12.優しい嘘(1)
ミウが湖の中へと入っていったのは、解った。ラルクは、混乱と戸惑いの中ヘルと呼ばれる女性は、どう見てもククだ。
しかし、彼女は、死んでいる。なら何故、死んでいる彼女がこうして目の前で立っているのか解らない。
ミウが攻撃をしたが、彼女は、無傷。いくら、アルルクが銃で撃ち抜いても無傷。ザックが不知火で、燃やしても、トラードが剣で切り裂いても、ビオラが蹴り飛ばしても、ヨモギがエンジェルリングで、真っ二つにしても、無傷。無傷、無傷、無傷、無傷。
ここで、ようやくラルクは、理解をした。彼女は、人ではないと。
「ビオラ、私をそんなので殺そうとしているのか?まー神器は、流石に効いたけど、暖かい程度、水浴び程度、涼しい程度の武器で殺せないって解っているだろ?」
「……やっぱり、精霊の剣が必要なんだな」
勝つすべは、精霊の剣のみ。しかし、まだ手にいれてない。すると、ヘルは、にっこり微笑み腰から真っ黒い剣が現れた。漆黒の剣。それを一振りすると、ままならないほどの魔力と風圧で、目を開けられずラルクは、剣を地面に突き刺し体を支えた。
風が止むと今まで、目の前で立っていたトラードたちは、倒れ傷だらけだ。
「…人は、弱いな。すぐ死ぬし、すぐ心も壊れる。すぐ嫌なことから逃げるし、忘れようとする。
同じ生き物なのに見た目や身分の違いから差別をする。本当に人は、弱い。
ラルクは、そう思わないか?」
そう言って、倒れている人たちを踏んで、ラルクの方へと向かった。ふとラルクは、ルリラナがいないと気が付き、辺りを見た。
「本当に貴方にとって大切な大切な人は、誰だろうな。“ラルク”」
その言葉を理解したのかラルクは、剣を取りだしヘルに向けた。
「ルリを何処にやしたんだ!ヘルっ!」
ヘルは、風圧を利用して、皆を攻撃をしルリラナを浚った。そして、彼女は、自分の正体を知っている。なのにわざとらしく白々しくバカにしように言うのは、ククではない。
「貴方なら解るはず…
でも、お嬢を助けに行くと、この世界は、どうなるだろうな。“戦争”もうすぐ始まる。眠り姫をまた悲しませる運命を辿るのか?」
そう言うとククは、その場から消えていった。消えたと言っても、明らかな魔法道具によるワープ式のものだ。
治癒魔法が使えないラルクは、自分の顔を叩き皆を回復道具で、治癒を始めた。そんなタイミングで、ミウとナムは、湖から戻ってきたために何が起きたのか解ら無いが何となく理解したのか無言で、ラルクを見た。
「…ミウ、怪我はないか?」
「あ、はい…元気モリモリです。あ…あの…ラルクこそ…大丈夫ですか?」
「ああ。皆の傷を治したら俺は、別行動をする。お前たちは、これから起きる戦争を止めてくれ」
戦争。予想は、していたが、ラルクの口から出るとは、思っては、居なかった。しかし、ラルクがこれから行こうとしているのは、きっとヘルがいる場所なのだろう。そう思ったミウは、目をそらした。
「相手は、ヘルです。精霊の剣がなくては、殺すことが出来ません。それでも、一人で、行くのですか?」
「ああ。ビオラには、悪いが俺にもとっておきの切り札があるからな。俺にしか出来ない凄い技なんだぜ」
皆の傷を癒し終えたラルクは、そう言って、にっこり微笑み立ち上がった。切り札。ラルクしか出来ない切り札。龍王ザルクルフにしか出来ない凄い技。
その技をミウは、知らない。だって、彼女は、マリカの生まれ変わりではないからだ。ビオラだったら知っているのだろう。ルリラナやトラードだったら察して、止めるだろう。今は、彼が何をしようとしているのか、解らないミウは、あまりにも綺麗な笑顔を見て、何も言えなかった。
ラルクが立ち去ったのを黙って見ることしかなかった。
「ジュラン。友を殺して言い訳がニャいっ!君が出来るのは、友を止めることしかニャいっ!ジュランも解っているはずっ!今、ニャにをすべきか解っているはず!」
ナムが言っていることは、正しい。そのぐらいミウだって解っている。しかし、それをすることによって、戦争は、どうなるのだろうか?ミコトは?ヨモギは?
ルリラナを皆で助けると戦争は、始まる。戦争を止めようとするとルリラナが危ない。
「そうだけど…簡単に答えを言えないよ…どちらも大切で、守らないとダメなんだよ」
ヨモギの弟が持っているザルクルフの目を取り除く事が出来るのは、ミウだけだ。ラルクのところへ向かうと言うことは、約束を破ると言うことになる。
ラルクもルリラナも大切な人だ。でもこの世界も大切だ。
「…解ったよ。ニャムが行くよ。ジュランのためにジュランのニャかまを…友を守るよ」
そう言って、ナムは、走ってラルクのところへ向かった。走って走ってようやくナムは、ラルクに追い付き目の前にたった。
「ニャムを連れていけ!小僧!」
ナムは、決めポーズをしながらそう言った。それを見たラルクは、驚いた顔をした。
「ニャに?ニャム、ニャにかおかしニャことした?そんニャ、変ニャ顔をして…」
「猫が喋ってる…」
「そっからか。ニャムのニャ前は、ニャム。猫の妖精であり猫の王ケット・シー!お見知りおきを」
ラルクは、首をかしげナムを抱きモフモフ感を味わった後に下ろし肉球を触った。
「……モフモフ…そして、肉球プニプニだな」
「こいつ相当バカみたいだニャ…」
ラルクは、初めてバカだと言われて、我に帰ったのか真面目な顔に戻り真剣な顔でナムを見た。
「“な”が“ニャ”になるみたいだから…お前は、“ナム”って言いたいだな。よしよし、俺の名前は、ナルナニミクナ・ナナサクナだ。はい。リピート」
「ニャルニャニミクニャ・ニャニャサクニャ…
って、わざとニャムにそんなこと言わそうとしているニャ!?酷い!小僧のニャ前ぐらい知っているのにーっ!」
ラルクは、笑いながら空を見て考えた。そして、気持ちも落ち着いた頃後ろを振り向いた。
「アディー。居るんだろ?」
すると木の影からアディーが現れた。ナムは、アディーの気配は、感じなかった。綺麗な金色の髪。ナムは、初めてやっとこれが噂の“金色の獅子”だと解った。
「金色の獅子!と言うことは…ええ!?小僧は、“ザルクルフ”!?」
「……」
アディーは、首をかしげナムの頭をなで、肉球を触った。
「モフモフ…プニプニ」
「お前も相当バカみたいだニャ」




