10.変わらぬ思い(4)
忘却の湖を見ながらサラは、辺りを見ていた。近くにコンバットは、居ない。変わりにザンロッタとコートを着た人。サラは、座り込み歌を歌った。
「キラキラ光る…夜空の星よ…」
コンバットが好きな歌。星。夜に輝く無数の光。しかし、此処には、コンバットは、居ない。サラは、足りない感情で、少しだけ悲しいと感じた。
すると扉が開く音が聞こえ振り向くとララとアルルクが立っていた。
「ご機嫌よ。ザンロッタ様。大変なことになったから言うね。ほら、アルルク」
「…結界が先ほど解除されたようです」
それを聞いたザンロッタは、にっこり微笑んだ。それは、不気味な笑み。何かを企んでいるような微笑み。それを見たララも微笑んだ。
「ララちゃん。その笑顔大好きだよ!」
「ありがとう。ララ。なら君にしか出来ない仕事を頼んでも良いか?」
そう言って、耳元で何か囁いた。それを見たアルルクは、嫌な予感がしたが何も出来ない。
何故なら彼は、ザンロッタとの約束とそれを守る条件があるからだ。その条件は“人形である彼女を守る”と“忠実に確実に正確に従う”それが出来なかったら、守れなかったら、裏切ったら
“アルルクにとっての大切なものが失うだろう”
アルルクにとっての大切なもの。地位や権力や信頼よりも大切なもの。大切な物。大切な者。大切な人。
アルルクは、それを失うなら地位も権力も信頼も全て投げ捨てて、ザンロッタに従うことを選んだ。ララを守ることを選んだ。心を捨てる事にした。
「アルルク。何時もララを守ってくれて、ありがとう。
もう、十分彼女を守ってくれたから君を解放する」
ザンロッタがにっこり微笑みながら彼に言った。そして、ララとサラを両手に掴み黒いローブを着た者の近くへと向かった。
「だから、これからすることを恨まないよな?」
そう言って、黒ローブ以外の3人は、消えていった。消えたと言っても正確には、ワープ魔法で何処かへ転送した。アルルクは、考えた。すると、黒コートの者は、後ろの扉を指した。振り向いた瞬間、扉が開きそこには、ラルクたちが立っていた。
「アルルク!?どうしてお前が此処にいるんだ?」
アルルクを見て、一番に驚いたのは、ヨモギだ。アルルクは、目をそらし銃を黒ローブの者に向けた。すると、深々と被っていたフードを脱ぎラルクたちを見た。
緑色の若葉色の髪をした女性。ルリラナは、その顔を見て、顔を真っ青に変えた。
「久しいな」
この声もあの顔もルリラナは、知っている。そして、誰よりもラルクは、知っている。ルリラナは、ラルクを見た。
ラルクもまた顔色が悪い。そして、目が泳いでいる。
「……クク・エルメル・ルース…」
ラルクは、呟くと頭を抱えた。頭が痛い。苦しい。そして、ラルクは、思い出した。目の前にいるのは、10年前ある罪で、公開処刑された罪人であり師範でもあり母親が代わりでもある大切な人物。
そして彼女は、死の女神ヘルであることを彼は、ようやく思い出したのだ。
「ラルク、ルリラナ。大きくなったな」
心配そうなそぶりを見せた瞬間ビオラは、皆の前に立ち睨み付けた。
「近寄らないで!ヘル!」
今まで見たことがない顔で、威嚇し刺々しい殺気で、今でも殴りかかりそうな勢いを押さえながらビオラは、そう言った。
「君がどんな姿をしてようが、どんな声をしていようがあたしの目は、君を間違ったりしない」
ヘルが憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。間違わない。憎き死の女神ヘルを間違わない。しかし、この感情は、間違っている。憎めば、憎むほど彼女の思い通りになる。
かつて、謝ってアストを殺した時のようになる。我が父が死んだときにのようになる。そんなことを解っているビオラだが、彼女を憎まずにいられないのだ。
後ろで、吐きそうな思いで立っているラルクにも気が付かずに初めて自分の感情を優先した。するとビオラの目から血が流れ出した。それに輝が付いたアルルクは、この状況がかなりヤバイと理解した。
「お前らは、下がっていろ」
そう言って、アルルクは、ビオラの前にたった。
「隙を作る。お前らは、此処から逃げろ」
「そしたらお前さんは、どうなるんだ!?ミコトは、どうなるんだよ!!」
その一言で、ルリラナは、理解した。アルルクは、サンが言っていたミコトの婚約者。王となる筈の者。
「ミリアには、サンがいる。彼奴なら幸せにしてくれる筈だ。それに私は、ミリアを見捨てた身だ。彼女に会わす顔がないしな」
「違うわ。アルルク。ミコトは、あんたの帰りを待っているの。あんたが帰ってくるのを信じて、ずっと待っているのよっ!だから、あんたも此処から逃げなさいっ!」
そう言って、弓矢を構えた。それを見たトラードは、頷き剣を取り出しザック、ミウと武器を取り出した。
「ビオラ、もう一人で戦っていた昔とは、違います。君には、仲間が居ます。だから我を忘れないで下さい。
それよりもアルルク。コンバットは、何処に居るんですか?」
「あの湖の中だ」
湖の中。忘却の海の中。それを聞いて、目を見開いた。
その理由をミウは、よく知っているからだ。
「水月!」
ミウは、ヘルに向け攻撃をした。ヘルは、難なりと交わしたがその隙にミウは、走って湖の中へと飛び込んだ。
コンバット。コンバット。大切な大切な初めてのお友だち。親友。
ミウは、必死に探した。しかし、奥に行けば行くほど薄暗くなり不安も大きくなる。
コンバットは、とっくに死んでいる。しかし、姿も形も声も同じ人。何故彼は、生きているのだろうか?そんなことを考えそして、解ったことがある。
ミウは、深呼吸をして、大きい声で叫んだ。
「ナム!何処にいるの!?出てきて!ナム!」
響く声で、透き通った声で、必死に呼び掛けた。“ナム”っと何度も何度も呼んだ。




