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『無能聖女』と言われている私が皆をハッピーエンドに導きます!〜悪役令嬢と親友になったら、天才魔術師達からの執着溺愛が止まりません〜  作者: 那月
第2部 学園編〜欲望の種〜

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73 やりたいこと

ラウール様は眼鏡をかけなおし、ソファーから立ち上がると、パチンと指を鳴らした。

すると、私の前に魔導陣が展開され、そこから植物の蔓が出てきて私を縛った。


「え?ちょっと、ラウール様!?」


彼は眼鏡のブリッジをクイっと上げるとフッと笑った。

そして、隣の部屋へ続く扉を開けそのまま部屋に入っていった。

すると、私を縛っている蔓が動き出し、私はフワリと空中に浮くとそのままその部屋へ移動させられてしまった。


扉をくぐると、ほのかにオレンジ色の明かりが灯ったベッドルームだった。

装飾などはなく、あまり広くない部屋に小さな机と、シンプルなベッドが一つ。そのベッドの脇に椅子が置いてある。

ここはおそらく、ラウール様の仮眠室だろう。


パチンと指が鳴った瞬間、身体を縛っていた蔓が霧のように消え去る。


「わっ!?」


唐突に重力を取り戻し、体がふわりと落下する。

思わずぎゅっと目をつぶったが想像していた痛みはこず、ドサっという低い音と共に、温かなラウール様の腕の中にいた。


「──っ!ちょっと、下ろしてください!」


「ほら動くな、落ちるぞ?」


そう言われ、思わず動くのを止めると頭上からくっくっと笑いをこらえる音がした。

ラウール様は、私を抱えたままベッド脇まで移動して私を優しくベッドに置く。


「あの、ラウール様、なにを……わ!」


「分からないか?」


そう言ってニヤリと笑うと、困惑している私の額を人差し指で押した。

あまり指に力が入っている感じがしなかったのにも関わらず、私はベッドに倒されてしまう。

そのまま私に布団をかけると、ラウール様は椅子に座り私の目を手で塞いだ。


「へ。もう、何なんですか!」


私がその手を退けようとすると、ボソッと


「縛ったままの方が良かったか。」


という恐ろしい声が聞こえて、抵抗をやめた。

フッと笑う声が聞こえる。


(なんかラウール様に転がされてる感じがして悔しい!)


「フィーネ。昨日何時に寝た?」


「……いやぁ、覚えてないですね?」


「3時だ。ちなみに起きたのは6時。」


「何で知ってるんですか!?はっ!──ゼロぉ!」


私はここにはいない彼の名前を批判を込めて叫んだ。


「その前の日は4時前。

ゼロがせっついてようやく寝たらしいな。

慢性的な睡眠不足は思考能力が低下するぞ。

普段のお前ならここまですんなり俺になすがままされないと思うんだがな?」


正論すぎてぐうの音も出ない。


「う……ちょっと忙しくて。色々調べたいこともあるし……。」


そう言い訳をしてボールを返してみるものの、へなちょこボールはものすごいスピードで返されてしまった。


「忙しさを言い訳に、体調管理をしないのはただの怠惰だぞ。」


「うぐっ……。」


ラウール様は一つ溜息をつくと、こう続けた。


「例の魔族と魔石の行方についての情報の取りまとめはもう終わっている。

あと、お前が目をつけた人物達の交友関係と、行動履歴をここ2年に絞り調査している。

結果は1週間後くらいか。

報告は俺のところに来るようにしてある。

知りたいならその頃にここに来るといい。

3日で必要な情報を取りまとめておこう。」


(やらなければと思っていた仕事が終わってる……)


私は頭を抱えたくなった。


「ゼロめ……完全に情報漏洩じゃない……。

っていうか、だめですよ。

ラウール様が倒れちゃいますって!

お仕事もあるのに!」


「そう思うなら、その無茶な生活をやめるんだな。ちなみにゼフィロスを叱ってやるなよ。あいつもお前の体調を心配してるんだ。」


「うう……。わかりました。じゃぁ結果が来たら教えてくださいよ?私も情報の取りまとめ、やりますから。」


なんだかすごく疲れた気がする。

目にじんわりと熱がこもり温かくて眠気が襲ってきた。


「ふっ。分かった、すぐに知らせよう。

……なぁ、フィーネ。学園でやりたいことはあるか?」


「やりたいこと……?」


「ああ。やらなければいけないことじゃない。

やりたいことだ。」


私は眠気で回らない頭で、少し考えるとこう答えた。


「……文化祭。高等部の時は参加、できなくて。

今年は、参加、したいです。」


高等部の文化祭は、私が出ては場が白けてしまうだろうと欠席していた。

なんの飾り気もない部屋の中、どんなお店があるんだろうか、みんな何をしているんだろうかと想像しながら1人で過ごしたあの日を思い出すとまだ心がシクシクと痛む気がした。


「……学府の文化祭は盛大だぞ。

高等部のものとは規模が違う。色々と覚悟もいるがな。

今年は皆で楽しめばいい。

あとは何かあるか?」


「あと……。がくえん、かんけいないけど、みんなであそびに、いきたいなぁ。

おとまりとかしたい、です……。」


ラウール様の穏やかな声が心地よく、暖かな微睡まどろみの海へと、静かに身体が溶け込んでいく。


「そうか。じゃぁそれも計画を立てよう。

夏がいいな。

アルカディア家の別荘が海辺の近くにあるんだ。

皆でそこに行こうか。」


「うん。ふふ、たのしみ。」


緩やかに意識を手放していく。

完全に眠りに落ちる寸前、ラウール様からするラベンダーの香りの中に、懐かしい薔薇の匂いを見つけた。


「おやすみ。我が愛しの妹。」


ラウール様のそんな声が、聞こえた気がした。




ラウール様のお説教(フィーネ仕様)です。

いかがでしょうか?いつか、ちゃんとしたお説教シーンも書きたいです。


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