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枯れ葉  作者: 花染
4.戦争になっても
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25.2つの魂、1つの心(1)

 その頃、ルリラナは、と言うとあの変な夢を気にして、こっそり家に帰っていた。


「治癒魔法について、書いてある本は、確か地下にある書庫だったわね」


 ルリラナは、息を飲み地下へと降りてた。あの夢が何なのか。夢は、所詮夢だ。非現実的で、ありえない。しかし、時に意味がある時もある。


 ルリラナは、本棚に並べられた本を一冊づつ見て、やっと見つけた治癒魔法の本を手に取った。この本を手にするのは、2回目。初めて、治癒魔法を使った時だ。


「あの頃は、今使っている魔法だけしか解らなかったわね。今の私ならきっと…っ!」


 本を開き一行、一行読んでると精霊が現れた。その精霊は、かつてビオラから受け取った精霊。知られざる生命の精霊“エイム”だ。


「全て、理解し私の声も解るのですね?マスター」

「……」


 この本に書かれている事も、精霊の声も聞こえる。ルリラナは、最後のページを見ながらエイムに言った。


「思い出した。思い出したけれど…エイム…私…私…」


 ルリラナは、泣きそうな顔で、苦しそうな顔で

 エイムを見た。エイムは、優しく抱きしめて黙ったまま頭を撫でた。

 ルリラナは、解っていた。彼女が、答えを言わない事も自分がやるべきことも解っている。でも、しかしルリラナは、その答えを否定するしか出来ない。


 自分が何者か。それは、アストの魂を持つ者。自分がやるべき事。それは、肉体と魂を1つにする事。


「ルリラナ」


 優しくルリラナを呼ぶ声。この声は、知っている。ルリラナは、血の気が引き弓矢を取り出し強く握った。


「どうして、あんたがいるの?ヘル」

「酷いな。昔みたいにクク師範と言ってくれないのか?」


 クク・エルメル・ルース又の名をヘルだ。ヘルは、知っていた。ルリラナが、アストの魂を宿していること。ラルクが、アストの肉体だと言うことを。


 ヘルは、ルリラナの近くへ向かい顔を近づけた。


「私もお前もお互いに殺し合いが出来ないだろ?」

「何の用よ?」

「用がないと会ったらダメなのか?」


 ルリラナは、一歩下がり威嚇するようにヘルを睨みつけたが、そんなルリラナを嘲笑うかのように机に座った。


「1つ“物”に2つの魂は、入れない。貴女が、本当に“救いの女神アスト”になりたいなら肉体を持っている“物”の魂を消さないとな。“魂を消す”すなわちラルクを殺す。貴女は、出来る?」

「私は…っ!」


 出来ない。出来ない。好きになってしまったのが、間違いだった。知らなかったから、知ろうとしなかったから。ラルクが好きだ。好きだ。好きだ。でもルリラナは、ラルクを殺す事で、アストへとなれる。そうすれば、混沌へと成り果てた世界も元の姿へと戻る。


 争いも、殺し合いも、痛みも、無くなるのだろう。そうすれば、アークルも目覚めるのだろう。


 戸惑っているルリラナを見て、ヘルは、ニッコリ微笑み


「私と貴女は、同じだ。でも私と同じ選択を選ばないだろな」


 そう言って、消えていった。ヘルが言っている意味は、解る。ルリラナは、目をそらし本を閉じエイムを見た。


「エイム。お願いがあるの」

「はい。何でしょう?」

「ーーーーー」


 ルリラナが言うことにエイムは、目を見開き悲しい目で、深々とお辞儀をして、光となって消えた。ルリラナは、本を持ったまま書庫へ出る事にした。


「ルリラナ」

「パパ」


 レホルは、ルリラナが帰ってきたと話を聞いて、ルリラナの元へ駆け寄って来たようだ。息も上がり少しだけ汗もかいてある。どうやら走ったようだ。ふと、手に持っている本を見て、レホルは、顔色を変えた。


「全部、読めたんだな」

「うん」

「その本は、ククから貰った本だ。ククは、いずれお前が、解読が出来た同時に二度と此処へは、戻らないだろうと言っていた。


 …せめて、プリンセチアに別れを行って、出ていってくれ」


 レホルは、目をそらしながら悲しい目で言った。ルリラナは、そんな父親を見て、目をそらし少しだけ考えてこう言った。


「パパ。私は、別れを言わないわ。だって、必ず帰るもの。どんな事があっても、どんな明日があっても、私が帰るべき場所は、此処だから。絶対に私は、ラルクと一緒に帰るから。さよならじゃなくて、私は、こう言うわ」


 そう言ってルリラナは、レホルの近くへ向かい頬を触りニッコリ微笑んだ。


「行ってきます」


 レホルは、涙を流しルリラナの手を握った。冷たい手。震える手だ。我が娘ルリラナ。愛しい愛しい愛娘。小さい頃は、病弱で貧弱だった。病弱で病弱な体を強くするためククから弓矢と魔法を覚えさした。レホルに似て、魔法の解読が苦手だ。弓矢は、ルリラナの母プリンセチアに似て上手だ。


 ククが処刑された日ルリラナは、強くなった。多分それは、レホルもその理由を知っている。


 レホルは、ルリラナのおでこにキスをしてこう言った。


「行ってらっしゃい。我が愛しい愛娘ルリラナ。お前の無事に帰ってくる事を願っている」


 ルリラナは、おでこを触り微笑みながら小さく手を振り家から出て行った。

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