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《世界崩壊カウントダウン》通信断絶、物流停止――その日、日常は静かに死んだ  作者: リン・モ


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第一章:崩壊のカウントダウン

2027年6月17日、22時50分。


スマートフォンが、突然、血のような赤に染まった。


「地震波到達まで――3分50秒」


マグニチュード9.7。


「……は?」


ユ・モランの喉から、かすれた声が漏れた。


甲高い警報音が、神経を抉るように鳴り続けている。


「洗濯物、取り込んだ?その音、何なの?」


寝室へ向かおうとしていたリ・ジーシーが、不機嫌そうに振り返る。


その視線が、ユ・モランの顔に触れた瞬間、止まった。


血の気の引いた顔。


震える手。


異様な赤に染まった画面。


「……来るぞ」


「え?」


「来る!!こっち来い!!」


ユ・モランは叫び、彼女の手首を乱暴に掴んだ。


カウントダウンが、狂ったように跳ねる。


2分18秒。

1分59秒。


表示が、あり得ない速度で前後する。


時間そのものが壊れているようだった。


「地震?ここで?なんで――」


「いいから来い!!ベッドの横だ!」


ユ・モランはキッチンへ飛び込んだ。


水を――とにかく水を。


頭の中はぐちゃぐちゃで、いつもそこにあるはずの箱が見つからない。


「くそっ……!」


キャビネットを蹴り飛ばす。


その衝撃で、隅に転がっていた段ボールに足が当たった。


半分だけ残ったミネラルウォーター。


彼はそれを掴み上げようとして――


滑った。


「っ……!」


箱が足の甲に落ちる。


鈍い痛みが走るが、構っていられない。


そのまま床を引きずり、寝室へ戻る。


シャオユイはまだ眠っていた。


小さな身体が、布団にくるまれている。


「起きろ!シャオユイ!」


リ・ジーシーはすでにベッドに駆け寄り、子供を抱きしめていた。


ユ・モランは水をベッドの下へ押し込み、そのまま身体を滑り込ませる。


背中で、外側を塞ぐように。


「大丈夫だ……この建物は……」


自分に言い聞かせるように呟く。


カウントダウンが、00:43で止まった。


動かない。


次の瞬間。


すべてが、静かになった。


――来る。


最初に来たのは、音だった。


低い、低い唸り。


地面の奥底から這い上がり、コンクリートを伝って、骨の芯に入り込んでくる。


「……っ」


歯が、震える。


次の瞬間。


床が――落ちた。


心臓が喉元まで跳ね上がる。


一瞬の無重力。


そして。


横方向へ、引き裂かれる。


建物全体が、ゆっくりと揺れ始めた。


まるで巨大な何かに掴まれ、振り回されているかのように。


クローゼットの扉が弾け飛ぶ。


中の衣類が崩れ落ちる。


天井の照明が激しく揺れ、ぶつかり合う音が耳を裂く。


「いやあああ!!」


シャオユイが目を覚まし、叫ぶ。


その声を、リ・ジーシーが必死に抱き込んで押し殺す。


違う。


これは、普通の地震じゃない。


揺れは長い。


重い。


そして――どこか“遠く”から来ている。


まるで、何か巨大なものが大地を叩きつけ、その衝撃が何百キロも伝わってきているかのように。


壁の写真立てが落ち、床で砕けた。


時間の感覚が崩れていく。


一秒が、永遠のように引き伸ばされる。


吐き気。


眩暈。


上下左右の感覚が消える。


やがて。


揺れは、ゆっくりと弱まっていった。


痙攣のような余震を残しながら。


静寂。


その直後。


外で、車の防犯アラームが一斉に鳴り始めた。


バラバラに、狂ったように。


まるで獣の群れが吠えているようだった。


ユ・モランは荒く息を吐いた。


指は固まって動かない。


どうにか力を抜き、ベッドの端から這い出る。


部屋は、めちゃくちゃだった。


壁に手をつきながら立ち上がる。


スイッチを押す。


光は、点かない。


「……停電だ」


スマートフォンを確認する。


信号は、ない。


圏外ですらない。


灰色の“禁止マーク”。


画面の動きも、異様に遅い。


ユ・モランは窓に近づく。


ゆっくりと、カーテンをめくる。


外は――


完全な闇だった。


街全体が、電源を抜かれたように沈んでいる。


遠くに、わずかな車のライト。


それだけ。


だが。


東南の空だけが――


異様だった。


低く垂れ込めた雲。


その下が、鈍く赤く染まっている。


まるで、空の向こうで何かが燃えているかのように。


ユ・モランは、言葉を失った。


世界が、静かに壊れ始めていた。

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