8.没入(更新中)
お待たせいたしました……!、もっと早くお届けできたら良かったのですが、まず序盤だけ公開という形で。
今回は出だしだけ、という感じですが、下記かがった部分を逐次更新という形で追加していきますので、もうしばらくお待ち下されー
※(改)とある場合のほとんどは、誤字脱字、読み難さ部分の修正です。内容に影響のある変更が行われた場合は、ここに加えて、活動記録などでも報告します。投稿後、一週間ほどは、誤字脱字、読みやすさ等の修正が多く発生しますが、内容の変更はほぼありませんので、ご安心下さい。
深い森…その薄暗い闇、足を踏み入れるのも困難な濃密な下草を割くように、なだらかにうねりながら続く一本の道。
その長い道を走る二人。
前を走る一人は、奇妙な青い鎧を纏った少女。
長いスカートのような草摺、脇楯。肩当。
首当はごく小さく、上腕は、上着がほぼむき出し。
一方、肘当、腕当、手甲は、不似合いに大きく無骨だ。
足の方も似たようなもので、腿当は無く、ズボンと思しき布地そのままだが、膝当、臑当、鉄靴はガッシリと作られている。
兜はなく、額に大きく目立つ装飾のついた金属の輪を被っているだけ。
背中には、ひどく不似合いな巨大な大剣と長弓、そして矢筒。
それなりに長い亜麻色の髪をひっつめて、後ろにまとめている。
後ろの一人は、地味で動きやすそうな短パンと半袖の、やはり少女。髪の毛は黒く短く、幅広の腰紐には、幾つかの袋や小刀がぶら下げている。
さほど大きくはないが、奇妙な紋様の入った、腕当を兼ねた手甲と、似たような文様の入った臑当。鉄靴ではなく、革を鉄で補強した靴。鎧は着ていない。
軽装だが、背中には大荷物を背負い、右手には複雑で大仰な、少女の背丈ほどもある地杖を肩に担ぐように持っている。
杖の全体は螺旋状の文様が覆われ、冠部分は、先端近くにある輝く宝石のようなものを、抱えるように折れ曲がっている。
二人は森の中の一本道を走り抜け、広場へとたどり着く。
と、巨大な梵鐘…あるいは鬨の声のような音が響き渡たる。地面が細かく揺さぶられ、森の中から、驚いた鳥や小動物たちが飛び出し、飛び去っていく。
「げげ、攻性陣…!」
鎧の少女が、周囲を見渡しながら呟く。ぶっきーの声。
「回避できたと思ったのになぁ!」
後ろに立っていた少女も、肩から外した杖を、両手で構えながらため息交じりに言う。おーちゃんの声だ
かすかな地鳴りは、やがて地響きとなり、そして土煙とともに、広場の周囲に城壁が迫り上がる。
城壁は、二人を閉じ込め、なおも天に伸び続ける。
だが、二人はそれに驚く様子もない。
「ここらへんの攻性巨獣って、何だっけ!?」
前に立っていた、鎧の少女、振り向きもせず訊く。
「えっと、ヴァーガスかギメス!、だと思う!」
杖の少女が答える。
「うわー」
嫌そうな声を出した、鎧の少女は、背中の大剣を軽々と引き抜き、両手で構えて、身構えた。
城壁に囲まれた広場の中心に、青白い魔法陣が現れる。
その魔法陣から、空に向かって一直線に光が迸る。
魔法陣は、かなりの速さで巨大化する。それに追従するように、天に伸びた光が輝く壁となって外側に広がっていく。
二人は、迫る光の壁を避けて後退し、城壁近くまで距離を取る。
と、巨大化した魔法陣の中から、巨大な影が放り出されるように飛び出す。
役割を終えた魔法陣と光の壁は、輝く破片となって飛び散り消え…そして、黒い巨大な影が地響きとともに降り立った。
全体が黒く霞み、その姿は定かではない。が、しかしその姿は見上げるほどに大きい。
おそらくは10メートル近くはあるだろう。
どこまでが体なのか、霞んだ姿ではあるが、歯を剥き牙が顕になった口と狂気に満ちた目だけははっきりと見え、胸にある縦長の宝石のような部分が、不規則に明滅している。
その黒い巨大な狼を見た二人は、心底うんざりした声を出す。
「シュヴァルツヴォルフううう?!」
「…イヤなレア出たー…」
シュヴァルツヴォルフは、突然上半身を振り上げ、天に向かって咆哮を上げる。
伽藍の中で鳴り響くように低く長く響き渡る、狼の咆哮。打ち鳴らされる鐘の音のようにも、遠くから聞こえる霧笛のようにも聞こえる。
その咆哮とともに、周囲の視界が歪み、色彩が滲み、光の粒が虹色に輝きながら乱れ飛んだ。
「うわわわわ?!」
「にぎゃー?!」
咆哮を浴びた途端、二人の頭上に青いゲージが浮かび上がった。
ゲージの色は変わらないが、1/4ほど減る。
「いきなり『混沌の咆哮』って、ひどー!」
半分怒ったように、杖を構えた杖の少女が言う。
「混沌耐性あったけどさぁ!」
鎧の少女は、構えた剣の切っ先を、真っ黒でボヤけ、体のハッキリ見えない狼に向け、それから、大声で叫ぶ。
「バフバフバフ!」
「あ!、ごめん」
杖の少女は、片手で懐から魔導書を取り出し、加速、元素耐性、防御力攻撃力増強、回避強化といった呪文を次々と詠唱する。
詠唱のたびに、二人の体は様々な色に輝き、光の粒に包まれる。
杖の少女が一通り強化呪文を唱え終わると、鎧の少女は、剣を下段に構え直て、シュヴァルツヴォルフの方に突っ込んでいく。
「え?、近接で?!」
杖の少女が、驚いて杖を構え、大きく振り回し、「強=多=追尾=雷撃=爆発」のエレメントを詠唱する。
その杖の軌道に沿って、次々と光の矢が撃ち放たれる。鎧の少女が攻撃しやすくするための牽制だ。
光の矢は、落雷のように鋭角に軌道を変化させ、シュヴァルツヴォルフの頭に突き進む。
が、闇の狼は、その巨体に似合わぬ俊敏さで、横っ飛びに飛び回避する。しかし光の矢も、一瞬前まで頭のあった場所から、さらに軌道を変え、追いすがる。
と、いつの間にか、シュヴァルツヴォルフの足元まで走り着いた鎧の少女が、両手で構えた剣を正面に突き出し、跳躍する。
「やッ!」
狙うは胸の輝く宝石。
シュヴァルツヴォルフも、それに気づき、さらに飛び去ろうと上半身を持ち上げる、が、その瞬間、側頭に少女が放った光の矢が次々と突き刺さる…が半数は貫通し、城壁に激突して火花を散らし爆発する。
しかし、残りの半数は、狼の頭の中で炸裂、シュヴァルツヴォルフは咆哮…いや、絶叫する。
次の瞬間、鎧の少女の剣の切っ先は、違いなく胸の宝石を砕き貫く…はずだった、が、運悪く闇の狼はバランスを崩し、ほんの少しだけ切っ先がズレる…剣は宝石を掠め、破片が飛び散るほどに削りはしたものの、砕くには至らない。
闇の狼は、宝石を削られた痛みで、更に絶叫し、バランスを崩したまま、それでも飛び下がり、城壁に激突し、もたれ掛かる。
「惜しー!!」
杖の少女が、悔しそうに叫ぶ。
「仕方ない!」
鎧の少女は、走り逃げながら大剣を振りあげ、背中に背負った鞘にストンと収めると、代わりに、宝石が埋め込まれ、複雑な文様の刻まれた、大きな長弓を取り出し構える。
「属性付与が、あったら良かったんだけどなぁ…!」
矢をつがえながら呟くように言う。
「ほんッと…削り倒すのめんどいー!!」
少女が放った矢で、胸の宝石をさらに削り取られたシュヴァルツヴォルフは、痛みと怒りで再び咆哮をあげる。
鎧の少女と杖の少女は、既にそれぞれ弓と杖を持ちながら走り出している。数秒もしない間に、二人の居た場所が、シュヴァルツヴォルフの吠え放った瘴炎で焼き尽くされた。
「四元素攻撃だけな分、マシかなー」
ジグザグに走りながら、杖の少女がつぶやく。
城壁の中を逃げる二人をじっと目で追い続けたシュヴァルツヴォルフは、そして、空を見上げ、ひときわ響く遠吠えをあげる。
巨大な狼の喉から響き渡るそれは、やはり、音というよりは、地震のそれに近く、そして霧笛のように低く長く響き渡る。
その遠吠えとともに、地面に落ちた、木々や草、城壁、様々なものの影の中から、何かが次々と陽炎のように揺らめき、立ち上がり、人ほどもある狼の形をなしていく。
「わわわわわ!、雑魚雑魚雑魚ー!!」
杖の少女の声に、前を走る鎧の少女が、足を止め振り返って叫ぶ。
「任せて!」
鎧の少女は矢筒から、一度に数本の矢を取り出す。
その矢を、器用に一本づつ指と指の間に挟み、つがえて、何か呪文を呟く。
と、鏃が青白く輝き始めた。
影から浮かび現れた漆黒の狼たちは、その間に、二人との距離を縮めつづける。慎重に、警戒しつつ。
「ッ!」
鎧の少女に、引き絞るだけ引き絞られた弦が、指の戒めから開放される。
弦は、何本もの矢を跳ね飛ばして宙に放つ。
輝く鏃を頂いた矢は、一直線には飛ばず、うねるように空気を切り裂いて進む。
矢に気がついた狼達は、それまでの歩みを止めて、一斉に散る。が、矢はその狼達を追って滑り、次々と狼達を貫いた。
狼達は、地に倒れ伏し、現れた時同様、揺らめき、影となって消える。
狼の群れの消えた直後…城壁に囲まれた森の奥の方から、一匹の金色の狼が現れた。
影から現れた狼達よりさらに一回り大きい。頭から足までは多分鎧の少女よりも高い…馬と言ってよいほどの大きさだ。
その金狼は、近寄らず距離ち姿勢を低く保ったまま、じっとこちらの様子を伺っている。
「何あれ?!」
鎧の少女が訝しむ。矢筒に手をおき、すぐに次の矢をつがえられる姿勢のまま、警戒を解かない。
「レアかな!?、分かんないけど、先にあっち!」
杖の少女が応える。
鎧の少女が雑魚を一掃して得た貴重な時間で、魔力を集中させ、周囲を照らすほどに輝く杖の頭をシュヴァルツヴォルフに向ける。
シュワルツヴォルフも、すでに体勢を立て直し、赤く燃え上がるが如くギラつく瞳で二人を睨めつけて、牙を剥く。
そして、また仰ぐように頭を天に向け…地響きにも似た、低く響き渡る遠吠えをあげた。
周囲の木々も城壁も、地面までもが、身悶えするかのように揺れ、叩きつけるような衝撃波が幾度も二人の体を駆け抜ける。
それまで二人を包んでいた光のきらめきが、風で飛ばされるように…剥ぎ取られるように消え去る。
「デバフー!」
鎧の少女が叫ぶ。
闇の狼の方に、ピタリと杖を向けたままの杖の少女が叫ぶ。
「掛け直しは後!、援護お願い!」
それを聞いた鎧の少女は、矢筒から手を外し、背中の大剣を再度引き抜いて、両手で構える。
「頼むね!!」
シュヴァルツヴォルフも、二人に向け、牙を向き、突っ込んでくる。
下段に構え、姿勢を低くした鎧の少女は、まだ動かない。
斬りかかるには、距離がありすぎるし、無策で斬りかかれば、闇の狼に回避されてしまう。
重心をさらに低くし、走り出した狼を待ち構える…十分に引き付けなければ…
「!…あっ?!」
二人が同時に声を上げた。
突然、金色の狼が視界の外から飛び出し、闇の狼の喉元に食らいついたのだ。
二人に飛びかかる直前、しかも予期せざる方向からの攻撃を受け、シュヴァルツヴォルフはバランスを崩し転倒する。
「属性衝突!?」
杖の少女が驚いて叫ぶ。
「あの金の狼、ライトかローなのかな?!、ニュートラル?!」
大剣を構えたまま、鎧の少女が訝しむ。
「わっかんないけど、大チャーンス!!」
杖の少女は、魔力を限界までチャージした杖をシュヴァルツヴォルフに向け、さらに、集中して、クリティカルの術を重ねがけする。
余程の余裕がなければ出来ない…モンスターに追い回されながら戦わなければならない普段のプレイならまず不可能な、大盤振る舞いだ。
シュヴァルツヴォルフの喉に食らいついた金狼は、振り回されながらも、その霞んだ体に牙を食い込ませる。
呻きをあげて苦しむ闇の狼は、やがて城壁に突っ込むと、自分の頭もろとも、金狼を城壁に叩きつけた。
強力な魔法で形作られた城壁は、傷つくこともなく、一方の金狼は巨大な力で振り回され、城壁に叩きつけられ…何度かは耐えたものの、やがて闇の狼の首からずり落ちた。
身を翻えし、受け身を取ることもなく、力なく、そのままの姿勢で、地面に落ちる金狼。
「!」
杖の少女は、その機を逃さなかった。
「喰らええええええ!」
大きく杖を振り、溜めに溜めた魔力を開放する。
杖の先端から、シュヴァルツヴォルフの宝石に向かって、巨大な一直線の光の柱が現れる…
一閃。
闇の狼の霞んだ全身を、吹き飛ばすような輝きの塊。
鎧の少女は、思わず手をかざす。
一瞬だけ、シュヴァルツヴォルフの低い呻きのような咆哮が響き渡る、が、次の瞬間に胸元の宝石が砕け散る。咆哮は、突然途絶えた。
光の通り過ぎた後、自らをつなぎとめていた宝石を失い、闇の狼は、煙が空に昇り散って見えなくなるように、姿を失い、形を失い、そして消え去った。
「…!……よし!!」
杖の少女が思わずガッツポーズを取る。
「すっごーい!」
大剣を背中の鞘に収め、鎧の少女は感嘆の声をあげる。
「シュヴァルツヴォルフなんて、ここらへんだと、ほぼ最強だよ!?」
杖の少女は、構えていた杖を振って、脇に抱え直す。
「でも、このゲーム、やっぱ運要素強すぎるからー。今回、あの金狼が突っ込んで時間稼いでくれるなんて、予想してなかったし…」
「だよねぇ」
二人を取り囲んでいた城壁が、砂と化して崩れ…その砂は、崩れ落ちる間に光の粒となって、飛び散って消える。
と、二人の足元に魔法陣が現れ、地面から照らす。
頭上には今度は、緑のゲージが現れて、それが大きく満ち…溢れた途端、天上から爽やかな旋律が響いた。
「お!」杖の少女が頭上のゲージを見上げる。「一気に溜まったねー、無事倒せたら、レベルアップするとは思ったけど。」
足元の魔法陣が消えると、二人は、シュヴァルツヴォルフの居たあたりに歩き出す。
「ユニークアイテム落としてると良いなぁ。」
鎧の少女の言葉に、杖の少女が笑って応える。
「もー、それより、まず回復アイテムだよ!」
二人は顔を見合わせて笑った。
シュヴァルツヴォルフの落としたアイテムを回収し終えてみると、幾つかの未鑑定アイテムの他に、自分たちの回復に使っても、持ちきれない回復アイテムが余った。
宝石類も落ちていたが、無視した。
二人のレベルでは、ショップで買える範囲のアイテムで、装備を強化するのは、もう難しいし、街に戻るよりは、このまま探索を続けたほうが早い。
普通なら、持ちきれない回復アイテムも、そのまま放置するところだが、鎧の少女は、その一つを手に取った。
「持てなきゃ、どうしようもないよー」
杖の少女が、そう言うと、鎧の少女は、振り返って、壁のあったほうを見る。
そこには、シュヴァルツヴォルフに城壁に叩きつけられ、地面に落ちた金狼が居た。
息絶えては居ないが、瀕死なのは間違いない。
「まあ、すぐ近くだし」
そう言って、金狼のところまで走り寄ると、その傷だらけの体に回復アイテム…全快ポーションを掛けた。
金狼の全身が淡い金色の光に包まれ、頭上に浮かび上がった青いゲージが完全に回復する。
「え!?、大丈夫?!」
少し緊張し、心配している杖の少女。
二~三歩下がって距離を取りながら、鎧の少女は「今回のMVPみたいなもんだし、シュヴァルツヴォルフに噛み付いたくらいだから、こっち攻撃しては来ないでしょ。」そう言って言って走り戻った。
「さぁ!、落ち着いて鑑定できるところまで、行こっか!」
「おー!」
二人は、再び森の中の道を走り始めた。
(続)
ってなわけで、序盤のみですが、公開です………お待たせいたしました!
ちょっと毛色が違う?と思われるかもしれませんが、今回も最後までお付き合いいただければ幸いです。
前書きで描いたとおり、完成部分を逐次公開していきます。また、それに伴って、すでに公開した部分もちょっと修正はいるかも知れませんが、ご了承くだされー
次回はもう少し早くなんとか。




