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外の世界  作者:
外の世界
60/75

その頃…。


 「きいいいいっ!!! このボクちんがメグちゃんに出し抜かれたなんてーーー!!!」


 光の楽園、城内。チャールズは地団駄を踏んでいた。


 「せっかくの楽しいオモチャだったのに、あっけなく壊れちゃった……。どうしよっかなぁ、ボクちん暇になっちゃったよ~」


 人質として捕えられている玲は、彼のその様子を見て吐き気がした。『変な奴』とは彼のためにある言葉なのだと改めて認識する。


 そんな玲の視線に気付いたのか、チャールズはくるりと振り返り、不気味な笑みを浮かべて言う。「玲ちゃんは、ボクちんの新しいオモチャなのかなァ?」


 「ありえない」


 玲はズバッと言った。その言葉はチャールズをぐさりと刺す。だが彼はめげなかった。そもそも、めげるという言葉を彼は知らないのだ。全てが自分の思い通りだと思っている。


 「ボクちんの言うこと聞かないと、串刺しにしちゃうよ?」


 「そうしたければ、するがいいわ。私はあなたを助けないから」


 「……助ける? アナタ、何を言っているんです。いい加減にしないと本当に殺しますけど?」


 チャールズの表情から余裕の笑みが消える。玲はまともに取り合わなかった。


 「可哀相な人ね」









 「鈴、お前いい加減機嫌直せや」


 シュンエイは苛立ちを隠せない様子で鈴に話しかけた。一体どちらの機嫌が悪いというのか。レイチェルには違いが分からなかった。


 「それで、ここから一番近い街はどこだ?」


 ゼロがニックに尋ねた。ニックは少しの間首を傾げていたが、「ここからだと、『過去の荒波』かなぁ」と言った。


 『過去の荒波』とは、光の楽園の西側にある小さな街だ。元『タタンの国』の民が住んでいる。光の楽園が攻めてきたせいで、タタンの国は滅びてしまったのだ。今は光の国の植民地となり、名も『過去の荒波』に改められている。


 「どうでもいいじゃん、そんなの」


 唐突に鈴が口を開いた。あまりにもいきなりだったので、全員が鈴に注目する。


 「どういうことだ?」


 「だからァ、どこが一番近い街だとかそんなのどうでもいいって言ってんの。さっさと女帝様? のところに行って玲を助けようよ」


 「フローラの城まで行くのに最低でも三日はかかるわよ」


 すると、鈴は無言で魔法エネルギーを細長いロープに変えた。城の方角を再確認し、彼は作り上げたロープに軽く触れる。すると、ロープは意思を持ったかのようにゆっくりと動き出し、終いにはとてつもない速さで城の方へと消えて行った。暫くしてからロープの先が鈴の元へと戻って来る。


 「あんたら僕をみくびってない?」


 鈴はハッと嘲笑った。今までの無邪気な彼を思い起こさせるものは何もなかった。彼はロープをぎゅっと握り、冷たく言い放った。


 「もういいよ、僕は一人で行くから。……大切なものが奪われたことのないあんたらには、あの城に囚われている彼女レイの気持ちなんて分からないんだ」


 あ、ちなみに。去り際、鈴はたった今思い出したかのように彼らに告げた。


 「誤解しないでほしいんだけどね、僕はリンじゃないよ」


 



              僕の名前はスズだ―――。



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