向こう側の者か?村を焼いたのは貴様か?」
私の問いに青衣は侮蔑交じりの声で答える。
「だとしたらどうだと言うのだ?お前が知る必要は無い事だ。」
ああ、そうか…問答無用と言う訳だな。
私は子供を抱えたまま自分の腰の物に手を伸ばしそれを鞘から解放する。
「‼‼」
抜刀と同時に剣は白く光り輝き、その斬撃は夜の闇ごと敵の何体かをすり潰した。
「貴様!神剣使いか?」
驚き叫ぶ青衣に返答してやる。
「だとしたらどうだと言うのだ?お前が知る必要は無い事だ♪」
「ふざけるな!」
声を荒げながら青衣は剣を抜きこちらに向け構える。
「お相手願おうか?こちらとしても神剣使いは一人でも減らしておきたいのでな。」
やれやれ…こっちはそれどころじゃ無いってのに…。
「相手してくれなくて構わんぞ。こっちは用が済んだから早く帰りたいんだ。」
いつもならあの村の仇に青衣の首の一つくらい獲ってやるのだが
子供を抱えたままでは分が悪い。
青衣は何かに気づいたように私の顔を指さした。
「その顔の傷…噂に聞いた事があるぞ!貴様…。」
「ハハ、名乗る程の者ではないよ。」
「当代最強の神剣使い!剣聖…木崎裕一郎か!」
「貴様らに名乗る名前は無いと言ってるんだ。じゃあな!」
先ほどの斬撃でこしらえた突破口から一目散
しかし敵もタダでは帰してくれないようで後方にまだ気配がある。
?…‼‼
行く手に轟音とともに爆炎が上がる。あの影の様な連中は炎を操るのか?
私一人なら突破は簡単だが赤子を抱えていてはそうも行かない。
爆炎をかわし続ければ前進する速度も落ち、青衣に追い付かれる。
「それを渡せ!」
脇に抱えていた布の塊を青衣に掴まれもみ合いになる。
「‼」
塊は分解し、布と子供と剣が放り出された。
「‼」
私は咄嗟に子供を掴み、青衣は剣を奪う。
「やれ!」
青衣の命令で影どもがこちらに向けて爆炎を放とうとした次の瞬間。
!!!!!!!!!!!!!!!!
頭上に轟音が響くとともにヘリコプターが現れ左右のサイドドアから重機関銃を掃射する。
さしもの怪物も不意を突かれた所に超音速の機銃弾の雨を食らっては一たまりも無いようで影はその場に釘付けにされた。
迎えが来たか…。
その隙に私は子供を抱えたまま着陸脚を足掛かりにヘリコプターに転がり込む。
そしてそのままヘリは急上昇し、一気に戦線を離脱した。
腕の中できょとんとしている子供に私は話しかける。
「すまん…お前の剣は私が必ず取り戻してやるからな…」
十五年後………
「すまん…お前の剣は私が必ず取り返してやるからな…。」
義父さん…?
「とりあえずこの子を育ててやらねばならないな…そうすると…」
これ…
「風来坊を続ける訳にいかんし…とりあえず家が必要だ…」
僕が…
「北品川の大叔父がボロ屋敷を手放したがっておったからそれを買おう。よかったなぁ…ちと古いが豪邸だぞ♪」
言いながら義父さんは僕の頭を撫でてくれる。
「後は…母親か……仕方ない…雪子に頼むか……。」
夢……か?
カーテン越しに四月の朝日が僕の網膜を刺激する…。
……………………ああ、もう…眩しいな……くそ…。
のそのそと体を起こし、部屋着に着替え布団を畳む。
朝飯…食わなきゃ…
急な階段を降りて台所を通り、居間にあるテレビを点けた。
「昨夜未明、札幌市南区に出現したヨウキは、真駒内駐屯地所属の陸上自衛隊、国立騎士団北海道方面軍によって撃退されました」
点けたばかりのテレビは一昨日の未明に発生した北海道のヨウキ災害の顛末を報じている。
ヨウキ…多種多様な形態をとりながらこの世界の何処にもその進化の痕跡を見出す事が出来ず異世界からの侵入口を通ってのみ現れる生命体…
この世界は有史以前からヨウキの脅威にさらされて来た。
そしてそれらに対抗すべく現生人類の祖先から進化したのが
僕たち騎士…
運動能力と肉体強度に勝る生まれながらの純粋な戦闘員である。
さて、朝ごはんにしよう。
「いただきます。」
暗い台所のテーブルには三つの椅子が収まっている。
その内の二つに座る人が居なくなってもう三年…
僕こと木崎尚登は家に一つの小さなテレビをチラ見しながら朝食を摂る。
メニューはご飯に生卵、パックの納豆とインスタントの味噌汁…
食堂にはテレビの音が響くだけ…
三年前…義父さんと義母さんが居た頃はもう少し賑やかだった様な…
もうその頃の記憶も少し薄れてしまいました
義父さん…貴方は今何処に居るんですか?
義父さんに何処かの橋の下で拾われてもう十五年…
一族に残す条件として親戚から求められた名門の倫道館高校にギリギリ合格しました。
けどこの先どう生きて良いか分かりません。
ため息をついて代わり映えのしない部屋を見回す。
今年になって変わったのはカレンダーだけだ。
「入学式まであと一週間か…。」
受験にかまけて最低限の掃除しかしていなかった部屋を片付けて余裕があったら模様替えでも…。
お茶を飲み干し重い腰を上げる。
少しでも明るく前向きに考えよう。
ああ!八幡神よ!
お陰様で今日も僕の首は繋がっています。
後は……出来ればもうちょっとだけ日々を豊かに
それと…可愛いガールフレンドが欲しいです…
さっきのお姫様は問題外ですが…
何処かに可愛くて僕と似た境遇で悩み苦しみを共有し互いを支えとして日々寄り添い過ごせる様な…
その時 世界がゆらいだ…
目の前!テレビの画像が砂嵐になったかと思うと居間に稲妻に似た閃光が走り、周りのあるべき世界を押しのけながら光の無い球状の空間が現れる。
何だこれ?
もしかしてヨウキが現れる時に開くゲートって奴か?
大変だ!110番!
その中から見た事の無い真っ青な服に身を包んだ人影が…
やばい!やばい!やばい!
ヒト型ってヨウキの中でも結構強い奴だったはず…僕じゃ無理!戦えない!
台所まで撤退し退路が無い…迂闊だった…庭に逃げれば良かった…
人影の頭が僕の方を向く…。
!!!!!!!!!
そして二三歩よろけながらこちらに歩き…
---―バタリ
ばたり?
…………と、音を立てて倒れてしまった。
な、何だこれは?何が起こった?
頭の中で状況を整理しつつ少しずつ距離を詰めながら人影を観察する…
人の姿をしていて…背丈は僕と同じくらいか…
ローブに似た被り物の下から覗くのは殆ど人間と変わらない。
全身タイツの様な着衣の上に革に似た光沢のプロテクター…
そして…結構大きな……‼って
女の子?
そう思った瞬間警戒心が吹き飛んでしまったのは自分でもどうかと思う。
何も考えず被り物を取り払うとその下にあったのは
斬り揃えられた美しい髪を持ちその顔に愛らしいと美しいを同居させた…
多分僕と同じくらいの年頃の女の子だった… な、何だこれは?何が起こった?
頭の中で状況を整理しつつ少しずつ距離を詰めながら人影を観察する…
人の姿をしていて…背丈は僕と同じくらいか…
ローブに似た被り物の下から覗くのは殆ど人間と変わらない。
全身タイツの様な着衣の上に革に似た光沢のプロテクター…
そして…結構大きな……‼って
女の子?
そう思った瞬間警戒心が吹き飛んでしまったのは自分でもどうかと思う。
何も考えず被り物を取り払うとその下にあったのは
斬り揃えられた美しい髪を持ちその顔に愛らしいと美しいを同居させた…
多分僕と同じくらいの年頃の女の子だった…
なんて言うか…失礼なのではと言う気持ちは何処かに吹っ飛んで
男として色々と吸い寄せられてしまう…
白い肌…細い手足…そしてその手に握られた剣……‼
剣?……
ちょっと待ってこの剣!見覚えが…‼
間違い無い!義父さんの…三年前に行方不明になった義父さんの神剣だ!
「君!しっかりして!」
この娘が義父さんの事を知っているかも!そう思うと自分を抑えられない。
そうしていいのか?ダメなのか?も考える余裕もなく
僕は彼女の体をゆすりながら必死に呼びかけた…やがて…。
「う…………ん?」
彼女は薄く目を開け…焦点の合わない瞳で僕の方を見つめる。
「良かった…気付いてくれたんだ…。」
ああ良かった……と思う間もなく
ドン!
僕は台所の壁まで突き飛ばされた…
いたたたたたた
痛む頭を撫でさすりながらもう一度彼女の方に目を向ける…
…もう、何をするんだ……?
「…………………」
身を縮め反対側の壁に背中を押し付けこちらを睨み付ける彼女…。
怯えているのか?
「…………………」
その黒い瞳に涙を浮かべ、絶対に離すまいとその両手にしっかり剣を抱きしめている。
「ねえ……。」
「!」
僕が一歩近づくと彼女は剣を抜こうとその両手に力を込める。
チャキ…
‼‼
チャキ…チャキ…
一瞬もしやと思ったがその剣と鞘は固く結ばれたまま抜ける気配が無い。
「無理だよ…その剣は君には抜けないから。」
そう、神剣はそれ自体によって選ばれた適合者でなければその鞘から抜く事は出来ない。
「!!!!!!」
半べそになりながらそれでも剣を抜こうと彼女は全身に力を込める…その時…
ぐうううううううううううううう……
「?」
「!」
それは彼女のお腹の虫からの…
お取込み中すみませんがちょっと何か食べさせてくれませんか?
という呼びかけであった。
同じプロットと同じプロローグから生まれたもう一本の作品です。
旧作をcopilotで解析し『読みにくい』『設定語りが多い』『展開が遅い』『キャッチーじゃ無い』と判定されたため倫道館高校所属~を書きました。
しかし『キャッチーさの不足』が改善しきれていなかったのでじゃあいっそいきなりヒロイン出してみるか?と書いてみた物です。
切る所がいまいちだったので修正しました
両方を何度かずつ書き直しcopilotに編集者目線で採点させ現段階でこっちの方が完成度が高い(義妹~は必要な要素を二話で満たしているが倫道館高校所属~は要素を満たすまでにさらに文字数がかかっている)と判定されたためこっちも投稿します。




