空白-17
「伊藤くんって、ぶっちゃけどれぐらい稼いでるの?」女、確か三浦とかいう名前だった。酔った三浦が体をこちらに寄せてくる。だらしなく開いたシャツの胸元から、水色のブラジャーが見えている。
木下さんがセッティングした、派遣会社の女たちとの合コンだ。プチ芸能人たちが来ると木下さんから聞いていたが、話の通り容姿の整った子たちがきた。この三浦もドラマに出たことがあるらしい。
「こいつは将来有望、この年で1本乗ってるから」木下さんは、胸にもたれかかった女の方に手を回している。
「え、すごーい」三浦が大袈裟なリアクションを取る。僕は笑みを浮かべ、それを冷めた目で見た。今日は酒があまり回らない。
「木下さんには敵いませんよ」
「もっと褒めてくれ」
「心の底から尊敬してます」
「かわいい部下だろ?」木下は胸にもたれている女に言った。女は酔った顔で、だらしのない笑みを見せた。
僕は隣の三浦に向き直った。綺麗な顔をしている。僕は今日、三浦と寝る。このレベルの女と寝れる男が、一体どれだけいると言うのだろうか。
ほとんどの男が端末を片手に、その欲望を消化する。彼らは何の努力もせず、言い訳を並べ、ただひたすら現実を逃避する。動画を垂れ流し、SNSの画面をスクロールし、時間を消化する。誘惑に逃げ、だらしがなく、他人のせいにする。政治家が悪く、親が悪く、上司が悪い。国が悪く、法律が悪く、中国が悪く、アメリカが悪い。主語が大きく、群れて人を攻撃する。
三浦のような女を抱くとき、僕は性的興奮よりもそんな彼らに対しての優越感を覚える。自分の人生は間違っていなかったことの証明に、彼らを利用する。表面だけを完璧に作り上げた人生の充実感を、自分自身に向けてアピールする。僕の道は間違っていなかったと。僕を見ろ。外見も、年収も、女も、僕が掴み取ってきたものだ。みんなが欲しがるものを僕は掴んだ。努力して努力して、掴み取ったのだ。言い訳をせず、ただひたすら行動をすることで、誰もが憧れる生活を手にしているのだ。僕は、成功者だ。




