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38(婚約編) リック〜side〜

1話ずつ毎日21時頃の更新予定です。

 少し前までは同じ学園に通っていたのに、大人びた姉上とその横に並ぶ頼もしい義理の兄上。


 学園の図書室で、二人が一緒にいるのを見かけたとき、私にはとても話しかけられる雰囲気ではなかった。黒い騎士服に長い赤毛が麗しい兄上は、首席で、かつ未来の騎士団長と称される戦闘能力の高さで有名だった。恐ろしくも崇高な先輩が、姉上を優しく慈しむように見つめる様は、彼の心を盗み見てしまったかのようで心苦しかった。そして、姉上の目にもまた、彼しか映っていなかった。誰も立ち入ることできない二人の世界…私の憧れだった。


 コール伯爵家のタウンハウスに、家族が集まった。兄上の結婚式の計画を聞いて、一番驚いていたのは姉上で、それを見て皆が笑う。兄上が嬉しそうに、姉上の頭を撫でながら「まだ禁止?」と聞き、姉上が「ずっとよ!」と答える、意味不明なやり取りを横目に、視線を外すとマリア嬢と目が合う。「ニカッ」っと豪快に笑った彼女に、反射的に笑顔を返す。しまった!と気付くも遅く、彼女の目は大きく開いている。


 私は、学園で笑う事をやめている。女生徒に笑いかけると、その後、豹変し、付きまとわれたり、待ち伏せされたり、閉じ込められたり、物を盗られたり、嫌がらせを受ける。マリア嬢は、学年が一つ下で面識が無かったので、油断した。




 晩餐は、見事な花々の咲く庭の池の畔で開かれた。


「皆様、本日は改めてありがとうございます。俺とミリィを、同じこの星空の下に出逢わせてくれた両親達に感謝いたします。そして愛するミリィが、俺を愛してくれた奇跡に…。乾杯!」


 兄上が挨拶し、美味しそうな食事が運ばれてくる。松明の火が、池の水面にゆらゆらと揺らめき、それを背に姉上と兄上が見つめ合い、微笑み合う姿は絵になった。


 食べ始めるが、どうしてもマリア嬢の視線が痛い。下を向き、勢いよくガツガツ食べる。母上に「行儀が悪いわよ。」と嗜められる。


「私、食欲のすごい殿方が好みです!学園のプリンスのリック様が、目の前で咀嚼しているなんて…マリア、幸せーっ!」

 いきなりマリア嬢が大きな声を出して、びっくりする。


「はぁ?ありがとうございます…。」

 無視できない状況が嘆かわしい。


「リック、学園のプリンスって?」

 姉上の質問に、皆の顔が一斉にこちらを向く。


「良く分からない…。」 


 マリア嬢が、今か今かと周りを伺っている。痺れを切らしたように、手を挙げた。


「はい!私が知ってます!王立学園では、熱血肉食の『キング』ことイブスタイン侯爵家嫡男のルイ様と、冷静沈着の『プリンス』ことルパルト伯爵家嫡男のリック様が、女子の人気を二分しています。リック様は静かなる獅子と言われ、女生徒にとっても冷たいんです。運良く笑顔を拝んだ女生徒が、恋に落ち、強行手段でリック様を得ようとしたことは一度や二度ではありません。…そのリック様が、目の前で食事をしているなんて…うぅ、マリア感動です!!」


 兄上の顔が引いている。そんな憐みの目を向ける前に、助けてくれ!兄上に懇願の目を送ると、「リック君は家族なんだから、そんな女生徒から守ってやらないと可哀想だぞ。」と余計なことを言われた。


「はい、今日から護衛してあげます!」

 これが俗に言う付きまといだ!勘弁してくれ。


「間に合ってます…。」


「遠慮しないで!!」

 私は、真面目に勉強し、堅実に卒業したいだけなのに…。兄上を、キッと睨む。そういう時に限って、兄上は姉上の方を見ていて気が付かない。私は諦めの境地で、星空を見上げる。はぁ…溜息が夏の風にかき消された。


ep.37修正しました。

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