イケメンさんとフラグ落ち
「「「キャーーーーーー!」」」
「っ!」
とつぜん聞こえてきた大きな大きな声に、わたしはおもわずびくっとして夢の国からもどってきた。
...う~。せっかくいいゆめみてたのにぃ~。
トレジャーハンターになってお宝発見、ザックザク。ああ、なんてすてきなゆめ!...それなのに。
コノウラミ、ハタサナイデオクベキカ?
ちょこっとだけむっす~として声の聞こえてくるところを見てみれば、そこには廊下があふれかえるほど群れた女子女子女子。
なんだろ~。女の子がお花畑つくってる~。
きゃいきゃい高~い声で話しているけれど、だれかいるのかなぁ~?
考えてみると、少しだけわくわくしてくる。
よし、興味わいてきたっ。女子のなかにはだれだろな~♪っと。
ちいさい体で思いっきりのび~~ぃっってしてみるけど、群衆のまえには及ばない。
だから、ちっこいのはいやなのに~!
むぅ、こうなったら仕方がない。最終兵器じゃ、こんにゃろぉ~。
キョロキョロと辺りを見回してみれば...いた!
ちいさくガッツポーズをとって、目標物に向かって思いっきりダッシュ!
制服のローブがちょっとだけじゃまだけど、そんなの気にしないの。
ぎゅむっ、と目標物のおおきなからだに飛びつこうとすれば、おどろいた目標物...もとい、担任のダヤス先生がとっさに詠唱を口にした。
「風よ(ヴィント)!」
すると、どこからかぴゅーっと吹いてきた風がわたしを吹き上げて、天井すれすれにまで持ちあげた。
やった~、ねらいどおり~!
風のうえに座りながらなにかな~?って見てみると、やっぱり思った通り群れのなかにはふたりのひとがいて、そのひとたちを見てみればなぁんだ納得納得~。どうりで群れるはずだね~、って思うの。
ふだんめんどくさがりでぼっちなわたしが知ってるくらいには、そのふたりはと~っても有名なふたり組なんだ~。
まず、ひとり目ね。
銀色のきれいな髪に、神秘的な紫色のひとみ。
めもとがすこしだけきつめなのがいんしょうてきだけど、なんていうか...ものっすご~く色気たぁっぷりなひとみのひと。
侯爵家の長男であとつぎさん。名前は、メイスベルク-シュラーフ。わたしより2才年上の5学年の先輩さんだよ~。
でねでね、もうひとりはだれでもご存知。われらが第2王子様の、カイルリヒト-フォル-イゼス-リューゼクタ。
こちらも同じ5学年なの~。容姿は金髪碧眼であまぁいマスクの正統派王子様。
ふたりともA クラスで、リューゼクタ学園きっての魔法の才能をもつ天才さんだよ~。
すごいよね~。うんうん。たしかに成績優秀、家柄最高、容姿端麗の3拍子もそろっちゃえば群れるよね~。
にこやかに対応するふたりだけれど、やっぱりちょこっと離れろオーラが出てるよ~。疲れちゃうよね~。でもしかたない!どんまい、乙!
王子様たちにみんなが夢中でわたしに気づかないことをいいことに、くすくす笑って見ていると、いきなりあしがかりがすうっと消えた。
もちろんわたしはまっさかさま~。ひゃ~、ぶつかる~って、え?いたくないの~?なんでかな~?ってなんでだよね~。うん、でもほんとびっくり。そしてわたしなんでだろ~。いたくないね~。
目をひらいたまんまのわたしの目の前には、麗しき秀麗なお顔がおひとつ。
あ~れ~?
「わ~お。これは想定外なう。」
ぱちりぱちりとまばたきをすれば、わたしを横抱きにして受けとめたシュラーフ先輩がふっと軽く微笑んだ。
わお。いま何人たおれたのかな~?ばたんっておっきなおとがいろんなとこから聞こえてきたね~。
というよりいまのかお、ブロマイドにとって売っちゃいたいな~。
あまりの美しき微笑みに、少々邪推もふくみながら、いそいそとシュラーフ先輩の腕からおりてぺこりと頭をさげる。恨みはかいたくないもんね~。
「ありがとうございます~。おかげで助かりました~。」
いまやしぃ~んって静まり返っている廊下はとにかく居心地わるいよ~。と、いうよりも。この沈黙ってぜったいにわるいフラグたってるよね~、わぁあん。
とりあえず、では...。とことばを残してその場を去ろうとわたしは駆けぎみに歩きだした。
すると、ふっとかすかな風がわたしの耳元をかすめた。
ちいさすぎて他には届かないようなしんどうも、その風は届けてくれた。
『あとで覚えておくんだよ、ユース。』
わあ、こっわ~い。美声なだけにこっわ~い。ぶるぶる。
背筋にぴっきーんと走った悪寒ったらもう奥さん、ガクブルなのよ!そうなのよ!
さささっと歩くスピードをあげると、おどろいたように目をみひらいたダヤス先生を発見だ~!
おのれ、こやつめ~。
「先生、ちょいちょいplease your time~(じかんをください~)!」
急いでダヤス先生の首根っこをジャンプしてひっつかんでから。わたしは思いっきりたたたっと駆け出した。
廊下はいまだ静まり返っている。
うん、とりあえず言おう。
いったいなんでこうなったの~?
廊下を走るふたりの足音が、少々みょうなくらい大きく響いていった。