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枯れ葉  作者: 花染
4.戦争になっても
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24.心の花(5)

 ビオラは、夢を見た。白髪で、髭を生やした懐かしい男の人の夢。ビオラは、一目で夢だと解った。何故から彼は、既に死んでいるからだ。


「ビオラ。ビオラ。愛しい我が娘…ビオラ…」


 男は、そう言って崖から落ちて行った。ビオラは、走って手を伸ばすが届かず落ちていく彼を見て涙を流しながら叫んだ。


「パパっ!」


 ビオラは、起き上がり夢で見たモヤモヤした気持ちを押さえ込むようにうずくまった。


「大丈夫ですか?」


 見張り番をしていたミウは、驚いた顔でビオラを見た。青ざめた顔で、明らかに動揺している。これでは、心配するだろうと思ったビオラは、うずくまったまま答える事にした。


「大丈夫、だよ。少しだけ、怖い夢を見ただけだよ」

「そうですか。では、ホットミルクを今から作りますからちょっと待って下さい」

「ありがとう」


 ミウは、小さな鍋にヤギミルクを入れて温まった頃にチョコを入れて、混ぜていた。ふんわり甘い香りが漂ってきたころミウは、こう言った。


「怖い夢を見た時には、はちみつ入りのホットミルクの方が、落ち着くんですが、はちみつは、高いですからね。

 ホットチョコレートミルクですが、どーぞ」


 そう言ってマグカップに入ったホットチョコレートミルクを渡した。


「ボクとラルクがみんなに内緒で、見張り番の時に隠れて食べている物ですので、秘密ですよ」


 そう言ってにっこり微笑んだ。怖い夢では無い。怖くはなかった。あの夢は、何度も見ている夢。現実にあった夢。自分を縛る夢だ。


「ありがとう」


 そう言って、チョコレートミルクを飲んだ。懐かしい味が、ほんのり感じビオラは片目を抑えた。そんなビオラを見てミウは、一口だけチョコレートミルクを飲んで星空を見た。


「エルナは、ボクにいろんな事を教えてくれました。世界にいる魔物の名前や生態。何が食べれて何が食べれないとか、星は、何億と言う時をかけてこの世界に“此処いる”と存在を光で教えてくれているんだって事もボクに教えてくれました」


 その言葉を聞いてビオラは空を見た。満点な星空。ずっと俯いていたビオラは、久しぶりに見た星空に美しく輝き思わず見とれてしまった。


「ボクは、こうして星空を見ると、どうしてこんな小さな事で悩んでいたんだろ?って思うんです。

 あの輝いている星は、自分の命を燃やしてこうして存在アピールしてるんです。いつか燃え尽きてしまうこともわかっていても、もう既に燃え尽きている事さえ誰にも解らないのに生きた証を存在した証をこうして残しているんです。すごいですよね」


 そう言って、ミウは、空に手を伸ばした。


「…エルナがくれたものやコンバットがくれたものは、沢山あります。でもボクは、彼に恩返しも出来ず見殺しにしてしまいました。でも、彼らは、ボクを恨まず憎まず寧ろボクを誇りに思いボクを救うために死を選んだ。


 軽薄かもしれません。単純かもしれません。でも、ボクは、彼らが作ってくれた道を踏み外したく無いです。だからボクは、振り返っている暇があるなら前を向いて歩きたいです」


 ミウは、ビオラを見てそのまま手を出した。


「だからビオラ。ボクが出来ることは、なんでもします。悩み相談、過去のこと、未来のこと、楽しい事、悲しい事、なんでも話してください。勇気の精霊としてでは無くビオラとして友達として、なんでも話してください」


 ビオラは、ミウの言葉に戸惑った。ヘルを殺せばビオラは、死ぬ。存在も無かったことになる。ミウと友になると言う事は、彼女を再び悲しみの忘却の渦の中に閉じ込めてしまう。


 分かっている。でも誰かに分かって欲しい。忘れないで欲しい。自分が生きた証を存在の証を残したい。


 そんな思いからビオラは、ミウの手を握ろうとした。しかし、出来なかった。


「ごめんね。あたしは、君を巻き込みたく無い」


 父親のようにしてしまうのでは無いかと一瞬でも思ったビオラは、そう言ってホットチョコレートミルクを飲み干した。


「ミウちゃん。あたしが見張りを変わるから寝ても良いよ」

「でも…ビオラ、見張りを3日連続しています」

「大丈夫だよ。少し寝たし、それにあたしは、人では無いから精霊だから大丈夫、だよ」


 そう言って、微笑んだ。ビオラは、気づいていた。少しずつ人では無くなってきてる事に。もう、後には、戻れない事も気づいていた。


「分かりました。無理をしないで下さいね」


 そう言って、躊躇いながら諦めながらミウは、横になり寝ようとした。ビオラは、手を出してフーッと優しく息を吐いた。すると綺麗な花が手元に現れ甘い優しい香りが辺りに充満した。


 その香りは、ミウの眠気を誘い気づけば深い眠りについていた。


 ぐっすりと眠ったミウを見て、ビオラは花を折りたたむように手を握りしめてた。すると一瞬でその花は、消えた。


「ミウちゃん。君はすごいよ。凄すぎるよ。あたしは、まだ…


 生きた証…あたしは、あの星のように満足が出来る生き方をしてるのかな?あたしの生きた証ってなんだろ?」



 父親も母親も運命からも逃げてきた自分には、生きた証、生まれた証を示す権利は、あるのだろうか?


 これは、自分が犯した罪。人では無くなる事も父親の事も、存在を消される事も


 罪を犯した自分に友達を作る権利が、あるのだろうか?


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