73. 聖剣とは仲良く
「ふんふふーん♪」
「ねぇあなた......あの聖剣なんか様子がおかしいのだけど?」
「うん?......別にそんなこと無いと思うけど」
「ふむ......」
樹生は腕を組んで聖剣オメガプロキシモを見ていた。
「シルエル......何か分かる?」
「分からないわよ。私は聖剣を見守ってだけだし...」
「ムグー!」
聖剣はフウナさんが踏みつけて押さえていた。
「あらあら随分気性が荒いわね......これじゃあ邪剣じゃない。」
「本当ですね。しかし我がマスターの手中にあるならば問題ないのでは?」
1度フウナさんが足を離す
「ぷはぁ!なにすんのよ、犬ッころ!それにそこの鳥!あの軟弱ものに私が扱えるわけ無いでしょうが!」
「犬ッころ......」
「鳥......」
フウナさんとアーサーからものすごい気迫を感じる。相当怒ってるな。
「はぁ......キシー?謝りなさい。」
「はぁ?なんで私が......キシー?」
「そうだよ。聖剣オメガプロキシモ…略してキシーだ。悪くないだろう?それよりも......謝りなさい。」
樹生の本気の怒りにキシーはたじろいでいた。
「な、何よ......おっちょこちょいの癖に!」
「それは事実だがら何も言えないけど......俺の命の恩人達にそんな態度をとられたら怒るだろう?」
俺の事を悪く言うのはいいが......皆をバカにされるのはどうにも我慢できない。
「謝りなさい......」
「う、うぅ............」
暫く唸っていたキシーはついに...
「ごめんなざあぃぃぃ!!」
ついに泣き出した。と言うより決壊した。
「ずっと、ずっと、ずっと、ゴミみたいに扱われて......止めてって言ったら......暗闇に放り出されてぇ!!やっと誰かが抜いてくれたとおもッだらぁぁ!」
キシーにキッと睨まれた気が......
「使い手が軟弱過ぎるんだもん!!もう嫌だよぉ!」
どうやら聖剣にも辛い過去があった模様......
「キシー」
「何よ......どうせあんたもあのサイコパスみたいに、私を扱うんでしょう?」
樹生はキシーを持ち、歩く。
「お前は口は悪いし態度もよくない。だけど...何度も俺の命を救ってくれたしな。それに...あの時村を病魔から救ってくれたお前を今さら変に扱うかよ。」
「............」
「だからさ......これからも俺を助けてくれるかい?ほら、俺......弱いからさ笑!」
「そんなこと誇ってるんじゃないわよ!」
「あいた!」
鞘でポカリと叩かれる。
「ふんっ!.........バカマスター。」
「ははは、バカで十分!」
剣をギュッと抱える。
「俺は剣は扱えないし、痛い思いをしたくない。それにね......結構今無茶してるんだよ?」
全身筋肉痛......というよりは若干伸びちゃってるきが
「...............お馬鹿」
瞬間体が光り輝く。
「おお、やっぱり優しい奴じゃないか!キシー!」
「ちょっと振り回すな!」
「ははははー!」
キシーとすっかり打ち解けた樹生を見ながらフウナさん達は納得したように頷いていた。
「天然か......それとも策士か......はたまた道化か...やはり要観察ですね。」
リーシェルさんは樹生を冷たい目で見ており、ルビアはと言うと......
「はぁぁあ......流石ですね。」
聖剣を振り回し、振り回される樹生を見て目が輝いていた。
(善人ではありますから......いいのですが...)
「振り回すなぁ!!」
「ゴハァ!」
(要観察ですね。)
夜
「今日はこの辺で野宿にしようか。」
「賛成です。」
ルビアはその場に座り祈りを始める。
「主よ 我らに祝福を 不浄なるものを近づけぬ清らかな光を ホーリーライト」
パアッと光辺りを照らす。
「暖かい...」
「これで魔物は近づきません。ただ野党なんかは来てしまいますから、その時はぶっ飛ばすだけです。」
ルビアはぐっと拳を握る。
「そっか......ありがとうね。」
「は、はい!」
「さてと......ここからは俺の番だな。」
樹生は追加で2枚寝袋を購入。それと椅子あと大きめのテーブルも必要だな。
「タツキさん、火は起こしておきましたよ。他に手伝える事はありますか?」
リーシェルさんが聞いてきた。
「それでしたらゆっくりしていて下さい。ちょっとしたお茶菓子を置いておいたので。」
「それはありがたいです。お言葉に甘えて......。ルビア様、休憩にしましょう。」
2人は椅子に座りながら談笑していた。
「晩飯の準備を...」
樹生は振り替えるとわいわいと話す皆が目に入った。
(最初は1人、そこからフウナさんとクウが一緒になってその後シルエルが仲間に...いろいろあってアーサーが生まれて。)
「ちょっと!私は?」
「忘れてないよ。キシー...」
「さてと作る量が増えたとなれば......中華だな」
とりあえず保管庫を見る。
「あー......肉がそろそろヤバイな。後2日くらいか?」
「なに悩んでるのよ?」
キシーが聞いてくる。
「肉がね。」
「足りないなら狩りに行けばいいじゃない?」
樹生はボロボロの包丁を見せる。
「何回も買い換えたし、頑張って研いだんだけどね。鱗だとか羽毛だとか毛皮とか刃が通らないんだよ。」
最初はフウナさんとかクウにやってもらってたし、ギルトに頼んでたりしたけど…確かワイバーンが大量に預けてあったな。
「って感じでね。包丁買いにカンドラへ向かってるんだよ。」
「.........獲物は?何か無いの?」
「ん?あるにはあるけど......」
タツキはそう言うとフウナさんがいつの間にか狩ってきたブラキオサウルス見たいな奴を出す。
「ふーん......カンドラまで一匹で持つの?」
「さぁ......多分行けると思うけど...」
キシーは握れと言う。
「さぁ、ちゃっちゃっと終わらせるわよ。」
「いいの?こう言う扱いは嫌なんじゃ......」
樹生の言葉にキシーはクスッと笑う。
「バーカ。今回だけだからね!それと......マスターだからいいのよ.........」
随分とドキリとさせる......
「よろしく頼むよ」
「任せなさい!それじゃあ行くわよ。」
「皆......ご飯...だよ~。」
ブラキオサウルスの肉を薄切りにして生姜焼きにしてある。付け合わせはキャベツの千切りとキュウリとトマトのサラダ。それとカボチャサラダ。後味噌汁とご飯もある。
「「「「いただきまーす!」」」」
「ワフッ!(いただきまーす!)」
皆がガツガツと食べ始める。
「あれ......タツキさんは食べないんですか?」
「そうですよ...作ってくれた貴方が食べないなんて。」
ルビアとリーシェルさんが聞いてくる。
「か、体が......」
「全く軟弱ねぇ...今度ガッツリ鍛えてやろうかしら?」
「か、勘弁して下さい...」
ルビアとリーシェルさんは苦笑い。そして...
「「「おかわり!」」」
「ワフッ!(おかわり!)」
「予想通りだね!」
樹生はバタバタと動き食いしん坊達を満足させていった。そして樹生にはもう一つ準備しているものがあった。
「ルビア、リーシェルさん......ちょっと来て。」
「「?」」
食後ゆっくりしていた2人を呼ぶ。
「どうしたんですか?」
「何かあったのですか?」
どこか心配そうにしている2人をちょっとした岩影に案内する。
「スンスン...いい香りがしますね。」
「香油ですかね?」
「さぁ...ゆっくりしていて下さい。」
樹生はそう言うとその場を後にした。
「な、なんでしょうか?カーテン?」
「まさか......」
カーテンをめくるとそこには立派なバスタブが。真っ白のいい香りがするお湯が溜まっていた。
「嘘......」
「ふぅ......ルビア様せっかくです。ゆっくり堪能しましょう。」
「ですぬ。タツキさん......ありがとうございます!」
2人はゆっくりとお風呂を堪能するのだった。そして置いてある石鹸にもまた驚愕するのだった。
その後2人がお風呂を出て眠りについたころ。
「マスター......少しいいかしら?」
「キシー?どうした?」
寝袋に入り寝ようとした樹生にキシーが声をかける。
「ほ、ほら…いくら結界があるからって絶対安全...... ひゃっ!」
「わかったよ......お休み......ぐぅ...」
「バカ......」
星空の下、歪められた聖剣は新たな主人と共に少しずつ戻っていってるようだ。
「この石鹸...すごくいい香り」
「ええ、この香油もかなり高価ものですね。」
「ふぅ......タツキさんって何者なんですかね?」
「さぁ......何者なんでしょうかね。」




