二人の天才
小さい頃のワクワクを思い出しながら書いています。
ありきたりな野球小説です。
シュールな設定もありますが、どうかご容赦下さい。
鋭い金属音が鳴り響いた。
青く澄んだ雲ひとつない空に白いボールが飛んでいく。
自分に遥か上に飛んでいったボールはセンターとレフトの間、つまり左中間を抜けてどんどん飛んでいく。それを見たランナー達は走り出す。
響く歓声。
スタンドに入るボール。
六年生最後の大会はそこで終わった。
最後の最後でコントロールが乱れてしまった自分が情けない。
最終回2点リードの裏、2アウトの状況から9番バッターにセーフティーバントを決められた。
カウント2ストライク2ボールの場面でのそれは、セオリーという固定概念に侵食されていた自分には恐怖だった。
9番という油断。カウントという安心。
それらが産んだ心の隙間を的確に狙ったバントは一塁方面に華麗に決まる。
だがこのタイミングではまだ間に合った。
この距離なら自分が取って、ファーストに投げれば間に合う。
すぐさまボールに向かって走り出した。
ワンバウンドツーバウンド、そして転がりはじめるボール・・・
それを追う視界に何かが移りこんだ時には遅かった。
最悪のミスである。
ファーストとのお見合い。
この隙を逃さず9番投手の神藤守はヘッドスライディングを決める。
だが、ヘッドスライディングの必要はなかった。
この時やっと自分がボールをつかんだからである。
服の砂を落としながら立ち上がった神藤守。
ここまで5回を投げ続けた投手とは思えないほど疲れが見えない。
そして彼の目線の先には奴がいた。
三番キャッチャー、神崎祐也。
だが既に2アウト取っている。ここでアウトを取れば、奴に打順が回ることはない。
ここから勝利への興奮と敗北への恐怖が自分を狂わせていく。
2アウト、次を押さえれば自分達の勝ちである。
自分を落ち着かせて、冷静に、焦らず、大胆に・・・
ボールを投げた。
インハイを狙って投げた。カーブである。外角に抜ければ確実にストライクを取れる自信がある。
鈍い音が響いた。
デッドボールだった。
カーブの回転が甘くコントロールも乱れていた、その結果である。
ランナーが一二塁になる。あとワンアウト、それがどんどん遠ざかるように思える。
落ち着いて二塁ランナーを見る。
神藤守は自信に満ち溢れた表情だった。
自分達が追い詰められているはずだ。2アウトである、ここでアウトになれば負けになるのである。
そんな状況からスリーバントを恐れずセーフティーを仕掛けてきた彼も紛うことなき『天才』である。
そんな彼はまたもや奇抜な行動に出る。
会場の誰もが息を呑んだ。
思えばこの時に敗北は決まっていたのかもしれない、自分の精神力はズタズタであった。
凄まじい距離のリードを神藤守はとった。
塁間三分の一は出ていたのではないか。
だがなるべく気にせず投球に入る。
気にしていてはいけない、あとワンアウトなのだから。
腕を上げ足を上げたその時、視界の隅に悪戯な笑みを浮かべた彼が映った。
塁間の半分近くに繰り出す第2リード。
この時素直に投げればよかった。
焦りきって牽制しようとしてしまった。
審判の声が大きく響く。
「ボーク!!」
ランナー満塁になってしまった。チームメイトは満塁策だなんだと言ってくれた。
しかし次のバッターは神崎祐也だった。




