1 くっそ詰んでるんだが?
初めての作品!よろしくお願いします!
8/13 タイトルを少し分かりやすく変更しました!
内容に変更はありません。よろしくお願いします。
結界が壊れ、魔王の侵略が始まる。
王都は火の海となり、人類は滅亡へ向かう。
聖女フィーネは魔王の手により闇へと堕ちた。
『──これは幾つもあるルートのバッドエンドの一つ。』
幾千の星々が煌めく夜空の中、白いローブを被った“彼女”が佇んでいた。
『──あの子はいったいどのルートを選ぶのかしら。』
「道は!作るのよ!」
「どれだけ難しくても、ハッピーエンドを諦めない!みんなで幸せになってやるんだから!」
──これは私による私の為の物語。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢
眩く光る星空の下、ここ王立ルミナリア学園では、卒業パーティーが行われていた。
いつもはキッチリとした制服を着ている令息、令嬢が、今日は煌びやかな正装や美しいドレスに身を包み、豪華な大ホールで生演奏の優雅な音楽に身を任せダンスを踊っている。
その中心で一層の輝きを放っているのは、この国の第一王子クリス・レオンハルト殿下と、その婚約者であるアリステリア様だ。
クリス殿下は、シャンデリアの光をキラキラと反射させるほどの美しい金髪をサラサラと靡かせ、サファイアブルーの瞳にはアリステリア様のみを愛おしげに写している。
対して、アリステリア様は、その熱の籠った瞳を、美しいアメジストの瞳で凛と受け入れていた。
彼女は燃える様な赤いドレスを身に纏い、黒曜石の様な黒く艶やかな髪を腰まで下ろしており、時折殿下がその髪を背中に置いている手でさらりと撫でている。
二人は顔を見合わせ、優雅にダンスを踊る。
不意に殿下がアリステリア様の耳元で何かを囁くと、彼女は一瞬で顔が赤く染まり、上目遣いで殿下を睨む。
殿下はその抗議の視線すら嬉しいようで、他の生徒が今まで見たことの無いような幸せそうな笑みを浮かべた。
そんな幸せなダンスが終わった瞬間。
この国の聖女である私、フィーネ・ルピナスは一つの目的の為、殿下達の元へ向かって歩みを進めた。
「アリステリア様、酷いですわ!
私のドレスを破って捨ててしまわれるなんて!
あれは今日の為に、養父母があつらえてくれた一点物でしたのに……。」
そう言いながら私は、腰まであるふわふわとしたピンクブロンドの髪をたゆませ、ピンクダイヤのような輝きを持つ瞳から大粒な涙をこぼした。
私は、この会場内でただ一人制服を着ている。
周りの人々は、私達から距離を取り、冷ややかな視線と共にヒソヒソと「無能聖女だわ。」「またアリステリア様にご迷惑を……。」「愚かな女だな。」などと話しながら遠巻きに見ていた。
(──さぁ、始めよう)
私は泣きながらさらに言い募る。
「どうして、いつも私を虐めるのですか!?
私が平民上がりだからですか!?
それとも、無能だから?
……酷いです。クリス殿下ぁ、アリステリア様をこの場で罰して下さい!」
クリス殿下は溜息をつき、私を虫ケラを見るような蔑んだ目で一瞥すると、こう言った。
「フィーネ・ルピナス男爵令嬢。
貴様の悪行の数々、方々より報告が来ている。
アリスを罰するだと?
断罪されるべきはお前の方だろう。」
アリステリア様は、凛とした面持ちで真っ直ぐ私を見ていた。
周辺の人々とは異なり、その目に侮蔑や嘲笑の色は一切なく、ただ憐れみだけが浮かんでいた。
「私は、アリステリア様に何もしていません!
なのになぜ、私が断罪されるのですか!?」
(……断罪?)
自らの台詞なのに、なぜかその一言だけが気にかかったが、気にしないことにする。
「私は、アリステリア様に無視をされたり、意地悪なことを言われたり、教科書を破られたりもしました!
それから階段から突き落とされたのです!」
私は庇護欲をそそる、そんな表情を作ると、手の甲にある聖女の証──『蓮の花の紋章』を見えるように胸元で両手を握りしめた。
聖女は国に一人だけ。
聖女がいるからこそ、この国に張り巡らされている結界が維持できる。
つまり聖女によって外にいる魔獣からの被害をほぼ受けずにすんでいるのだ。
だからこそ、私は強気でいられる。
(大丈夫、きっとうまくいく)
「愚かだな。フィーネ嬢。
我が妹の名誉を汚した罪は重いぞ。
覚悟は出来ているのか?」
そう言って、群衆の間から現れたのはアリステリアの義兄であり、次期宰相と言われているラウール様だ。
肩から前に落ちていた、一つに束ねた水色の長い髪を鬱陶しげに後ろに払うと、眼鏡の奥のアリステリア様よりも濃いアメジストの瞳を剣呑に光らせ、私を見た。
「お前が『アリステリアに突き落とされた』と主張した日時、彼女は私やクリス殿下と共に生徒会室にいた。
さらにお前が自作自演のために男爵家の使用人を使った証拠も、我が公爵家がすべて押さえている。」
「証拠……?そんなの、ありえません!」
私がそう叫ぶと、ラウール様の隣から美しい銀色が見えた。
まるで月の光に照らされた雪の結晶のようなキラキラとした銀髪を揺らし、いつも通り軽薄な笑みを浮かべながら前に出てきたのは、天才魔術師のグレン様だ。
アリステリアのヴァルハイト公爵家と共に、この国の双翼と呼ばれるアルカディア公爵家の嫡男だ。
(そう。この人ならきっと……)
「ふふ。フィーネちゃん。
証拠というのは、書類だけじゃ無いんだよ?
言い逃れができない、重要な証拠だ。
さぁ。証拠に『登場』してもらおうか。」
グレンが細く長い指先をパチンと鳴らすと目の前に魔導陣が展開する。『空間転移魔術』──この国で天才魔術師の彼しか出来ない魔術だ。
魔導陣の中に手を入れ、引っ張ると、使用人の服を着た少女が現れた。
震えながらも、気丈にグレン様を見る少女は、彼に聞かれるままに答える。
「先日、君が言っていたこと、もう一度ここで言ってもらってもいいかな?」
「はい!……聖女様から、『アリステリア様の指示で、聖女様を突き落とした』と言えと。
『もし、裏切ったらお前は神殿に殺されるかもしれない』
と脅されて……嘘をついて申し訳ありません。
私……怖くて……。」
ざわりと周囲が騒がしくなった。
それはそうだろう。この国の象徴である聖女が、弱い立場の者を脅し、偽装工作をさせるなど前代未聞だ。
最初から私に味方は誰もいない。
女子生徒達は、「浅ましいわ」「これだから平民あがりは」「アリステリア様になんてことを」「無能聖女なのだから大人しくしていればよいものを」と容赦なく蔑みの言葉を口にしている。
男子生徒も、「流石は頭がお花畑な聖女様だ」「愚かだな」「処刑して新たな聖女を出したほうがいいんじゃないのか?」
と容赦がない。
(あと、すこし)
歯を食いしばり、心を抉る言葉に耐える。
アリステリアは彼女達の言葉を遮るように凛とした声で言った。
「私はあなたが婚約者もいる男性方に近すぎる距離感でいるたびに、立場を考えて行動なさいと注意してきました。
魔術の勉強もしっかりなさいと。
その苦言をいじめとすり替え、あまつさえ公爵家、ひいては王家をも騙そうとし、侮辱するような行い、許すわけにはまいりません。」
凛と美しい瞳で、真っ直ぐ私を見るアリステリア様。
上から降り注ぐシャンデリアの反射した光が、アリステリア様の黒髪に降り注ぎ、まるで女神のような美しさだった。
(あぁ。これぞ悪役令嬢だ。──悪役、令嬢?)
心の中に不思議な言葉が浮かび、疑問に思ったその瞬間。
頭が割れそうなくらいの衝撃を受けた。
ズキズキと容赦なく痛む頭を抱える。
そして凄まじい勢いで、情報が流れてきた。
──満員電車、深夜残業、上司のパワハラ、そして唯一の楽しみだったネット小説……
(そうだ。
私は日本生まれ日本育ち、25歳限界社畜。
生まれてこのかた彼氏なしのアラサー。
こう羅列するとなかなか酷いな私。)
前世の記憶が覚醒した途端、これまでフィーネとして生きてきた記憶が遡っていく。
衝撃的な記憶に動揺する。
(待って。
ちょっとちょっと待って!
あの金髪王子に上目遣いで胸押し当ててるんだけど!
……は!?兄メガネにも抱きついて……?
え……銀髪魔術師にも……?
いやぁぁ!恥ずかし死ぬ!
何やってんの!この子!?)
あまりの黒歴史増産に膝から崩れ落ちた。
男性経験皆無の25歳にはダメージが大きすぎた。
(しかもアリステリア様を嵌めようとするって……あれ?嵌めようと、してるんだっけ、フィーネ?私?
ダメだな記憶がこんがらがってる)
視線を感じ、ゆるゆると顔を上げると、床に崩れ落ちたフィーネを気遣って少し心配そうに見るアリステリアと、相変わらず冷たい視線の、おそらくは攻略対象達。
前世の記憶を取り戻したばかりの私の口からぽろっと心の声がこぼれ落ちた。
「とりあえず、くっそ詰んでるんだが?
なぜ今このタイミング!もうちょっとあるでしょ!
なぜざまぁ後なのよぉー!」
両手で頭を抱え、全力で絶望している私。
しんと静まり返ったホールに謎の単語と叫びが響き渡った。
「くそ?…ざまぁ…?」
クリスやラウール、周囲の生徒達は先程まで子うさぎのように泣きそうになりながら悲劇のヒロインぶっていた聖女のあまりの豹変ぶりに唖然としていた。
「ふはっ。」
静寂の中でグレンだけが笑っていた。
そして頭を抱えてへたり込むフィーネを興味深く、楽しげに見下ろした。
そしてアリステリア様は、
目を見開きこの会場の誰よりも衝撃を受けていた。
これから先、フィーネちゃんの過去や性格を紐解きつつ、他の登場人物との関わりを大切に描いていきます!
フィーネちゃんは一筋縄じゃいきませんよ(笑)
これから甘いシーンもたくさん書いていきたいと思っています!
続きがよみたい!面白い!と思って頂けたら下の★で高評価(タップするだけで評価できます!)、ブックマークよろしくお願いします!作者大歓喜します!




